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【2024最新】バッドエンド小説おすすめ22選!切ない恋愛・メリーバッドエンド・短編など

ミステリー恋愛小説ホラー小説鬱小説文豪バッドエンド

2024/07/23

皆さん、「バッドエンド」はお好きですか?

紆余曲折を経て結ばれる恋、困難を乗り越えて叶う夢も素晴らしいですが、たまには救いようのないバッドエンドをトゥルーエンドとして迎えたいですよね!

今回は、メリーバッドエンドから切ない系まで、バッドエンドの小説をご紹介します。

是非最悪の結末を味わってみてください!

目次[ 表示 ]

後味最悪!鬱になるほど救いのないバッドエンド小説の魅力とは?

「物語はいつもハッピーエンド」。そんな結末、つまらないと思ったことはありませんか?
ハッピーエンドの物語は、「ハッピーエンドに向かって物語が進行する」という一定の制約があるため、基本的に型が決まってしまっています。

しかし、バッドエンドは結末がバリエーション豊富で、そこに至るまでの過程も多種多様です。
主人公がどのように転落していくのか、恋がどのように砕け散るのか。
ストーリー自体に作者の個性が表れるため、ワクワクしながら読み進めることができるのです。

試験や教科書で読まされる小説にはハッピーエンドのものが多いため、そういった学習とは離れて読書を楽しめるのもバッドエンド小説の魅力のひとつでしょう。
是非、お気に入りのバッドエンド作家を見つけてみてください!

「メリーバッドエンド」って何?ウェブ小説発の人気ジャンル

Web小説から誕生し、近年ライトノベルを中心に人気を集めている新ジャンル「メリーバッドエンド」。
バッドエンドの一種とされていますが、通常のバッドエンドとは異なり、読者によって結末がハッピーエンドかバッドエンドか解釈が分かれる作品のことを指します。

典型例としては、第三者からはバッドエンドに見えるものの、当事者にとってはハッピーエンドというもの。
『人魚姫』や『幸福な王子』といった童話作品もこの流れで再解釈されています。

また、第三者にとってはハッピーエンドでも、当事者にとってはバッドエンドという形態もあり、多大な犠牲を払って世界平和を果たしたという場合などが当てはまります。
解釈の幅が広い作品が人気を集める中、注目を集めているジャンルです。

バッドエンド小説の中でも、特に「読んでいて鬱になる」小説を読みたいという方は、是非下の記事も併せてご覧ください!

【2024最新】おすすめの鬱小説ランキングTOP30!救いようがない小説や美しい名作まで紹介

【恋愛・青春】バッドエンド小説おすすめ4選

少年たちのおだやかな日々|多島斗志之

作者
多島斗志之
レーベル
双葉文庫
ページ数
261ページ

あらすじ
こんなとき、どうしますか?
同級生の母親の不倫現場を目撃してしまったとき。
姉の婚約者が、ある犯罪の常習犯だったとき。
過激な罰ゲームが用意されているゲームに参加することになったとき…。

少年たちの、「おだやかな」日々を綴った物語です!

7作の短編が収録されており、その全ての作品で後味の悪さは折り紙つき
一番恐ろしいのは、作者である多島斗志之が失踪し、行方不明となったということでしょうか…。

フジテレビの大人気TV番組『世にも奇妙な物語』の原作にもなりました。

今夜、世界からこの恋が消えても|一条岬

作者
一条岬
レーベル
角川メディアワークス文庫
ページ数
320ページ

あらすじ
クラスメイトに流されるまま、「僕」は日野真織に嘘の告白をする。
しかし、彼女は「お互い、本気で好きにならないこと」を条件にその告白を受け入れた。
やがて、偽りの恋が本物へと変わったとき、僕は知らされる。
日野真織が、一日ごとに記憶を失ってしまう病を患っていることを…。

切ない系バッドエンド恋愛小説といえばこの作品、『今夜、世界からこの恋が消えても』。

1日しか記憶が持たない少女と、いじめっ子に促されるままそんな少女と付き合うことになった少年の物語です。
後半、思いもかけない方向に物語が急速に進んでいき、切ないラストまで転がっていきます。

日野真織のことが好きだと自覚した後の主人公の行動と、号泣必須のラストが切ない映画化作品です。

砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない A Lollypop or A Bullet |桜庭一樹

作者
桜庭一樹
レーベル
角川文庫
ページ数
208ページ

あらすじ
中学生の「あたし」は、虚言癖のある美しい少女・海野藻屑と出会う。
しかし、親しくなるにつれ、「あたし」は藻屑が親から虐待を受けていることに気付いた。
ある午後、「あたし」はひたすら山を登っていた。
そこにあるはずの、あってほしくない「あるもの」に出逢うために…。

「鬱小説の女王」と名高い直木賞作家・桜庭一樹。

『私の男』『じごくゆきっ』など数多くのバッドエンド小説を手掛けていますが、中でも本作『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない A Lollypop or A Bullet』は、日本の鬱小説の代表作とも言われるほどの名作です。

中学生の少女が直面するのは、可愛らしいタイトルからは想像もつかないほど残酷で、救いのない現実
現実に抗うための主人公の「実弾」と、藻屑の「砂糖菓子の弾丸」が胸に刺さります。

ミシン|嶽本野ばら

作者
嶽本野ばら
レーベル
小学館文庫
ページ数
192ページ

あらすじ
だれもが一度は、こんな恋をしたいと思ったことがある。
でも誰もが、こんなに純粋にはなれないのだ。
あまりに切なくて、あまりに美しい失われた少女たちの物語。

ロリータファッションをこよなく愛する小説家/エッセイストの嶽本野ばらのデビュー作『ミシン』。
メリーバッドエンド系の小説が2作収録されており、それぞれヴィヴィアン・ウエストウッドの洋服に憧れて雑貨店の店主と逃避行を決行する少女と、憧れの少女に出会うために嘘をついてバンドメンバーのオーディションを受け、見事メンバーの座を勝ち取ったMILKを着た少女の物語が描かれています。

憧れの洋服を身に着け、好きな人と恋をするために破滅した少女たちの姿は、なぜこんなにも美しいのか。
全ての洋服好きの少女に送りたい名作です。

【文豪】バッドエンド小説おすすめ4選

悲しみよこんにちは|フランソワーズ・サガン

作者
フランソワーズ・サガン
レーベル
新潮文庫
ページ数
197ページ

あらすじ
もうすぐ18歳を迎えるセシルは、プレイボーイの父レイモンとその恋人のエルザの3人で南仏の海辺の別荘へヴァカンスに出かける。
大学生のシリルとの恋を楽しんでいたセシルだったが、ヴァカンスに合流したアンヌと父が再婚に走り始めたことを察知し、再婚を阻止するためある計画を実行する…。

フランスの文豪フランソワーズ・サガンによる、あまりにも瑞々しくて、あまりにも痛々しい青春小説です。

執筆当時まだハイティーンだったサガンにしか出せない青春の輝きや情熱が詰まっており、主人公の生々しい感情が胸に刺さります。

ラストシーン、既に傷が自分では修復できないところまで進行してしまっていたことに気が付いた少女は、何を背負って生きていくのか。
肝心な部分が主人公にも読者にもわからないというのも、より一層バッドエンドを際立たせています。

それから|夏目漱石

作者
夏目漱石
レーベル
角川文庫
ページ数
352ページ

あらすじ
長井代助は、かつて友人の平岡に譲った恋人・三千代のことが忘れられず、日夜想いを積もらせていた。
そんなとき、代助は平岡夫妻の仲に亀裂が生じていることを知り…。

教科書等でもおなじみの文豪・夏目漱石
彼の前期三部作『三四郎』『門』『それから』は、ままならない愛の物語がお好きな方にはおすすめの純文学作品です。

愛する人と結ばれながらも、恵まれた生活を捨てなければならず、それゆえに破綻していく…。

是非日本を代表するバッドエンド系恋愛小説を1作目『三四郎』からご一読ください。

或る女|有島武郎

作者
有島武郎
レーベル
新潮文庫
ページ数
752ページ

あらすじ
美しく、才気あふれる早月葉子は、従軍記者として名をはせた詩人・木部と恋愛結婚するも、わずか2か月で離婚。
その後、婚約者・木村の待つアメリカへと渡る船の中で事務長の倉地に虜になり、そのまま帰国してしまう。
個性を抑圧する社会道徳に反抗し、奔放に生き通そうとして、虚しく破れた或る女の激情と運命。

『カインの末裔』などを遺した白樺派の文豪・有島武郎の代表作『或る女』。
スキャンダラスで女王気質な女性・早月葉子の、わずか1年の恋愛遍歴と崩れていく精神世界を描いた大作です。

葉子の心理描写が圧倒的なインパクトを持っており、読者を女の狂気の世界に沼らせます。
たった一年の出来事とは思えないほど濃厚かつ波乱万丈な物語は、読み通すのに少し根気が必要となりますが、文章自体が読みやすく、一旦物語世界に入ったら、もう止まることはできません。
葉子が次第に周囲に疎まれていく様は、現代の私たちから見てもあまりにもリアルで、胸が痛みます。

100年以上経った今でも全く色褪せない、大正時代を代表する作品です。

ゴリオ爺さん|バルザック

作者
バルザック
レーベル
光文社古典新訳文庫
ページ数
591ページ

あらすじ
野心を抱いてパリで法学を学ぶ貧乏貴族の子弟ラスティニャックは、場末の下宿者に身を寄せながら、社交界に潜り込む。
そこで目にした令夫人は、実は下宿のみすぼらしい老人・ゴリオ爺さんの娘だというのだが…。

世界の10大小説」にも挙げられている、フランスの文豪オノレ・ド・バルザックの代表作『ゴリオ爺さん』。
フランスの社交界を舞台に、娘を富裕層に嫁がせるために破産してしまったゴリオと、ならず者ヴォートラン、出世を夢見る学生ラスティニャックの物語が描かれます。

19世紀のフランスの作家は日本人にとっても読みやすいものが多く、バルザックのほかにも、デュマやヴィクトル・ユーゴーなど、知られた名前がたくさん。
当時のパリの雰囲気が非常に愛憎劇に適しており、本作でも解説で「本当の主役はパリ」であると語られるほど、雰囲気のある世界観です。

娘を溺愛するゴリオ爺さんはなぜ、娘に見放され激怒しながら死んでいくことになったのか。
是非19世紀のパリの雰囲気とともに、物語を紐解いてみてください。

【ホラー・サスペンス】バッドエンド小説おすすめ7選

嗤う伊右衛門|京極夏彦

作者
京極夏彦
レーベル
角川文庫
ページ数
381ページ

あらすじ
鶴屋南北「東海道四谷怪談」と実録小説「四谷雑談集」をもとに、伊右衛門とお岩の物語を、更に怪しく、更に美しく甦らせる。
全ての境界をゆるがせる、作者渾身の傑作会談。

日本で知らぬものはいないというほど有名な怪談「四谷怪談」。
美しい妻・お岩と、お岩を虐げ、その死後呪われてしまった伊右衛門の物語です。

様々な作品にオマージュされ、現代語訳も様々出版されていますが、中でも生ける文豪・京極夏彦の手による四谷怪談は、歴史に残る名作となっています。
作者独自の解釈・脚色によって浮かび上がるお岩と伊右衛門の人物造形が、物語を更に濃厚に。

『四谷怪談』を読んで、伊右衛門が嫌いになってしまった人、お岩があまりに可哀想に感じてしまったという方は、是非読んでみてください。
純愛の果ての狂気が導くラストシーンは、必見です。

少女葬|櫛木理宇

作者
櫛木理宇
レーベル
新潮文庫
ページ数
448ページ

あらすじ
ドミトリータイプ、キッチン、バス、トイレ共同、敷金礼金なし、保証人不要、性別および年齢制限なし。
毒親からの精神的虐待に堪えかねた16歳の少女・綾希は、飛びこんだシェアハウスで同じく家庭不和の被害者である少女・眞実に出会う。
劣悪な環境の中、なんとか生計を立てようと藻掻く少女たちだったが、些細なきっかけで仲違いし、別々の道へと進む。
やがて、一方が取り返しのつかない「その日」へ向かっていき…。

救いのないサスペンス小説を書かせれば右に出るものはない、ホラー/ミステリー作家・櫛木理宇。
『死刑にいたる病』の映画化で話題となりましたが、本作『少女葬』も負けず劣らずの傑作です。

特に本作で衝撃的なのは、同じような理由で家を飛び出し、同じ場所に堕ちてしまった少女たちの、一方は救われ、もう一方は凄惨な末路を迎えるという鮮やかな対比
物語の冒頭から壮絶なリンチに遭い亡くなったと明かされる少女は、なぜ死ななければならなかったのか。

理由があまりにも些細で、「家出少女」といった言葉を日常的に見かける現代社会ではあまりにもリアルな作品です。

隣の家の少女|ジャック・ケッチャム

あらすじ
1958年の夏。当時12歳のデイビッドは、交通事故で両親を亡くし隣家へ越してきたという美しい少女メグと出会う。
淡い恋心を抱いたデイビッドは次第にメグとの距離を縮めていくが、一方で隣家ではシングルマザーのルースのメグに対する態度が段々と悪化していき…。
少年は何故、エスカレートする行為を止めることができなかったのか?

「海外の鬱小説」と引くと、必ず挙げられるのが本作『隣の家の少女』です。
事故に遭い、両親を亡くした姉妹が引越し先で虐待され、亡くなるまでの過程を隣家の少年の視点から描いています。

少女たちの末路が凄惨で、閉鎖的な田舎町でエスカレートしていく行為は身に染みる恐ろしさを持っていますが、ジャック・ケッチャムのバッドエンドはそこでは終わりません。
行為に加担した少年たちや主人公が大人になったあとも、隣家で起きた事件は尾を引いていく…。

将来に至るまで一切の救いを絶やしたバッドエンド小説の真髄を、是非ご覧ください。

海外の鬱小説をもっと知りたい!という方は、是非下の記事も併せてご覧ください。

【2024最新】海外の最悪な鬱小説おすすめランキング!文豪・恋愛・純文学など美しい作品をご紹介

他人事|平山夢明

作者
平山夢明
レーベル
集英社文庫
ページ数
336ページ

あらすじ
不慮の交通事故で崖から転落し、瀕死の重傷を負って車内に閉じ込められた男女。
彼らを待ち受けるのは、圧倒的な「他人への無関心」だった。
助けを求める彼らの願いをのらりくらりとはぐらかす男の、「無関心」という恐怖を描き出す…。

日本のホラー界を代表する作家・平山夢明。
人間の恐ろしさを描き出すことにかけて、彼の右に出るホラー作家はいません。

本作『他人事』にも、理解不能な他人たちに囲まれているという、日常的不安が顕在化した悪夢のような世界を描き出した短編が14編収録されています。
わたしたちの身近にも潜んでいるかもしれない、不条理な恐怖。

恐ろしくても、なぜか読む手が止められない。そんな平山夢明ワールドへ、是非足を踏み入れてみてください。

疾走|重松清

作者
重松清
レーベル
角川文庫
ページ数
416ページ(上巻)

あらすじ
孤独、祈り、暴力、セックス、殺人。誰か一緒に生きてください――。
走るのが得意な中学生のシュウジの人生は、兄の放火事件により一変する。
世間の中傷に耐えかねた父親は蒸発し、母親はギャンブルに溺れ、シュウジは犯罪加害者家族としていじめを受けるように。
そんなシュウジの心の支えは、教会の神父と、同級生のエリだけだった。
しかし、エリを追いかけて上京したシュウジに、さらなる不幸が襲い掛かる…。

バッドエンド小説といえば本作、重松清の異色の作品『疾走』。
微塵も希望を感じられない中、ひたすら破滅のラストへと疾走していきます。

上巻で全く救われなかった主人公・シュウジに、下巻でなにかしら救いがもたらされるのかと思いきや、下巻は上巻を上回るほどの絶望に次ぐ絶望。
タイトルの通り、非常に疾走感溢れる作品で、中学生のシュウジを襲う壮絶な現実の数々に目を背けたくても、ページをめくる手が止まりません。

誰かと繋がりたかっただけなのに、なぜ絶望に拍車がかかっていくのか?
弱者を搾取する現代社会の闇を、これでもかというほど可視化した作品です。

zoo|乙一

作者
乙一
レーベル
集英社文庫
ページ数
272ページ

あらすじ
双子の姉妹なのに、なぜか姉のヨーコだけが母から虐待を受け…。(「カザリとヨーコ」)
映画化された5編を収録した、乙一の短編集。

「ジャンル分け不能」と言われる、天才作家・乙一の短編集です。
便宜上サスペンス・ホラーに分類していますが、しっかりと「怖い」と感じられる作品は少なく、独特な不気味さを纏った不可解な作品が収録されています。

『zoo』の1巻に収録されている作品は全て映画化されていますが、乙一の作品は描写が非常に鮮やかで、読んでいるときに頭に映像が浮かびやすく、映像化されやすいと言われています。

乙一にしか出せない不気味でダーク、ちょっぴりグロテスクな作品を連発できるその手腕は、まさに「天才」。
非常に読みやすく、かつページ数も多くないため、あまり本を読みなれていない方にもおすすめです。

鼻|曽根圭介

作者
曽根 圭介
レーベル
角川ホラー文庫
ページ数
288ページ

あらすじ
「テング」と「ブタ」に分けられた人間たち。
外科医の「私」は、差別されている「テング」を救うため、「ブタ」への違法な転換手術を決意する。
一方、刑事の「俺」は、ふたりの少女が行方不明となった事件の捜査を進めていくうち、因縁の男と再会することになり…。

日本ホラー小説大賞を受賞した表題作「鼻」をはじめとして、設定から展開、結末まで作者の才能が光るホラー小説3編を収録した短編集です。
「暴落」では、人に対する評価が上がることを表した慣用句である「株が上がる」の「株」が実際に可視化された世界が描かれ、「受難」では人目につかない路地で手錠に繋がれた男にふりかかる不条理な末路が描かれます。

どの作品も、後味の悪さでちょうどいい絶望感に浸りたい方におすすめです。
『世にも奇妙な物語』の世界観が好きな方は、是非ご一読を。

【ミステリー】バッドエンド小説おすすめ5選

愚行録|貫井徳郎

作者
貫井 徳郎
レーベル
創元推理文庫
ページ数
320ページ

あらすじ
池袋駅からほんの数駅の、閑静な住宅街にあるその家。
そこに住む、幸せを絵に描いたような家族は、突如忍び込んだ何者かによって、一家惨殺された。
数多のエピソードを通して、人間たちの愚行が浮かび上がる…。

人間の愚行カタログ」こと、貫井徳郎の『愚行録』。
人間の醜さを浮き彫りにした本作は、「人間は見る人によって全く異なるものに見えてしまう」ということを、克明に表しています。

ルポライターが一家惨殺事件の真犯人を追うために、近所に住む人々にインタビューしてまわるという形式のミステリー小説ですが、事件の真犯人とともに浮き上がってくるのは、人間の身勝手な評価。

最後の最後で全てがタイトルの「愚行録」という言葉に集結する、圧巻の伏線回収も見所です。

ハッピーエンドにさよならを|歌野晶午

作者
歌野晶午
レーベル
角川文庫
ページ数
368ページ

あらすじ
望み通りの結末なんて、現実ではめったにないと思いませんか?
もちろん物語だって…。
夏休みのたびに帰る母の実家。新鮮な山海の料理に、仲良しのいとこたち。
楽しい夏の日々は、「あの部屋」に入ったことで終わりを迎える…。

史上初、本格ミステリ大賞を2度受賞したミステリ界の鬼才・歌野晶午による、ミステリ短編集です。

タイトル通り、収録されている作品は全てバッドエンド
通常のハッピーエンドなど許さない、どんでん返しが鮮やかなバッドエンド系ミステリです。

ちなみに、どんでん返しの鮮やかさでバッドエンドの後味の悪さが中和されているため、そこまで読後感は悪くありません。
尾を引きすぎるバッドエンドが苦手な方は、是非安心して本作に挑戦してみてください。

聯愁殺|西澤保彦

作者
西澤 保彦
レーベル
中公文庫
ページ数
360ページ

あらすじ
大晦日の夜、連続無差別殺人事件の唯一の生き残り・梢絵を中心に、推理集団〈恋謎会〉のメンバーが集結した。
4年前、彼女は何故標的になったのか?そして、犯人はいまどこにいるのか?
ミステリ作家や元刑事など、様々なメンバーが推理合戦を繰り広げるが…。

「多層的推理合戦の果てに得たものは事件の解明ではなく新たな悲劇だった。」というあとがきの言葉が全てを語っていますが、本作は推理合戦もののミステリが、推理合戦で終わらないという作品です。

推理合戦と意外な結末は作者の西沢保彦の得意分野ですが、特に本作はミステリファンからの評価が高く、伏線回収と合理性がズバ抜けています。

世界的な名作『毒入りチョコレート事件』のオマージュ作品にもなっているので、バークリーファンにもおすすめ
後味の悪さは折り紙付きなので、記憶に残るミステリを探している方は是非ご一読ください。

悲しみのイレーヌ|ルメートル

作者
ピエール・ルメートル
レーベル
文春文庫
ページ数
472ページ

あらすじ
若い娼婦の惨殺死体が発見された。
殺人の手口は極めて凄惨で、現場には犯人からのメッセージも残されている。
パリ警視庁のヴェル―ヴェン警部は、部下らとともに捜査を担当することになった。
やがて、現場に残った証拠から、犯人は数年前の未解決事件と同一犯であることが発覚。
ヴェルーヴェン警部は、ふたつの事件の資料とにらめっこしているうちに、事件が小説を模倣したものであることに気が付く。
果たして、犯人はどこの誰なのか?同一人物による犯行は、本当に2件だけなのか…?

フランスミステリーを代表するミステリー作家ピエール・ルメートル。
『その女アレックス』が有名ですが、そちらから先に読むと本作の結末や犯人まで全て明らかになってしまうので、シリーズ1巻である本作から読むことをおすすめします。

ルメートルの魅力は、なんといってもドラマや映画のような疾走感
息つく暇もないほど劇的な展開で読者を楽しませてくれます。

ただし、ヴェルーヴェン警部が活躍する三部作は、総じてバッドエンド。
タイトルからもわかりますが、「そうなりませんように」と主人公と読者が願っていた結末を容赦なく叩きつけてきます
ある意味王道のバッドエンドですが、とにかく面白いミステリでもあるため、是非挑戦してみてください。

殺人鬼フジコの衝動|真梨幸子

作者
真梨幸子
レーベル
徳間文庫
ページ数
429ページ

あらすじ
一家惨殺事件でただひとりの生き残りとなった10歳の少女。
しかし、彼女の人生はいつしか狂い始めた。
何が少女を伝説の殺人鬼・フジコにしてしまったのか?
またひとり、彼女は人を殺す。

後味の悪さが人気のジャンル、「イヤミス」。
そんなイヤミスの中でも、本作『殺人鬼フジコの衝動』はずば抜けて後味が悪く、ずば抜けて恐ろしい作品です。
ただ後味が悪いだけでなく、ミステリとしての完成度も高い本作は、ラストのラスト、「あとがき」にまで作者による仕掛けが隠されています

グロくて、登場人物が胸糞悪くて、主人公の心理描写が痛々しくて、不条理で…。
バッドエンド小説の全ての要素が詰まった、バッドエンド好きにはたまらないベストセラーです。

【SF・ファンタジー】バッドエンド小説おすすめ2選

光の帝国|恩田陸

作者
恩田陸
レーベル
集英社文庫
ページ数
288ページ

あらすじ
穏やかで知的な常野の一族。
常人には持ちえない、不思議な能力を有する一族は、その力を権力や富をはじめ、欲望のためには用いない。
現代社会に溶け込んでごく普通に暮らすことを望む彼らだったが、次第に時代は戦争へと進んで行き…。
人を見通し、癒し、守る、その不思議な能力は何のために存在するのか。

恩田陸による壮大なファンタジー「常野物語」シリーズの第1作目です。
連作短編集となっており、同じ設定・世界のなかで生きる、様々な「常野の一族」の人生が描かれます。

それぞれが強力な力を持ちつつも、それを隠して懸命に生きる「常野の一族」。
しかし、時代の流れが戦争へと向かっていくとき、そこに目をつけ始めた軍部の魔の手が迫り…。

短編集のため、結末の色は作品によって全く異なりますが、表題作「光の帝国」は希望を残しつつも、切なく、哀しいバッドエンドです。
そのままバッドエンドで終わらせるのも良いですが、続きも出ているため、「常野の一族」のその後が気になった方は、是非続編も手に取ってみてくださいね。

すばらしい新世界|ハクスリー

作者
オルダス・ハクスリー
レーベル
ハヤカワepi文庫
ページ数
384ページ

あらすじ
世界戦争の終結後、暴力を排除し、安定を世界のモットーとした世界が形成された。
人間は受精卵の段階から選別され、5つの階級に分けられて徹底的に区別されていた。
孤独な青年バーナードは、出かけた野人保護区で恐るべきものに出会う…。

「すばらしい」新世界のお話です!

安定した社会、なくなった階級闘争。暴力や嫉妬など、原始的で野蛮な感情から解放された人類は、「共生・個性・安定」をスローガンとする、清潔で文明的な世界を達成しました。
しかし、その代わりに失ったものとは一体…?

ディストピア小説の代表作として歴史に名を残した名作の、圧巻のラストシーンを是非ご覧ください!

登場人物たちと一緒にバッドエンドを迎えよう!

バッドエンド小説は、第三者視点から楽しむのも良いですが、やはり登場人物に感情移入してこそその真髄を味わうことができます。

主人公に共感するもよし、被害者に入り込むのもよし。

是非それぞれの視点で救いのない結末を味わってみてください!

この記事を書いた人

Yu

千葉県出身の「Yu」です。 5歳のときにはやみねかおるさんに出会って以降、毎年300冊以上の本を読み続けてきました。 好きなジャンルはミステリー・SF・古典など。幅広く読んでおります。 アニメやゲームも好きで、情報は逐一チェックしております。 経験を活かし、皆様のお役に立てるような記事をお届けします!

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