伊藤潤二は日本のホラー漫画家です。
アートとしても評価される美麗で緻密な絵と、奇抜な発想を独創的な世界観に昇華させる才能は、いまや日本国内にとどまらず各国に熱狂的なファンを生み出しています。
今回は、伊藤潤二の“おぞましくも美しい“作品たちをご紹介します!
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伊藤潤二ってどんな人?
まずは漫画家、伊藤潤二のプロフィールをご紹介します。
人物の説明
伊藤潤二は1986年2月、月刊ハロウィン(朝日ソノラマ)の第1回楳図賞に投稿した作品『富江』が掲載され、デビューしました。
デビュー後しばらくは歯科技工士と並行して活動していましたが、1990年には専業となりました。
コンスタントに作品を発表し、ニューウェーブホラーの第一人者として現在でも活躍されています。
デビュー作『富江』や幻想ホラー 『うずまき』などが代表作です。
漫画家としての立ち位置
日本人初のLibrary Journalのベストブックスへ選出、第50回アングレーム国際漫画祭では特別栄誉賞、サンディエゴ・コミコンではインクポット賞を受賞するなど、国際的にも高い評価を得ています。
また漫画界のアカデミー賞と呼ばれるアイズナー賞を計4回受賞の快挙を達成しました。
これは手塚治虫の5回受賞に次いで、大友克洋の4回受賞と並ぶ受賞数です。
映像化した作品も多く、デビュー作でもある『富江』は計8回も映画化され、人気の高さを伺うことができます。
作風
美人画のような優美さとグロテスクさを描き出す一方で、ホラーでありながら笑いの要素も残された作風が特徴です。
丸ペンを使った緻密な描き込みの画風は「ホラー漫画というジャンルを超越した唯一無二の芸術」とも称され、奇妙かつリアル、そして怪しさと美しさが感じられます。
代表作と読むべき順番とは?
次に伊藤潤二の代表作と読むべき順番をご紹介します。
1.『富江』
引用元:Amazon
説明
富江は何度殺されても、どこからか現れ、平然と復活します。
どんなにバラバラにされても体の一部から復活する再生能力や、作品から漂う不気味さは伊藤潤二ならではの特徴です。
彼女からは逃げられないという恐怖心が、読者の心を離しません。
一方で富江はその美しさゆえに作中で何度も殺害されます。
加害者であり、被害者でもある富江の美しさに出会ったらもう、逃れることはできません。
2.『うずまき』
引用元:Amazon
説明
何が怖いとは具体的に言い表すことはできないのですが、「うずまき」に執着する人々の行動が常軌を逸しているものであることから、底知れぬ恐怖を感じます。
少しずつ人々が「うずまき」に犯されていく様が描かれ、やがて想像もしえない結末へとつながっていきます。
一方で、リアリティーもありながら、作品にどこかコミカルな部分もあるのが、より一層作品の面白さを増しています。
物語の展開力、見るものを惹きつける画力、まさに「うずまき」のような引力を持つこの作品は伊藤潤二の傑作の一つといえるでしょう。
3.『死びとの恋わずらい』
引用元:Amazon
説明
辻占いとは黄楊 (つげ) の櫛 (くし) を持ち、道の辻に立って、最初に通る人の言葉を聞き吉凶を判断するという、古くから日本で行われてきた占いです。
濃霧の街を徘徊し、冷酷な言葉を吐くという、愛を知らない四つ辻の美少年の禍々しさと美しさが、哀しくも魅力的な作品です。
少年は怪異に憑かれ、少女は恋に憑かれる、どこか耽美で物悲しい雰囲気を楽しむことができます。
謎の美少年の悪魔的なお告げによって人格を変えられ破滅していく者たちの姿から、目を離すことができません。
余話『白服の美少年』も併せて読むと、物語の真相が明らかになります。
4.『ギョ』
引用元:Amazon
説明
魚から4本の足を生やした歩行魚が海から大量に襲ってくるパニックホラー。
細菌に感染してしまったら自分の体が内側から腐っていき自分の死臭を嗅ぎ続けて歩行器に取り付けられ意識を失うまで生き続けることになります。
想像しただけで気持ち悪いですよね。
パニックホラーものが好きな方は是非読んでみて下さい、普通のホラーとは違った気持ち悪さと生臭さを感じることが出来ます。
5.『伊藤潤二自選傑作集』
引用元:Amazon
説明
作者本人が厳選しただけあって、どの作品にも「らしさ」がふんだんに含まれており、「伊藤潤二のホラーを味わいたい!」という方にはお勧めの傑作集です。
個人的に収録されている『グリセリド』は今まで読んだ中で圧倒的な気持ち悪さで、トラウマ級の作品となりました。
伊藤潤二作品は、ただ怖い・気持ち悪いのではなく、人間の持つ「気持ち悪いけど見てみたい」という相反する欲求を突いて来るとも言えるでしょう。
読むべき順番
伊藤潤二は作品数が多く、どの作品から手を付けて良いかわからない…という方も多いと思います。
おすすめは先ほど代表作として紹介した5作品を順番に読んでいくこと!
5作品目を読み終わるころには、伊藤潤二作品の美しさと恐ろしさ、作品としての完成度の虜になること間違いなしの順番です。
【アニメ】伊藤潤二『コレクション』おすすめ5選!
伊藤潤二の漫画作品は数多くのアニメや映画が公開されています。
今回はアニメ伊藤潤二『コレクション』より、5作品を紹介します。
1.第1話『双一の勝手な呪い』
説明
伊藤潤二作品の中でもホラーギャグ要素が強い双一シリーズ。
「ホラーな目にあわせてやる」が決め台詞で、日々悪意をばらまきながら生きていますが、詰めが甘いためだいたい自分も酷い目に合う、という憎めない男の子です。
双一が石坂を追いかけるシーンも迫力満点で、漫画とも違う動画のパワーを感じることができます!
2.第2話『ファッションモデル』
説明
作中に登場するファッションモデル、淵さんは瘦せた長い顔に薄い眉毛、口を開くとサメのような歯が現れる、という異様な存在感を放つ女性です。
車内での和やかなトークシーンや、淵さんへの恐怖を抱く岩崎が彼女から追われるシーンは、アニメならではの迫力を楽しむことができます。
3.第5話『押切異談』
説明
押切トオルに巻き起こる不思議な出来事を描く押切シリーズ、そのシリーズ名となる押切君が登場するのが、今回放送された『押切異談』です。
押切君の家は異次元につながっており、別の自分や同級生が家の中に突然現れます。
アニメ版『押切異談』は怪物の気持ち悪さが漫画よりコミカルに描写されており、ホラー表現としてはライト寄りの印象、伊藤潤二初心者の方はこの回あたりから見てみるのもいいかもしれません。
4.第7話『道のない街』
説明
一体何が何やら・・・という話なのですが、そこは流石伊藤潤二作品というべきでしょうか、この訳の解らなさこそが面白くてクセになります!
異常な行動をとるようになった家族、変異していく街、切り裂きジャック…。
超展開が続くため、人によってはホラーというより訳の分からない夢のようだととらえる人も多いです。
悪夢のような幻想的なストーリーに引き込まれること間違いなしの名作です。
5.第9話『画家』
説明
伊藤潤二作品の圧倒的人気キャラ、富江の登場する回!
漫画でもアニメでも、変わらず蠱惑的な魅力を持つ富江にほれぼれとしてしまいます。
誰かを殺してでも自分のものにしたくなるほどの富江の美しさと、感情を爆発させ罪を犯す森のシーンは作画班の意気込みを感じます。
薄気味悪く、そして美しいホラーが好きな方におすすめです。
ホラー以外のおすすめ作品3選!
伊藤潤二はホラー漫画を主に執筆していますが、それ以外の作品も存在します。
ここではホラー漫画以外の3作品を紹介します。
ホラーが苦手な方は、まずはここから読んでみるのがおすすめです。
1.『人間失格』
引用元:Amazon
説明
日本文学の不朽の名作『人間失格』をトップホラー漫画家である伊藤潤二が独自の表現で描いた作品。
他人の視線が怖くてたまらなくて、その結果嘘を重ねて、関わる人たちを不幸にしてしまう葉蔵の魅力をホラーとして表現するという技は、まさに伊藤潤二ならでは。
個人的にはモテモテの葉蔵を取り巻く女性陣が、可憐な可愛さでお気に入りです。
原作『人間失格』を読んだことがある方もない方も、”新解釈”『人間失格』として読んでみてもよいかと思います。
2.『憂国のラスプーチン』
引用元:Amazon
説明
佐藤優の著書『国家の罠』をコミカライズした本作。
組織とは、官僚とは、そして外交とは、そして「国策捜査」とは、日本の体制について深く考えるきっかけを与えてくれることは間違いありません。
無実を主張する外交官vs罪を捏造する検察官。取調室内の息詰まる闘い。
巻末の座談会も含め、知らない世界を垣間見れるような作品です。
3.『伊藤潤二の猫日記 よん&むー』
引用元:Amazon
説明
猫好き必見!
伊藤潤二の独特のタッチで描かれる猫漫画です。
ほのぼの猫エッセイがホラーテイストになるとこんなに面白いのか!と思わせてくれた作品。
ホラー漫画家の書く猫…人間を食いちぎるくらいしてきそうですし、絵や台詞回しはホラー漫画のそれであるのにも関わらず、描写自体は猫飼いならあるあると頷きたくなってしまう日常の光景ばかりなので、ギャップで笑ってしまうこと間違いなしです!
珠玉の作品を読んで恐ろしくも美しい世界に引き込まれよう
今回は伊藤潤二作品の読む順番やアニメ化作品、ホラー以外のおすすめ作品をご紹介させていただきました。
今でも日本のホラー漫画界の第一線を走り続ける伊藤潤二の作品は、どれも気味の悪さと魅力にあふれたものであったかと思います。
また2024年5月現在、東京都にある世田谷文学館にて、企画展『伊藤潤二展 誘惑 JUNJI ITO EXHIBITION:ENCHANTMENT』が2024年4月27日(土)~9月1日(日)の日程で開催されています。
伊藤潤二初の大規模な個展である本企画展は、自筆原画やイラスト、絵画作品に加え、描き下ろしの新作も楽しむことができます。
漫画でも展示でも、日常と非日常、ホラーとユーモアを自在に行き来する伊藤の作品世界に“震える”ひと時を楽しんでみるのはいかがでしょうか?