目次[ 表示 ]
- メンターとはなに?
- メンターの役目
- OJT制度やコーチングとの違い
- メンターが求められるようになった背景
- 社員育成の経費削減
- 働き方改革による変化
- メンター制度の3つのメリット
- 1:メンターのメリット
- 2:メンティーのメリット
- 3:企業のメリット
- メンター制度を導入して得られる4つの効果
- 1:自立性のある人材育成に役立つ
- 2:離職率を下げる
- 3:社内のコミュニケーションが活気づく
- 4:社員のストレスを和らげる
- メンターに向いている人の4つの要素
- 1:総合的なコミュニケーション力
- 2:同じ目線で接することができる
- 3:適度な業務経験がある
- 4:信頼関係を築ける人
- メンター制度を導入する上での6つの注意点
- 1:会話内容を他言しない
- 2:成長スピードの違いを認識する
- 3:叱責しない
- 4:メンターを育てる環境
- 5:会社としてバックアップ体制をつくる
- 6:メンターのケアを忘れない
- メンター制度を導入した3つの事例
- 1:女性社員のキャリア形成支援
- 2:就業体制によるコミュニケーションの問題解決
- 3:年齢関係を逆転させたリバースメンター
- メンターについて理解を深めよう
メンターとはなに?
メンターとは、仕事やキャリアの手本となってくれるような指導者を指す言葉です。指導を受ける人から見て、人間的に尊敬でき、仕事で抱えている悩みを安心して相談できる人がメンターに抜擢されることが多いでしょう。
この記事では、メンター制度のメリットや導入する際の注意点について紹介していきます。メンターについて興味がある方は、参考にしてみてください。
メンターの役目
メンターは、指導を受ける側(メンティー)から、仕事や生活上の悩みを聞き、社会人としてのあり方や社風、企業理念などを説いて助言を与える役目があります。
一般的には、先輩社員が新人や入社年数の浅い若手の精神面を支え、育成していく形が多いでしょう。業務でかかわる先輩や上司ではないため、仕事の指導役ではなく、メンタル面でのサポートをしていきます。
OJT制度やコーチングとの違い
OJT制度は、職場の上司や先輩社員が部下に対して、実際の業務を通じて指導する教育です。コーチングは、対象者の能力や可能性、目的達成のためのモチベーションを引き出すコミュニケーション方法です。
コーチングでは、メンター制度で重要なポイントとなってくる精神的な悩み相談というより、目標実現に向けた行動支援になります。
メンター制度は、仕事や人生の悩みなど範囲が広く、精神的な部分の支援に重きを置いていて、OJT制度やコーチングは、業務上にかかわる教育や能力を引き出すためのもの、という違いがあります。
メンターが求められるようになった背景
メンターが求められるようになったのは、社員育成の経費削減や働き方改革による変化が背景にあると言われています。ここでは、メンターが必要となった企業の事情を知っておきましょう。
社員育成の経費削減
厚生労働省の「能力開発基本調査」によると、正社員または正社員以外に対して令和2年度に計画的なOJTを実施した事業所は49.7%となっていますが、OJTで業務の流れを理解しても、メンタル面で不安を抱える社員は存在します。
入社年数が浅い社員の離職を防ぐためにも、メンタル面のケアとしてメンターを導入する企業が増えています。メンタル面での社員育成を同じ企業の人材で賄えば、経費削減に繋がるでしょう。
働き方改革による変化
働き方改革によって、上司と部下の関係性も変化しています。以前のように、上司から部下に対する叱責や飲み会を強要することは、ハラスメントとして認識されてしまうリスクが出てきました。
お互いの距離を一定に保つ関係性が増えてきたことで、部下が自分の悩みを打ち明ける機会も減ってしまったと言えるでしょう。
相談できる相手がいない状況でストレスを抱えると離職に繋がってしまうため、助言・指導を行うメンターという制度が必要とされています。
メンター制度の3つのメリット
メンター制度は、メンターとして指導に当たる人材と、指導を受ける人(メンティー)、企業にとってもメリットをもたらします。メンター制度のメリットを理解することで、企業が導入する意味を理解しましょう。
・メンターのメリット
・メンティーのメリット
・企業のメリット
1:メンターのメリット
メンターのメリットには、メンター自身の成長に繋がることや、メンターが自身のキャリアプランを考える起因になることなどが挙げられます。
指導役にもメリットがある点は、メンター制度の評価される部分でしょう。
メンターの成長に繋がる
会社からメンターに抜擢されたことで自分が頼りにされる存在になったと認識し、責任感が生まれます。通常業務以外でも、自分は会社の役に立っているという意識も芽生えるでしょう。
仕事に対するモチベーションがこれまで以上にアップし、自身の成長に繋がることがあるでしょう。実際にメンティーの悩みを解決することで、後輩へのマネジメントスキルの向上も見込めます。
メンターが自身のキャリアプランを考える起因になる
メンターは、メンティーにどのような助言をすればいいかを考える上で、相手の目線に落とし込むため過去の自分を振り返るようになります。
これまでのキャリアや成功・失敗体験を振り返ることで、自分が今どの地点にいるか再確認でき、キャリアプランを考えるきっかけになるでしょう。
成功体験から自分の強みをあらためて実感でき、今後伸ばしていきたい方向性を見出す機会にもなります。また、失敗体験から「当時は未熟で失敗したがもう一度チャレンジしてみたい」という気持ちが湧くこともあるでしょう。
2:メンティーのメリット
メンターのメリットがわかったところで、次は、メンターから指導を受ける側のメンティーのメリットについてご紹介します。相談できる機会を得るメンティーの利点としては、メンターの存在が心の支えになるといった点が大きいでしょう。
心の支えになる
新入社員の頃は特に、悩みがあっても自分の中で消化しようとしてしまい、抱え込んでしまうことがあります。慣れない人間関係で悩みを打ち明ける相手を見つけるのは、難しいでしょう。
しかし、メンターの存在によって直属の上司・先輩社員に話しにくい内容を相談できるようになるため、安心感を抱けるようになります。
メンターに悩みを打ち明けることで、仕事に対してキャリアの視野を広く持てるようになり、問題解決へのヒントを得ることもあるでしょう。
3:企業のメリット
メンターとメンティーのメリットがわかったところで、次はメンター制度を導入する企業側のメリットを見ていきましょう。メンター制度における企業のメリットとしては、離職防止に繋がることや、中堅層のマネジメント経験になる点が挙げられます。
離職防止に繋がる
メンター制度の大きな利点に、離職防止があります。社員の間で気軽に相談しやすい環境をつくることで、社員にとって会社の居心地が良くなるでしょう。
悩みが解決すれば、結果として「この会社でがんばっていこう」と言う気持ちになりやすいことから、メンター制度は離職率の低下にも貢献しています。
中堅層のマネジメント経験になる
マネジメントスキルは対象がいることでより成長しますが、マネジメントできる仕事は枠があり、なかなかその機会を業務で得られない人もいます。
しかし、メンター制度があればその問題を解決することも可能です。メンターになった社員は、自分が指導役という意識を持ち、メンティーにとってプラスになるような助言を与えようとするでしょう。
メンティーに見られていることを意識して、メンターの仕事に対して責任を持って取り組むようになります。企業にとって、中間層のマネジメントスキルの向上は事業拡大を進める上で大きなメリットとなるでしょう。
メンター制度を導入して得られる4つの効果
次は、メンター制度を導入して得られる4つの効果について見ていきましょう。企業がメンター制度を導入する際は、これから紹介するような効果を狙うために取り入れることが多いです。メンター制度を導入すると、以下のような効果が得られるでしょう。
・自立性のある人材育成に役立つ
・離職率を下げる
・社内のコミュニケーションが活気づく
・社員のストレスを和らげる
1:自立性のある人材育成に役立つ
実務の環境では意見を言いにくい社員も、メンターがいることでそのとき思っていることを相談できます。
そして、自分の提案に対してメンターから助言をもらい、実行に移せるようになるでしょう。実行した行動が成果を生めば自信に繋がり、自立性のある人材に成長していきます。
2:離職率を下げる
メンターとメンティーにおいて、異なる部署の人間を組み合わせることが前提になりますが、メンター制度の効果には、離職率の低下があります。
メンターから、第三者として客観的な視点からアドバイスをもらうことで、メンティーの不安な気持ちが和らぎ、離職を思い留まる確率が上がるでしょう。
ただ、双方の相性が悪いとそれが離職を決意させてしまうことにもなるため、関係性が良好ではない場合は解消する機会を設けるルールも必要です。
3:社内のコミュニケーションが活気づく
メンターとメンティーは、頻繁に会話を交わす機会が生まれるため、メンター制度は社内コミュニケーションの活性化に効果があると言えるでしょう。
特に、社内で個人同士の交流機会がない企業にとっては、メンター制度は人との距離を近づけるという意味で機能するでしょう。
4:社員のストレスを和らげる
メンターとメンティーが信頼関係を築けている場合、メンター制度はメンティーにとって、ストレスを抱え込むことなく打ち明ける場を設けてもらえる仕組みでもあります。
些細なことでも、口に出して言える相手を置くことは、ストレスを蓄積させないためにも必要です。
メンターに向いている人の4つの要素
メンター制度のメリットがわかったところで、次はメンターに向いている人の4つの要素を見ていきましょう。
メンターになるためには、特別な資格が必要なわけではありません。メンターに抜擢される基準は企業によってさまざまですが、以下のような要素は求められることが多いでしょう。
・総合的なコミュニケーション力
・同じ目線で接することができる
・適度な業務経験がある
・信頼関係を築ける人
1:総合的なコミュニケーション力
メンティーが相談する気持ちになるには、ある程度信頼関係が構築されていることが前提になります。
信頼関係を築いていく上でも、メンティーのペースに合わせたり、気軽に話せる雰囲気をつくる必要があるため、コミュニケーション能力はメンターの要素として必須です。
また、相談された際、メンターはメンティーの状況を的確に把握して指導するため、聞き取る力や、想定外の内容を告げられても受け止める力など、総合的なコミュニケーションスキルが求められます。
2:同じ目線で接することができる
メンターは指導側であるものの、上から目線の人間ではメンティーは遠慮してしまい、ストレスを感じてしまうでしょう。メンターの資質として、同じ目線で接することが求められます。
一般的に、メンターはメンティーよりも、社歴や年齢が少し上の人物が選ばれることが多いです。新人や若手社員であるメンティーの心情を理解するためにも、話しやすさが重要になるでしょう。
3:適度な業務経験がある
相談を受けて適切なアドバイスをするには、適度な業務経験があることもメンターの要素の1つです。メンターはメンティーと別の部署から選出されることが多いですが、メンティーの業務にメンターがかかわっていない場合、現状把握が難しくなります。
そこで、メンティーと近い業務を過去に経験している社員であれば、メンティーの状況を想像しやすく、相談される内容に対してもスムーズに理解できるでしょう。
4:信頼関係を築ける人
メンターとして大切なことは、メンティーと信頼関係を築けるかという点です。相手の声に耳を傾けられること、真摯に向き合えることは基本になるでしょう。
相手が真剣に悩んでいることも、適当に聞き流してしまう人はメンターとして不向きと言えます。
メンター制度を導入する上での6つの注意点
企業にとってメリットをもたらすメンター制度ですが、注意点も多く、認識しておかないと思ったような効果が期待できないケースもあります。
ここでは、メンター制度を導入する上での6つの注意点についてご紹介します。
・会話内容を他言しない
・成長スピードの違いを認識する
・叱責しない
・メンターを育てる環境
・会社としてバックアップ体制をつくる
・メンターのケアを忘れない
1:会話内容を他言しない
メンター制度を導入する上で大切なことは、メンティーから相談された会話の内容を他言しないことです。会話内容が漏れてしまうと、トラブルの原因にもなります。
口外しないことをメンター制度のルールとして設定しておくことが大切です。
2:成長スピードの違いを認識する
メンターが同じように指導しても、メンティーによって成長の度合いは違います。すぐに変化を感じないメンティーも中に入るでしょう。
成長速度は人それぞれだということを念頭に置き、焦らないことも重要です。しかし、どうしてもお互いの成長に繋がらず、プラスになっていないと感じれば、メンターの変更も視野に入れましょう。
3:叱責しない
若い世代は叱られることに慣れていないことが多いため、叱責しないこともメンター制度を運用していく上で大切なポイントです。
前述したように、手厚い指導をしても、思ったような成長をしないメンティーも存在します。そこできつく非難してしまうと、メンティーがさらに心を閉ざし、「相談することはありません」と言ってくることもあるでしょう。
4:メンターを育てる環境
メンター制度では、企業側が研修などを実施して、メンターの人材育成環境を用意しておくことも求められます。
メンターは、コミュニケーションスキルが高いことや、同じ目線で接することが可能なことなど、メンターとして適性のある人が選出されることが多いでしょう。
しかし、人によってサポート度合いにバラつきが出てしまうため、研修によって質を一定に保つ調整が必要になります。
5:会社としてバックアップ体制をつくる
メンター制度は、メンターを引き受ける人の通常業務を圧迫する可能性があるため、会社としてメンターの負荷を軽減できるようなバックアップ体制が必要です。部署内だけではなく、会社全体で、メンターにかかわる業務負担の見直しを検討することを視野に入れておきましょう。
また、メンティーの相談内容によって、メンターだけでは対応できない問題が潜んでいる可能性もあります。その場合の相談先をあらかじめ用意しておくと、メンターの負担も軽減できるでしょう。
6:メンターのケアを忘れない
人の相談事に対して真剣に対応するのは、簡単なことではありません。メンターの役割は、通常業務をこなしながらになるため、オーバーワークになることもあります。
メンターの仕事が、精神的にも体力的にも負担を強いることになっていることを考慮し、上司か人事がメンターのケアを心がけることを忘れないようにしましょう。
メンター制度を導入した3つの事例
メンター制度といっても、目的や効果は企業によって多岐に渡るため、単純に社内のコミュニケーションの活性化や離職率の低下が改善されるだけではありません。
最後に、メンター制度を導入した3つの事例についてご紹介します。実際に、メンター制度によってどのような効果があるのか見ていきましょう。
・女性社員のキャリア形成支援
・就業体制によるコミュニケーションの問題解決
・年齢関係を逆転させたリバースメンター
1:女性社員のキャリア形成支援
メンター制度を導入した事例として、女性社員のキャリア形成支援があります。女性にとって仕事は、出産後家庭との両立が難しくなり、キャリアアップどころではないという人も出てくるでしょう。
こうした問題を解決するために、ある企業では、すでにいくつかのライフイベントを経験している先輩社員がメンターを担当し、若い女性社員の助けになるようなメンタリングプログラムを制度として取り入れています。
2:就業体制によるコミュニケーションの問題解決
就業体制によるコミュニケーションの問題解決も、メンター制度の導入事例の1つです。大手百貨店では、多くの社員がシフト制で働いているため、同じ社員がシフトを合わせて働くことが難しく、OJT運用が課題でした。
また、従業員同士の交流が希薄になっている問題を解決するためにも、入社4年目ほどの社員をメンティーに、入社して10年ほど経過している社員をメンターに配置したメンター制度を導入しています。
入社年数の少ない社員の能力開発やメンターに抜擢された社員のマネジメントスキル向上、入社年数の違うもの同士の相互理解などの促進を図っています。
3:年齢関係を逆転させたリバースメンター
メンター制度では、メンターの方が先輩社員であることが一般的ですが、年齢関係を逆転させたリバースメンターという事例があります。
これは、メンターとメンティーの年齢関係を逆転させた施策であり、若手社員が、現代社会での常識やそのとき現場で起こっていることについて、先輩社員や上級管理職、役員に伝えるものです。
SNS活用などのITスキルなど、その時代の流行に敏感な若い世代から情報を得ることで、年齢の高い層に理解を促すことが狙いです。世代間ギャップを埋めることにも繋がっています。
メンターについて理解を深めよう
メンターとはなにか、そのメリットや導入する際の注意点について紹介しましたが、いかがでしたでしょうか。これまで、メンター制度を取り入れてこなかった企業は、導入によって社風や体制が変化していくこともあるでしょう。
メンター制度はメリットばかりではなく、注意点も存在します。メンターとして抜擢される可能性がある方は、本記事を参考にメンターがどのようなものか理解を深めておきましょう。