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『国境の南、太陽の西』とは?
あらすじ
あの日なら、僕はすべてを捨ててしまうことができた。仕事も家庭も金も、何もかもをあっさりと捨ててしまえた。ジャズを流す上品なバーを経営し、妻と二人の娘に囲まれ幸せな生活を送っていた僕の前に、十二歳の頃ひそやかに心を通い合わせた同級生の女性が現れた。会うごとに僕は、謎めいた彼女に強く惹かれていって。日常に潜む不安と欠落、喪失そして再生を描く、心震える長編小説。
この作品は、村上春樹が描く大人の恋愛小説です。主人公の「僕」は、結婚して子供もいますが、昔の同級生「島本さん」に強く惹かれてしまいます。形だけみると不倫の話なのですが、主人公の気持ちを恋心や愛情ではなく、「どうしようもない何か」という衝動的な心情の動きで表しているのが、読んでいて引き込まれます。
また、この物語の一貫しているテーマとして、「日常に潜む不安をみずみずしく描く」と解説されています。どんなに順風満帆にいっているように見えても、人間の内側は誰にも分からない。不安は至るところに潜んでおり、どのような形でそれが見えてくるのかも分からない。そんな誰でも抱えている不安を、この作品は恋愛という形で表しています。
様々な解釈の仕方が出来る小説なので、まだ読んだことがない人はぜひ読んでみて下さい!
『国境の南、太陽の西』が好きな人におすすめの小説5選!
紙の月|角田光代
あらすじ
わかば銀行の支店から一億円が横領された。容疑者は契約社員として銀行に勤めていた41歳の梨花。正義感が強く真面目な働きぶりで評価されていた彼女がどうして横領をしてしまったのか。大学生の光太との関係、自身の愛を信じた故の結末とは。
第25回柴田錬三郎賞を受賞し一躍話題となったこの作品では、ごく普通の主婦・梨花が大学生の光太との関係の中で暴走、平凡な人生や家庭を手放してまで夢中になってしまう危険な心理描写を描いています。
物語の中でどんどん堕ちていく梨花の姿や中年女性が共感できるリアルで切ない感情、現実社会でも起こり得る身近な行動など読んでいて理解しやすい内容が印象的です。読む手を止めてしまいたくなるほど可哀想で考えさせられる展開に惹かれます。
サヨナライツカ|辻仁成
あらすじ
“好青年”と呼ばれる豊は結婚を控えるなか、謎の美女・沓子と出会う。そこから始まる激しく狂おしい性愛の日々。二人は別れを選択するが二十五年後の再会で…。愛に生きるすべての人に捧げる渾身の長編小説。
「人間は死ぬとき、愛されたことを思い出す人と愛したことを思い出す人に分かれる。」という言葉が読者の心を強く打つ作品です。自身の出世と成功のために堅実な人生を送ってきた主人公が、タイプの異なる2人の女性の間で気持ちが揺れ動く様を繊細に描いています。
「愛したことを思い出す」情熱的で刹那的に求め合う沓子との日々、「愛されたことを思い出す」控えめで奥ゆかしい婚約者の光子との半生は、どちらも強く共感を生むでしょう。
そのような人間の持ち合わせる両面性を、日常生活で触れ合う人間ドラマとともに上手く綴られています。また、アユタヤやチャオプラヤー川などの地理、トムカーガイやカオソーイなどの料理の描写がとても具体的で、行ったことはありませんが2人が過ごしている様子が頭に浮かんできて、すっと物語に入り込んでしまうような感覚になる作品です!
愛でもない青春でもない旅立たない|前田司郎
あらすじ
何が愛で何が青春か?そして旅立つと言っても一体どこへ?主人公の「僕」は大学に通い、さしあたって大きな悩みもなく、健康で何不自由のない生活を送っている。しかし一体なんだこの得体の知れない恐怖は。焦燥感はどこから来るのか。寂しさは?東京生まれ東京育ちの著者による初めての青春小説。
前田司郎のデビュー作であり、芥川賞の候補にもなったとされる小説作品です。主人公のモラトリアム感たっぷりとした日々の繰り返しには、とても味わい深さを感じられます。
文中には、ユーモアセンスのあるセリフが散りばめられており、読者の心に強く訴えかけるでしょう。特に、「歩く僕の時間を世間の時間が追い越している。」という言葉は、まだ大人になりきれない少年の、将来の漠然とした想いや不安が繊細に伝わってきます。
人間関係における周りとの微妙な温度差や距離感、そして魅力的な2人の女性の狭間で揺れ動きながらも、自分の衝動を抑えきれない少年の心の移り変わりにぜひ注目して読んでみてください!
A2Z|山田詠美
あらすじ
文芸編集者・夏美は、年下の郵便局員・成生と恋に落ちた。同業者の夫・一浩は恋人の存在を打ち明ける。恋と結婚、仕事への情熱。あるべき男女関係をぶち壊しているように思われるかもしれないが、今の私たちには、これが形。AからZまでの二十六文字にこめられた、大人の恋のすべて。
第52回讀賣文学小説賞を受賞したこちらの作品は、文芸編集者・夏美と年下の郵便局員・成生との恋を描いた恋愛物語です。また、大人の極上の恋愛小説、読売文学少女賞の傑作とも評されるなどファンの多い作品です。
「W不倫」がテーマとなっており、序盤から夏美が成生との恋に落ちるだけでなく、同業者であり夫・一浩も恋人の存在を打ち明けるなど大人の恋と新しい夫婦の形が構成されていきます。
AからZまでの文字に隠された意味とそれに基づく展開、不倫をしているにも関わらずどこか憎めない登場人物たち、爽やかさと恋の魅力に思わず引き込まれてしまうこと間違いなしです。幅広い年齢層が共感出来る作品になっています!
夜明けの街で|東野圭吾
あらすじ
不倫をするやつなんて馬鹿だ。そう思っていても、一度恋に落ちるとどうしようもなくなってしまう…。建設会社に勤める渡部と派遣社員の秋葉の不倫関係は、秋葉の抱える誰にも明かせない事情をきっかけに予想だにしない展開へと変わっていく。
作品を読み進めるうちにどんどんと目が離せなくなるほど謎の多い展開になっています。関係を深める中で知ってしまう秋葉の複雑な事情、そして15年前に起きた殺人事件との関係など、東野圭吾の世界観満載の恋愛サスペンス小説です。
内容が分かりやすいので非常に読みやすく、推理というよりも読み進めていくことで謎が解明し、真相が明らかになっていく面白さがあります。恋愛をする中で、誰しも一度は感じたことのある心理描写に共感できること間違いなしです!
幻想と現実が入り混じる世界観を堪能しよう
いかがでしたか?今回は、「恋愛」を主軸とした様々なテーマのある小説を紹介してきました!誰しも一度は感じたことのある感情を異なる世界観で表されており、読む手が止まらなくなってしまうこと間違いなしです!ぜひあなたのお気に入りの小説作品を見つけてみて下さい。