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【2024最新】伏線回収がすごい小説ランキングTOP17!ミステリー・感動・恋愛・ファンタジーなど

ミステリー恋愛小説ミステリー小説ファンタジー小説本格ミステリ感動小説

2024/08/05

その小説が面白いか否か。それは、伏線回収の見事さにかかっていると言っても過言ではありません。

よく「伏線回収=ミステリー小説」という図式で語られますが、実は恋愛小説やファンタジー小説など、幅広いジャンルで伏線回収がすごい小説が存在します

今回は、見事な伏線回収をみせてくれる、文句なしに面白い小説をランキング形式でご紹介します!

※ランキングは筆者の個人的な感想に基づき、独断で作成しております。

目次[ 表示 ]

「伏線回収」がすごい小説の面白さとは?何度も読みたくなる!

「伏線」とは、著者が小説内の様々な場所で読者に提示した”結末への手がかり”であり、「伏線回収」とは、それらの手がかりが全て辻褄が合うように物語に決着を付けることを言います。

この「伏線」は読者に気が付かれるか気が付かれないかという微妙なほのめかしであることが重要で、あまりにあからさま過ぎると読者に結末がわかってしまいますし、逆に分かり難いとそもそも伏線があったことに気付かれません。
ここのバランスが著者の腕の見せどころで、人気ミステリー作家たちはこのような伏線の勘所を抑えているのです。

また、伏線が張り巡らされた小説を読むには読者の注意力も非常に重要となってきます。
実は、ミステリー小説に張り巡らされた伏線の殆どに読者は気が付かないと言われており、著者が張り巡らせた伏線のうち、そもそも伏線だと気が付くのはごくわずか※。
何度も読み返してみて初めて「ここが伏線になっていたのか!」と気が付くこともしばしばです。
熟練のミステリマニアであれば気が付くことも、ミステリーを読みなれていないと気が付かないこともあるので、伏線回収のすごい小説を100%楽しむためには、様々な小説を読み、伏線を見つける力をつける必要があります。

「伏線がすごい」と言われている小説は、是非1文1文細かいところまで気を配って読んでみてくださいね。

※新井久幸『書きたい人のためのミステリ入門』新潮新書 参照

伏線回収といえば、どんでん返し系の作品は欠かせませんよね。
下の記事でどんでん返し系ミステリー作品を紹介しているので、是非併せてご覧ください!

【2024最新】どんでん返しミステリー小説おすすめランキングTOP22!伏線回収がすごい文庫作品など

衝撃的な伏線回収!伏線がすごい小説おすすめランキングTOP17

1.『イニシエーション・ラブ』|乾くるみ

著者
乾くるみ
レーベル
文春文庫
ページ数
272ページ

あらすじ

主人公・鈴木は、代打で出た合コンの場で清楚な女性マユと出会い、やがて恋に落ちるが…。

凡庸な恋愛小説のはずが、まさかの…。

「伏線回収がすごい小説」と本好きに聞くと、必ずあがるのが本作『イニシエーション・ラブ』。

内気な主人公と清楚な女性マユが出会い、恋に落ち、やがてふたりの関係に影が差し…という、非常にありふれた恋愛小説のような筋書ですが、ラストで一気に突き落とされます

読んでいる最中、強烈な違和感を抱きながらも、なぜか真相には気付けない。

松田翔太さんと前田敦さんのW主演で映画化された話題作です。

2.『自由研究には向かない殺人』|ホリー・ジャクソン

著者
ホリー・ジャクソン (著), 服部 京子 (翻訳)
レーベル
創元推理文庫
ページ数
581ページ

あらすじ

イギリスの小さな町に住むピップは、大学受験の勉強と並行して”自由研究で得られる資格(EPQ)”に取り組んでいた。
題材は、5年前に起きた少女失踪事件。
少女の恋人であった少年が遺体で発見され、警察は彼が少女を殺害して自らも命を絶ったと事件にけりをつけた。
犯人と目されている少年と親交があったピップは、彼の無実を証明するため、自由研究を隠れ蓑に事件の真相を追う。

ブリティッシュ・ブックアワード受賞!ミステリの本場・イギリスで大流行したベストセラー小説

2022年本屋大賞翻訳小説部門をはじめ、国内外の数々の賞に輝いた本作『自由研究には向かない殺人』は、本場イギリスの数多のミステリファンをも唸らせた、二転三転する展開から目が離せない本格ミステリです。
シリーズ化され、現在では続編『優等生は探偵に向かない』『卒業生には向かない真実』と、計3作の邦訳が刊行されています。

撮影した写真やSNSの画面、手帳など、実際に捜査していく中で得られた証拠が読者にそのまま提示されるのも本の仕掛けとして非常に面白く、湊かなえさんの『白ゆき姫殺人事件』のようなリアルな雰囲気がお好きな方に是非手に取っていただきたい作品です。

リアルなティーンエイジャーの息遣いが感じられるほど臨場感あふれる、まるで冒険小説のような本作は、読むと止まらなくなる恐れがあるため、時間がないときはご注意を!

3.『medium 霊媒探偵城塚翡翠』|相沢沙呼

著者
相沢沙呼
レーベル
講談社文庫
ページ数
496ページ

あらすじ

推理作家の香月史郎は、「夢枕に女が立つ」という大学時代の後輩・倉持結花とともに、死者が見えるという霊媒師・城塚翡翠のもとへ向かう。
しかし、後日香月史郎と城塚翡翠が共に結花のもとへ向かうと、彼女は自宅アパートで血を流して死んでいた。
香月は霊媒師の能力を活かして犯人を探すという城塚とともに、結花を殺害した犯人を推理していくが…。

「真相を見抜いた」。そう思った瞬間、あなたは騙される!

発売されるや否やミステリ界内外を問わず瞬く間に話題となった本作『medium 霊媒探偵城塚翡翠』。
話題になりすぎて、実写ドラマ化・シリーズ化・コミカライズと、瞬く間に横展開していきました。

本作は近年人気の二転三転ものですが、実は、一つ目のどんでん返しはかなり分かりやすく作られています。
読者が伏線に気がついたとき、真犯人まではっきりと見通すことができ、結末を確信するでしょう。
…しかし、その油断が命取り。探偵役・城塚翡翠の作中の言葉すら、全て伏線になっていたことに気が付いたとき、あなたは予想もしない真実を目にするのではないでしょうか…。

リアルタイムで読むほど楽しい、事前情報を極力遮断して読みたいミステリ作品です。

4.『双頭の悪魔』|有栖川有栖

著者
有栖川有栖
レーベル
創元推理文庫
ページ数
698ページ

あらすじ

四国山中に孤立する芸術家の村へ行ったまま、戻らないマリア。
英都大学推理研の一行は大雨の中村への潜入をはかるが、ほどなく橋が濁流にのみこまれて交通が断絶してしまった。
河野両側に分断された推理研のメンバーは、それぞれ殺人事件に巻き込まれ、各々の真相究明をはじめる。

日本のミステリ界を代表する巨匠・有栖川有栖の代表作!3度の挑戦に、答えられるか?

日本のミステリ界を代表する巨匠・有栖川有栖。

ミステリをかじったことのある者であれば知らぬものはないという程高名な彼の代表作が、本作『双頭の悪魔』です。
数多の傑作が並ぶ彼の作品の中でなぜこの作品が「代表作」とされているのかという由縁は、やはり本作のトリックにあるのではないでしょうか。

読者への公平性を重んじ、ミステリマニアにとってはたまらない「読者への挑戦状」が3度も付された本作では、非常にロジカルに犯人や動機、トリックがつくりこまれています。
本格好きさんにはもちろん、これからミステリの世界に入りたいという方にもおすすめです。

5.『ベーシックインカムの祈り』|井上真偽

著者
井上真偽
レーベル
集英社文庫
ページ数
288ページ

あらすじ

教授は私に問うた。なぜ、執筆している短編集のテーマに「ベーシックインカム」を選ばなかったのか、と。私は不信感を抱いていたのだ。ベーシックインカムという制度ではなく、教授自身に。

1作品で6度美味しい!大注目のミステリ作家・井上真偽の真骨頂をご覧あれ!

ドラマ化された『探偵が早すぎる』をはじめ、数々の傑作ミステリを生み出してきた井上真偽。
彼の特徴は非常に緻密に練り上げたロジックであり、作中に張り巡らされた手がかりを探偵役が説明してくれるため、伏線回収が好きな方や本格好きさんに非常におすすめです。

特に短編5作が収録された本作『ベーシックインカムの祈り』では、全ての作品が最後の1編に収束するという壮大な伏線回収が仕掛けられており、各話の楽しさは勿論、最終話を読んでからもう一度それまでの短編を読み返すという、計6回の楽しさが味わえます。
井上真偽本人の話なのではないか…?と思わせてくるような設定も見所です。

6.『俺ではない炎上』|浅倉秋成

著者
浅倉秋成
レーベル
双葉文庫
ページ数
376ページ

あらすじ

外回り中の営業部長・山縣泰介に、会社から「とにかくすぐ戻れ!」という緊急の電話が入った。
泰介が「女子大生殺害犯」であるとされ、ネットに実名・写真付きで晒されて大炎上しているらしい。
どうやら、SNSで犯行を自慢していたアカウントの持ち主であると誤認されてしまったようだ。
すぐに誤解が解けるだろうと楽観視していた泰介であったが、なりすましは実に巧妙で、会社も友人も家族も、誰ひとりとして無実を信じてくれない。
ほんの数時間にして日本中の人間が敵になり、誰も彼もに追いかけられる中、泰介は必死の逃亡を続ける。

伏線回収の名手・浅倉秋成による、「炎上逃亡ミステリー」!

伏線回収がすごいミステリーとして名高い『六人の噓つきな大学生』。
その著者である浅倉秋成が今回仕掛けるのは、数時間の間に凶悪殺人犯に仕立て上げられ、日本中を敵に回すことになった男の逃亡ミステリーです。

じっくりと読まなければ気が付かないような伏線が各所に張り巡らされており、最後に全ての意味が明らかになった後読み返すと著者の力量に圧倒されます。
『六人の噓つきな大学生』ほどダイナミックなどんでん返しのある作品ではありませんが、「伏線回収」という点で著者の作品群の中でも特にずば抜けている作品です。

7.『アヒルと鴨のコインロッカー』|伊坂幸太郎

著者
伊坂幸太郎
レーベル
創元推理文庫
ページ数
384ページ

あらすじ

引っ越してきたアパートで出会ったのは、悪魔めいた印象の長身の青年。
初対面だというのに、彼はいきなり「一緒に本屋を襲わないか」と持ちかけてきた。
しかも、彼の標的はたった一冊の広辞苑⁉
そんなおかしな話に乗る気などなかったはずなのに、決行の夜、僕は何故かモデルガンを手に書店の裏口に立ってしまっていた。

張り巡らされた伏線で作り上げられる伊坂幸太郎…だけじゃない!

伊坂幸太郎といえば、伏線が張り巡らされながらも、どこか軽いタッチで描かれる世界観。

本作でも同様に伊坂幸太郎ワールドが展開されますが、それだけでなく、伊坂幸太郎が「肌に合わない」と感じていた人をも惹きつける「余韻」があります。
伊坂幸太郎作品の中では稀なほど後味に特徴がある作品で、登場人物たちの心情が読後もずっと胸にしみわたり、共感のような、寂しさのような、独特な余韻が残るのです。

「広辞苑一冊を奪いに行く」というあらすじからは想像もできないような展開と結末を、是非見届けてください。

8.『私の命はあなたの命より軽い』|近藤史恵

著者
近藤史恵
レーベル
講談社文庫
ページ数
288ページ

あらすじ

初めての出産を間近に控えた遼子。夫の克也が突如ドバイへ赴任することになったため、遼子は大阪の実家に戻って出産を迎えることに。
しかし、実家に帰ると、仲の良かったはずの家族の様子がおかしい。
両親と妹の美和との間に、会話がない。
初孫なのに、両親も妹も歓迎する雰囲気は全くない。
そして、父は新築したばかりの自宅を売却しようとしており…。
不穏な空気が流れる実家で、出産への不安と家族への不信感が溢れ出る。
家族を襲った出来事とは…?

不穏な雰囲気の中、ページをめくる手が止まらない!一気読み必至の恐ろしさ

『ときどき旅に出るカフェ』や「〈ビストロ・パ・マル〉シリーズ」など、食べ物が出てくるほっこり系ミステリーの印象が強い近藤史恵ですが、本作では同一著者とは思えないほど恐ろしく、不穏な雰囲気の家庭が描かれます。

幸せな家庭で育ったはずの遼子が里帰り出産のために帰省すると、家族は不穏な雰囲気で…というあらすじですが、勿論そこでは終わりません。
とにかく胸糞が悪く評価の分かれる作品ですが、非常に読みやすく、短時間で一気読みできるので是非1度手に取ってみてください。

『わたしの命はあなたの命より軽い』というタイトルが示す家族の力関係は歪で、本作が終わった後の顛末にも恐ろしさを感じずにはいられません。

9.『君のクイズ』|小川哲

著者
小川哲
レーベル
朝日新聞出版
ページ数
192ページ

あらすじ

生放送のクイズ番組『Q-1グランプリ』の決勝戦に出場したクイズプレーヤーの三島玲央は、対戦相手の本庄絆が、まだ1文字も問題文が読まれないうちに回答し、優勝を果たすという不可解な事態に直面する。
訝しんだ玲央は、なぜ絆が正答できたのか、その真相を解明すべく、決勝戦を1問ずつ振り返る…。

クイズの技術を突き詰め、クイズだけで一冊を構成した唯一無二の〈クイズ小説〉

TV等でおなじみの「クイズ」。
近年では「東大王」や「QuizKnocK」などが話題を呼び、ファン層を拡大し続けていますが、本作はそんな「クイズ」の技術をとことん突き詰めて、ミステリー小説に仕立て上げました。

1文字も問題が読み上げられていなかったにも関わらず、なぜ対戦相手は正解できたのか。
クイズに正答するための技術を細かく解説しているくだりはクイズファン必見。

クイズ番組がもっと楽しくなること間違いなしの1冊です。

10.『煌夜祭』|多崎礼

著者
多崎礼
レーベル
中公文庫
ページ数
299ページ

あらすじ

ここ十八諸島では冬至の夜、漂泊の語り部たちが夜を徹して物語を語り合う「煌夜祭」が開かれる。
彼らが見聞きしてきた世界中のお話。
今年も、死なない体を持ち、人を喰う魔物たちの物語が語られる――。

「伏線がすごい」ファンタジー作品!ひとつの物語に収束する、圧巻のプロット

「伏線回収って、ミステリー小説のジャンルでしょ?」そんな固定概念を覆してくれるのが、本作『煌夜祭』です。
冬至の夜、2人の語り手が千夜一夜物語形式で交互に物語を語っていくというストーリーで、そのすべてに「冬至の夜に人を喰う魔物」が登場するが…。

最初なんの繋がりもないように見えたふたりの語り部の話が、徐々に重なり合っていき、最後にはひとつの流れに収束するというプロットは、まさに圧巻。
ハッピーエンドの上質な幸福感は、ファンタジーを読んで良かったと思わせてくれます。

11.『リバース』|湊かなえ

著者
湊かなえ
レーベル
講談社文庫
ページ数
352ページ

あらすじ

平凡なサラリーマンである深瀬和久の唯一の趣味は、美味しいコーヒーを淹れることだ。
そんな深瀬はある日、行きつけの近所のクローバーコーヒーで、越智美穂子という女性と出会った。
何度か店で会ううちに付き合い始めたふたりであったが、幸せな日々の中突如、美穂子のもとに「深瀬和久は人殺しだ」と書かれた告発文が届く。
深瀬が人に隠していた”闇”とは…。

「イヤミスの女王」のミステリーは、伏線回収も超一流!

数々の後味の悪い傑作ミステリーを生み出し、「イヤミスの女王」と呼ばれる湊かなえ。
彼女の作品の中でも特に伏線回収に定評があるのが、本作『リバース』です。

タイトルを裏切らないラスト1ページは、まさに衝撃。
後味の悪い作品をお探しの方であれば、必ずご満足いただけることでしょう。

もし自分が主人公の立場だったら…と、主人公のその後を考えずにはいられない作品です。

12.『世界でいちばん透きとおった物語』|杉井光

著者
杉井光
レーベル
新潮文庫
ページ数
240ページ

あらすじ

大御所ミステリー作家の父が死去した後、婚外子である「僕」のもとに彼の長男から電話が入り、奇妙な成り行きから一度も会ったことのない父の遺稿『世界で一番透きとおった物語』を探し始める。
はじめはお金欲しさに始めた仕事であったが、父と生前関わったひとたちに接触していくうちに、「僕」の中には父に対する奇妙な感情が芽生え始めていた。
しかし、「僕」の原稿探しを妨害しようとする何者かの手が迫り…。

電子書籍化絶対不可能!真相にたどり着いたとき、物語のすべてが”透きとおる”

2023年に刊行されるや否や、瞬く間に話題となった本作は、本自体への仕掛けから「電子書籍化は絶対不可能」と言われています。
そのワケは是非ご自分で本を手に取って確認してほしいのですが、ただその仕掛けの意味を理解したとき、タイトルから始まっていた伏線が全て”透きとおる”のです。

ミステリー作品としては非常にわかりやすく、伏線も読者にはっきりとわかるように張り巡らされているため、ミステリー初心者さんにもおすすめ。
涙をふくタオルが手放せない、感動の1作です。

13.『密室殺人ゲーム王手飛車取り』|歌野晶午

著者
歌野晶午
レーベル
講談社文庫
ページ数
544ページ

あらすじ

〈頭狂人〉〈044APD〉〈aXe〉〈ザンギャ君〉〈伴道全教授〉。
奇妙なニックネームを用いた5人が、ネット上で殺人事件の推理ゲームを出題し合う。
ただし、ここで語られる殺人は全て、出題者の手で既に現実世界において実行された殺人なのである…。

『葉桜の季節に君を想うということ』の著者が贈る、トリッキーな連続殺人小説

本作はベストセラーミステリー『葉桜の季節に君を想うということ』の著者・歌野晶午の手掛ける、シリアルキラー系連続殺人ミステリーです。
著者の代表作は各所で紹介されており、既にミステリーの定番となっていますので、今回はあえて本作『密室殺人ゲーム王手飛車取り』をご紹介させていただきます。

ネット上で推理ゲームを楽しむためだけに次々と殺人を犯していく素性の分からない5人。
軽薄で悪趣味な会話、煽り合い、趣味として殺人を犯す狂人など、人を選ぶ内容ですが、5人がそれぞれ出題する殺人事件の中には、細かな叙述トリックや伏線回収が多々織り込まれています。

著者のミステリー作家としての力量が感じられる作品ですので、ストーリー性は賛否わかれるとしても、是非1度手に取っていただきたい作品です。

14.『ママは何でも知っている』|ジェイムズ・ヤッフェ

著者
ジェイムズ・ヤッフェ
レーベル
ハヤカワ文庫
ページ数
304ページ

あらすじ

刑事のデイビッドは、毎週金曜日の夜に妻とともにブロンクスに住むママと夕食を共にする。
ディナーの席で一触即発寸前の妻とママの気を何とかしてそらすため、私が持ち出すのは現在警察を悩ませている事件の話題だ。
ママはいつも、デイビッドの話をきき、突拍子もない「簡単な質問」をするだけで、事件の真相をいとも簡単に言い当ててしまう…。

エラリー・クイーンが認めたミステリの鬼才|「安楽椅子探偵」の真髄をご覧あれ!

伏線回収といえば、やはり「安楽椅子探偵」!

本作『ママは何でも知っている』は、安楽椅子探偵ものの短編ミステリであり、ジェイムズ・ヤッフェの代表作です。
ジェイムズ・ヤッフェがミステリ界に姿を現したのは、彼がまだわずか15歳のとき。
エラリー・クイーンに𠮟咤激励とともに評価され、短編が『エラリー・クイーンズ・ミステリ・マガジン』に掲載されました。

安楽椅子探偵ものの起源はバロネス・オルツィの『隅の老人』シリーズだと言われていますが、本作は探偵役が実際に足を動かしている場面もあるため、厳密には「安楽椅子探偵」とは定義できず、現在一般的に用いられている狭義の「安楽椅子探偵」は、この『ママは何でも知っている』が形作ったとされています。

本作の探偵役である「ママ」は持ち前の人間理解を活かし、主人公であり、ワトソン役でもあるデイビッドの話を聞くだけで、いとも簡単に事件の真相を解明。
ママが推理に用いる情報は全て作中で示されているので、読者も同程度の情報を持っており、まさにそれ自体が「読者への挑戦状」となっているのです。

1作1作は非常に短いため読みやすく、これからミステリ界に足を踏み入れたいという方にもおすすめです。

15.『アクロイド殺し』|アガサ・クリスティー

著者
アガサ・クリスティー
レーベル
ハヤカワ文庫クリスティー文庫
ページ数
445ページ

あらすじ

村の裕福な未亡人・フェラーズ夫人が亡くなった。
検死を担当した「わたし」は睡眠薬の過剰摂取と判断したが、噂好きの姉はあれこれと聞き出した結果、夫人の死は自殺だと主張する。
外出した「わたし」は、夫人との再婚が噂されていた村のもうひとりの富豪ロジャー・アクロイドから、相談したいことがあると夕食に誘われた。
彼曰く、夫人から「一年前に夫を毒殺した」と告白されており、更にそのことで誰かから恐喝を受けていたらしい。
しかし、そこに夫人から恐喝の犯人を告げる手紙が届き、ロジャーはひとりで読むために「私」を家に帰した。
その夜ロジャーは刺殺され、夫人の手紙も消えたのだ…。

「ミステリーの女王」の問題作!これはフェアか、アンフェアか?

本作は「ミステリーの女王」と名高いアガサ・クリスティーの「ポアロ」シリーズ3作目であり、ミステリ界に論争を巻き起こした問題作でもあります。

クリスティーといえば、綿密に計算された叙述トリックが人気ですが、本作はクリスティー自身でさえ「このアイディアは、一度きりしか使えない」と語るような非常に独創的なトリックが仕込まれており、後に数多くの類似作品でなぞられました。

この独創的なトリックがミステリ界で非常に問題となり、かの有名な「フェア・アンフェア論争」が巻き起こります。
現在でもクリスティーへの評価には賛否両論ありますが、その理由の大きな一端を担っているのが本作でしょう。
良くも悪くもミステリ史に大きな痕跡を残したチャレンジングな作品ですので、是非他のミステリ作品を読む前に手に取ってみてください。

16.『たかが殺人じゃないか』|辻真先

著者
辻真先
レーベル
創元推理文庫
ページ数
448ページ

あらすじ

昭和24年、学制改革によるたった1年だけの男女共学の高校生活をおくることになった名古屋市内の高校3年生・風早勝利は、ミステリ作家を目指し、推理小説研究会に所属していた。
中止となった修学旅行の代わりに、映画研究会と合同で温泉への一泊旅行を計画する推理小説研究会の面々だったが、顧問と男女生徒5人で向かった湯谷温泉で、勝利達は密室殺人に巻き込まれる。
更に夏休みの最後の夜、首切り殺人にも巻き込まれ…。

ラストで明かされる「仕掛け」。レジェンド辻真先が贈る”今読みたいバカミス”

「アニメ・特撮脚本家」、「推理作家」、「マンガ原作者」、「旅行評論家」、「エッセイスト」、「デジタルハリウッド大学名誉教授」と数々の肩書をもつ辻真先。
彼のミステリーの面白さは、まさにそんな”飽きさせない”彼の経歴にあります。

通常の小説は文章の連なりであることから途中ダレることもあり、ミステリ初心者はそこで挫折することもしばしばですが、彼の小説は見せ場や面白いポイントが読者を飽きさせないように配置されており、まさにアニメや特撮のように読者を楽しませてくれるのです。
本作『たかが殺人じゃないか』も、彼らしいバカミス系の青春ミステリですが、昭和時代を舞台にしているにもかかわらず、2020年の年末ミステリベスト3冠を達成しました。

「冒頭ですでに犯人は指摘されていた。」「タイトルの意味がラストで分かる。」
伏線回収の醍醐味が詰まった、ミステリ初心者にもおすすめの1作です!

17.『ニッポン硬貨の謎 エラリー・クイーンの最後の事件』|北村薫

著者
北村薫
レーベル
創元推理文庫
ページ数
336ページ

あらすじ

来日中の名探偵エラリー・クイーンが、幼児連続殺人事件に挑む!
〈五十円玉二十枚の謎〉との関連は?

ミステリマニアである著者が、敬愛する本格ミステリの巨匠に捧げるパスティーシュ

自身も筋金入りのミステリマニアで知られるミステリ作家・北村薫。
彼が、来日したエラリー・クイーンの名探偵「エラリー・クイーン」が東京で起こる連続幼児殺人事件に挑む物語を「翻訳した」という体で発表したのが、本作『ニッポン硬貨の謎 エラリー・クイーンの最後の事件』です。

後期クイーンの作風を非常によく掴んでおり、クイーンファンであれば一度は読んでおきたい作品です。
ただし、「非常に技巧的な作品」と評価されており、クイーンの『シャム双子の謎』に関する専門的な評論がヒロインと名探偵の口を借りて繰り広げられているため、かなりのマニア向けの作品となっているのは否めません。

上級者向けですが、「我こそはミステリマニアである」と自負のある方は是非1度本作に挑戦してみてください。

張り巡らされた伏線を読み解こう!

伏線を読み解ければ、読書はもっと楽しくなる!
それほど小説中の伏線が「分かる」か否かは非常に重要なのです。
伏線は言い換えれば著者から読者に向けたサービスであり、これを余さず味わうことができれば、それまでより数段楽しい読書体験ができるはず。
是非注意深く本文を読み解いてみてくださいね。

この記事を書いた人

Yu

千葉県出身の「Yu」です。 5歳のときにはやみねかおるさんに出会って以降、毎年300冊以上の本を読み続けてきました。 好きなジャンルはミステリー・SF・古典など。幅広く読んでおります。 アニメやゲームも好きで、情報は逐一チェックしております。 経験を活かし、皆様のお役に立てるような記事をお届けします!

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