今回は、現役文学部生の筆者が選ぶおすすめの純文学作品を20選ご紹介します。
あまり純文学に触れたことのない方や中学生・高校生だからこそ、読めばきっと文学の魅力に取りつかれてしまうような面白い作品だけ集めました!
純文学の定義から解説しているので、ぜひご一読ください!
目次[ 表示 ]
- 純文学とは?わかりやすく解説!つまらないと言われる所以もご紹介!
- 純文学には起承転結がないから「つまらない」…!?
- 日本文学の名作10選!人生が変わるほど面白い純文学
- 草迷宮|泉鏡花(1908年)
- こころ|夏目漱石(1914年)
- 痴人の愛|谷崎潤一郎(1925年)
- 銀河鉄道の夜|宮沢賢治(1934年)
- 女生徒|太宰治(1939年)
- 白痴|坂口安吾(1946年)
- 片腕|川端康成(1965年)
- 死者の奢り|大江健三郎(1958年)
- 沈黙|遠藤周作(1966年)
- 十九歳の地図|中上健次(1973年)
- 現代の純文学10選!共感の嵐?時代の先端を行くおすすめ小説
- 風の歌を聴け|村上春樹(1979年)
- ベッドタイムアイズ|山田詠美(1985年)
- インストール|綿矢りさ(2001年)
- 人のセックスを笑うな|山崎ナオコーラ(2004年)
- 生きてるだけで、愛|本谷有希子(2006年)
- 苦役列車|西村賢太(2010年)
- 舟を編む|三浦しをん(2011年)
- 火花|又吉直樹(2015年)
- 純潔|嶽本野ばら(2019年)
- N/A|年森瑛(2022年)
- 純文学の面白さに触れよう!
純文学とは?わかりやすく解説!つまらないと言われる所以もご紹介!
純文学には起承転結がないから「つまらない」…!?
純文学の対義語には、大衆小説があります。
大衆小説とは、例えば、ミステリー小説やSF小説、冒険譚、少年少女向けの恋愛物などの起承転結があるという物語です。
物語に起伏があって、伏線は必ず回収され、劇的な結末を迎えるというのが大衆小説の特徴です!
ということはつまり、純文学とはここから逆に考えると、起承転結がなく、物語性を楽しめない作品群ということになります。
これが「純文学はつまらない」と言われる所以になっているわけです。
純文学は芸術性が高い!
しかし、純文学とは本当につまらないものなのでしょうか?
純文学を、一般的にひとことで表すなら、娯楽性よりも芸術性が活きている作品のことを指します。
ただの文字列に色や音がついて見えたり、知っているのに理解できていなかった感情を表現してくれていたりと、読むと感性が豊かになっていく(気がする)んです!
ということなのですが、筆者はそれこそが純文学の本質ではないと思います。
そんな風に芸術が、とか、感性が、とかの次元ではないところの、自分に何か引っかかる面白さや違和感のあるという作品こそが純文学だと思うのです。
五大文芸誌に掲載されているかどうかで見極める!
ここまで純文学について述べてきましたが、結構定義が曖昧ですよね(笑)
そこで、本質的ではないものの、簡単に純文学かどうか判断するための方法だけ記しておきます。
それは、純文学系文芸誌に載っているか否かです。もしくは、芥川賞候補作品であれば、それは確実に純文学作品です。
五大文芸誌である、文芸春秋社の『文學界』、講談社の『群像』、新潮社の『新潮』、集英社の『すばる』、河出書房新社の『文芸』は純文学系文芸誌です。
この五つの文芸誌には純文学しか掲載されないので、ここに掲載されていれば純文学であると定義することができます!
日本文学の名作10選!人生が変わるほど面白い純文学
ここからは、日本を代表する文豪の中からおすすめの名作を10選ご紹介します。
人生観やセンスが捻じ曲げられるものも多く、文学の面白さに触れられること間違いなしです!
青空文庫で読める作品も多いので、気になった作品はぜひ無料でチェックしてみてください!
草迷宮|泉鏡花(1908年)
出典:岩波文庫公式サイト
かつて5人の死者を出し、無人へとなり果てた秋谷邸に、葉越明という青年がたどり着いた。彼は、亡き母の歌ってくれた懐かしい手毬唄を探していた。
奇怪な事象、気味悪いモノが好きな方はハマること間違いなしの傑作です!
たくさんの怪奇が現れるのですが、そのどれもに、いやに人間らしい気持ち悪さが表れていて、その不気味な気持ち悪さに読む手が止まることはありません!
その気持ち悪さの面で言うと、1978年に寺山修司が監督した劇場版が見事に表れています。
鮮やかすぎる色彩や不気味な微笑み・声など、本来気持ち悪くないはずのものを気持ち悪く見せるのが本当にうまいです!
また、奇妙さや気持ち悪さを楽しむというだけでなく、モチーフにジェンダーが表象されているという文学的な表現も多く出ます。
母胎回帰的なオタク思想をお持ちの方には、現代でも通じる鋭さがあるので、是非読んでいただきたいです!
こころ|夏目漱石(1914年)
出典:講談社BOOK倶楽部
由比ヶ浜で夏休みを過ごすことにした「私」は、「先生」とその夫人に出会い、家に入り浸るほど親密になる。
抜粋部分を教科書で読んだことがある方も多いかと思います。
教科書に載っているだけあって、近代の流れも人間の普遍性もどちらも盛り込んだとても面白い作品ですよね。
最初から最後まで流れているどこか不穏な雰囲気にハマる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
その不穏さの中に、人間の卑しさや生々しさが美しく儚げなものとして内包されているのが妙だと思います!
心がざわつく文章が読みたい方に一押しの作品です!
痴人の愛|谷崎潤一郎(1925年)
出典:新潮社公式サイト
大正時代、平凡で真面目なサラリーマンの河合譲治は、カフェーの女給であるナオミのパトロンになった。しかし、ナオミのその妖艶さに譲治は心をかき乱されるようになっていく。
性癖を狂わせてくる作品です!というより、隠れていた性癖に気づかされる作品であるかもしれません。
ファムファタル的な女性と、その女性を中心とした世界でくるっていく男が細かく描かれていて、その汚さや痛々しさ、気持ち悪さは最早快感にまで達します。
物語の流れとしてだけでなく、言葉の運びや文章のセンスそのものに惹かれる作品です!
二人の関係性や、譲治の心情など、共感できるところも多々あるおすすめの名作です。
こちらでは【2023最新】恋愛の純文学おすすめ作品5選を紹介しています。
初心者・中学生・高校生の方におすすめです!
【2023最新】恋愛の純文学おすすめ作品5選!初心者・中学生・高校生にこそ読んでほしい!
銀河鉄道の夜|宮沢賢治(1934年)
出典:新潮社公式サイト
孤独な少年・ジョバンニと、心優しい少年・カムパネルラは、銀河鉄道に乗って夜空の旅に出る。
「ほんとうのさいわい」とは一体何なのかを探るための作品で、児童文学なので、一度読んだことがある方も多いかと思います。
しかし、大人になってからもう一度読むと、幼少期では気づけなかったことに驚かされることが多々あると思います!
自分一人の幸せではなく、皆の幸せを願うことはもちろん重要ですよね。
ただ、そのために自己犠牲をする必要の絶対性を解くことはできるのでしょうか?
「ほんとうのさいわい」とは、誰を犠牲にして、もしくは誰も犠牲にせず、何を守り抜くことなのでしょうか?
大切なものや人ができ、自分自身の大切さにも気付いた大人になった今だからこそ、読み返してみてほしい作品です。
女生徒|太宰治(1939年)
出典:角川文庫公式サイト
とある少女の朝起きて夜眠るまでの平凡な一日。
少女小説的な語り口で、ただの平凡なはずの一日が、多感な年ごろの少女の言葉で彩られています。
読めば、和やかで不可解だった思春期の日々を思い出せること間違いなしです!
そして、とにかく文章が美しい!
言葉に色がついているような柔らかい文章で、物語を楽しむというより文章を目に映すことの快感がすごいです。
今でもファンの多い文章で、一文が印刷されている洋服なども見かけます。
美しい文学の世界に飛び込みたい方に一押しの作品です!
白痴|坂口安吾(1946年)
出典:新潮社公式サイト
戦時中のある晩、見習い演出家の伊沢は、白痴の女を家に泊めることになった。二人は空襲の戦火の中、伊沢は女を連れて逃げることになる。
戦後文学の代表としても名高いこの作品には、戦後の退廃的な空気感がたっぷり感じられます。
その退廃的な時代の中で、男が縋らざるを得なかったのが、「白痴」の女になります。
今では差別用語としてタブー視されている言葉であるものの、人間同士の関わり合いについて考えるための糸口となるような存在ですよね。
主人公の女に対する扱いには、愛情と羞恥が入り混じった卑しさが見られるのですが、現代の人間同士の付き合いにも通底しています!
その卑しさと、その卑しさにしか希望のない不安定な世の中が、美しい文章で紡がれているおすすめの作品です!
片腕|川端康成(1965年)
出典:筑摩書房公式サイト
ある中年男性の「私」は、美しい少女の肩から取り外した右腕を一晩借りることになった。
あらすじをご覧いただくとわかると思うのですが、既に気持ち悪いですよね!
ですが、小説を読み進めていくと、そこにはより一層の気持ち悪さがあって、それ故に安心感や快感が得られます!
とにかく片腕に対する愛情と罪悪感、恐怖を抱いている男の心情の変化や片腕に幻を重ねてみている態度など、実際にはありえない設定だからこそ、その感情や人間性にリアリティがあふれています。
ただ気持ち悪いというだけでも十分に楽しめる作品なのですが、そこには生と死や記憶など、深いテーマを読み取ることができるので、本を読んでじっくり考えたいという方にもおすすめです!
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『片腕』が収録されている刊行本でおすすめなのが、有名な『眠れる美女』です。
欠損や死体といったフェチズムやモチーフが好きな方はハマること間違いなしです!
死者の奢り|大江健三郎(1958年)
出典:新潮社公式サイト
死体処理室の水槽から死体を引き上げ、新しい水槽に移し替えるというバイトに応募した大学生の「僕」。同じバイトには、妊娠している女学生も参加していた。
死体を通じて、生きている自分自身を覗く作品です。
無機物の気持ち悪さや、無機なはずのものに生々しさを反映しようとする嫌らしさが忠実に描かれていて、どんどん作品世界に吸い込まれていきます!
生きている人間ではないけれど確かに人間であった何かを求める態度には、共感はしきれないものの納得できる方も多いのではないでしょうか?
妊娠している女生徒と死体と主人公の関係性も面白く、物語としても楽しんで読み進められます!
その場合、結末まで読んだ時の困惑があると思うのですが、その困惑すらも面白いと思える方も多いと思います。
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この『死者の奢り』が収録されている『死者の奢り・飼育』には、外部の無さ、死体など、岡崎京子の漫画作品に登場するモチーフが多く出ています。
この頃の大江作品は、若干読みにくい特徴的な文体なのですが、岡崎京子作品が好きな方は絶対に好きだと思うので、是非読み進めてみてください!
こちらでは【2023最新】海外の純文学おすすめ作品5選を紹介しています。
海外の純文学も楽しみましょう!
【2023最新】海外の純文学おすすめ作品5選!初心者・中学生・高校生にこそ読んでほしい!
沈黙|遠藤周作(1966年)
出典:新潮社公式サイト
舞台は島原の乱鎮圧後のキリシタン禁制時代の日本。ポルトガル人宣教師のロドリゴは、キリスト教を信仰していることによって苦しむ日本人の姿を目の当たりにする。
神の沈黙について、鋭く切り取った作品です。
残酷で胸が痛くなる描写があまりに多く、読んでいて涙が止まりません!
その残酷な沈黙の中に、光を探すことは果たしてできるのでしょうか?
もしくは、光を探すことは許されるのでしょうか?
何が正しくて、何が真実なのか解らない、信仰という態度そのものの問題が切実に描かれています。
信仰をお持ちでない方であっても、一度読んでみて損はありません。
生きるために必要な救いは存在し得るのか、ぜひ考えてみてください!
十九歳の地図|中上健次(1973年)
出典:河出書房新社公式サイト
新聞配達の住み込みバイトをしている19歳の予備校生の「僕」は、予備校にも碌に通わず、気に食わない配達先の家に嫌がらせばかり企んでいる。
思春期特有の荒々しい暴力性を持ったことのある方は多いと思います。
特に、今現在中学生〜大学生の方には思い当たる節が沢山あるのではないでしょうか?
絶対に何者かになれるという祈りにも近い全能感と、この閉塞的な社会の中でなれる者なんて所詮、という絶望が入り混じる19歳の青い葛藤に共感する、もしくはグサグサと刺されること間違いなしです。
生き抜く方法を見つけられずに焦燥している方、怒っている方全員におすすめの作品です。
実写映画作品は配信サービスで視聴することもできるので、気になる方はぜひチェックしてみてください!
現代の純文学10選!共感の嵐?時代の先端を行くおすすめ小説
ここからは、現代のおすすめ純文学作品をご紹介します。
当時の時代性の最先端を行ったような作品ばかりで、今現在にまで通じる普遍性もあります!
特に直近の年代の作品は、若者であれば共感することも多いと思うので、ぜひチェックしてみてください!
風の歌を聴け|村上春樹(1979年)
出典:講談社BOOK倶楽部
大学生の「僕」は、夏の間、港町に帰省した。友人の「鼠」と飲みに行くと、酔いつぶれた女性を発見した。
村上春樹のデビュー作です!
ほろ苦い青春を軽快に書き上げた読みやすい作品で、今でも人気の作品になっています。
自分というものは何によって定義できるのでしょうか。
多様性や個性を第一に大事にされる現代だからこそ読み返したい作品です。
以下の記事では村上春樹のおすすめ作品をご紹介しています。
気になった方はぜひチェックしてみてください!
【入門】村上春樹のおすすめ小説9冊!初心者でも読みやすい作品は?
ベッドタイムアイズ|山田詠美(1985年)
出典:河出書房新社公式サイト
クラブ歌手のキムと黒人脱走米兵のスプーンは、出会ってすぐに熱い恋に落ちた。
女性の性の在り方を生々しく、リアルに描いた作品です!
官能小説的な内容のはずなのに、そこに、単なる高揚や陶酔ではない“確かな生”が表れています。
また、言葉の美しさも本作の特徴です。
美しく、吸い寄せられるように魅力的な文章の作品を探している方におすすめです!
中学生・高校生の方にとっては、一見気の引ける内容に思われるかもしれません。
しかし、若いからこそ、自分の性と生の関係性を屈折なく見つめるということを、是非文学の力を頼って経験してみてください!
インストール|綿矢りさ(2001年)
出典:河出書房新社公式サイト
学生である自分から「ドロップアウト」をした女子高生・朝子は、ゴミ捨て場で出会ったかずよしと、おんぼろコンピュータでチャットレディに成りすまして一儲けを企む。
今ここにある自分じゃない自分になりたい、この私は本物じゃない、と誰しも考えたことがあるのではないでしょうか?
「私はどうやって本当の私になるんだろう」と悩む若者、「私はどうして私なんだろう」と悩む大人、皆に読んでほしい一押しの作品です!
話の設定の時点ですでに面白いのですが、テンポも良いので、あまり純文学作品を読まない方でもサクサク読み進められると思います。
2人の微妙な空気が織り成すシュールな笑いにハマってしまうことでしょう!
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真剣に悩んでいるのにどう頑張っても面白い。
この面白さにハマってしまった方には、綿矢りさの「憤死」「かわいそうだね?」「蹴りたい背中」もおすすめです。筆者は綿矢りさ作品にいつも共感性羞恥を感じながらも、読む手をとめられたことは一度もありません。
人のセックスを笑うな|山崎ナオコーラ(2004年)
出典:河出書房新社公式サイト
19歳の「オレ」は、39歳のユリに出会う。二人は身体でつながっているだけの名前のない関係だった。
パンチのあるタイトルで、同名で映画化もされているので聞いたことがある方も多いかと思います。
しかし、そのタイトルのパンチに負けない内容になっていて、最終的にはそのタイトルに納得させられます。
暖かい愛や生々しい愛のどちらとも取れない、というよりどちらでもあるような愛の形が描かれています。
性と愛の間に何があるのか悩んでいる方や、年の差の恋愛をしている方におすすめの作品です!
劇場版は松山ケンイチさん、永作博美さんという実力派俳優が主演していて、空間の面白さがより引き出された作品になっています。
人間模様だけでなく、空間や色合いも楽しみたい方におすすめです!
こちらでは【2023最新】おすすめの純文学小説5選を紹介しています。
短い・読みやすい・新訳などをまとめています。
【2023最新】おすすめの純文学小説5選!短い・読みやすい・新訳などご紹介
生きてるだけで、愛|本谷有希子(2006年)
出典:新潮社公式サイト
うつ症状に加えて過眠症状のある躁うつ病患者の寧子は、恋人の津奈木の家に引きこもっている。なんとか寧子はバイトを始めてみるが上手くいかない。
他の人みたいにうまく受け流してうまく笑ってうまく生きられない、自分の感情をコントロールできず、自分自身に怒り、疲れ切ってしまう。そんな方にとっては共感の嵐のような作品です!
また、現在長く付き合っている恋人や家族がいる方にも共感できることが多いと思います。
所詮他人同士は、心の底から分かり合えることなんてないですよね。
それでも大切な人がいることについて、改めて考え直させてくれる作品です!
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「つまらない世界も、世界をつまらなくする自分自身も、つまらない自分を許してくる奴も、何もかも嫌い!」と怒り散らしているそこのあなた!絶対にハマると思います。
実写映画版の同作も、趣里さんと菅田将暉さんの演技、脚本が絶妙にマッチしていて最高に面白いのでおすすめです!
苦役列車|西村賢太(2010年)
出典:新潮社公式サイト
日雇い労働者の北町貫多(19歳)の明日は如何に…!?
芥川賞受賞の傑作です!
西村賢太の私小説シリーズの主人公・北町貫多の生き様がここに焼き付いています!
このシリーズでは、とにかく主人公が汚くて浅はかで救いようがありません。
どんなに優しい人情に触れても、人間性が変わることがないという事が一貫して描かれています。
どこまでも救いようがないのに、誰しもが持ち合わせている生々しい人間臭さが反映されていて、読む手をとめることはできません!
だからこそ、主人公のことを憎むことはできず、面白く笑いながら読むことができます!
森山未來・高良健吾・前田敦子など、豪華キャストによる劇場版も公開されているので、そちらから見るのもおすすめです!
舟を編む|三浦しをん(2011年)
出典:光文社公式サイト
辞書編集部に異動となった馬締光也は、言葉の魅力に取りつかれた編集部員たちと共に新しい辞書を作り始める。
当たり前の存在である「言葉」を、捉えなおすきっかけになる作品です!
何気なく使っている言葉を、意識して解釈することの難しさや面白さにあふれていて、読めば言葉というものの魅力に取りつかれること間違いなし!
言葉の魅力をとらえなおすという意味で、文学に興味を持ち始めた方に一押しの作品です。
また、ちょっと不器用な生き方をしている人、温かい人間関係を眺めるのが好きな方も是非読んでみてください!
松田龍平さん・宮崎あおいさん他豪華キャストが演じる劇場版もおすすめです。
作品の魅力がギュッと濃縮されていて、二時間でとても満足できる内容になっています。
火花|又吉直樹(2015年)
出典:文芸春秋BOOKS
売れない芸人・徳永は、尊敬できるお笑い哲学を持つ先輩・神谷に出会う。二人はお笑いについて熱く語り共に進む道を見据えていた。
お笑い芸人のピース・又吉さん初の中編作品であり、芥川賞受賞作でもあります。
実際に芸人をやっている又吉さんが書くからこそのお笑い理論や芸人としての生き方の深みには、感動すること間違いなしです!
また、その芸人としての生は、読者みんなに通底しているものがあり、共感や考えさせられる場面が多々あります。
映像化されている作品なだけあって、感動するポイントが多く、読んでいて全く飽きが来ません!
純潔|嶽本野ばら(2019年)
出典:新潮社公式サイト
上京大学生の「僕」は、平坦で閉鎖的なはずの社会に政治闘争を訴え、キャンパスで腫れ物扱いされている「君」に出会う。
『下妻物語』、『ロリヰタ』など、ロリータファッションと文芸を色彩鮮やかに結び付けた作品で有名な嶽本野ばらの長編作品です!
ただ長編とは言え、ヲタク文化がてんこ盛りで、アニメ好き・ゲーム好きの方であれば、そのヲタク系のネタについ共感すること間違いありません!
社会に向き合おうとする少女と、その最果て的位置であるヲタク文化に没頭するサークルとの、どちらにも向き合おうとする主人公の葛藤は読み応え抜群です。
ちょっと気持ち悪い感じも癖になるおすすめ作品です!
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この作品は長編になっているので、もし初めから長編を読むのには気が引けるという方には、『エミリー』や『ミシン』をおすすめします。
純愛というものの、痛々しさや気持ち悪さを余すことなく描いていて、それなのに美しさをも感じてしまう絶妙なバランスの作品です!
N/A|年森瑛(2022年)
生理の血を観るのが嫌い、だから食べない。そんな主人公のまどかは、女子大生のうみちゃんと秘かに交際しています。
「この人は拒食症だ」、「この人はLGBTQの部類に入る」。
何かの枠組みの中でしか自分は規定できないのでしょうか?
その枠組みの中にいる人たちは、必ず、全く同じ意味合いでその枠組みの中にいるといえるのでしょうか?
ただただ自分が思うこと、感じることが、社会の既にある価値観に合わない生き辛さを、痛いほどに伝えようとしてくる苦しい作品です!
この現実に希望を持てるか悩んでいる、同じように悩んで寄り添ってくれる作品になってくれることでしょう!
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恋人とかパートナーとか、そうじゃなくて、求めているのは「かけがえのない他人」なのだと主人公が言った瞬間、作者にひれ伏すほかありませんでした!
ずっと感じていた違和感をこんなにスッキリ言い表してくれる気持ちよさと来たらありません!
現在、高校生・大学生あたりの若者には、かなりドンピシャで違和感を言い当てられる部分が多いんじゃないかなと思います。
純文学の面白さに触れよう!
今回は、文学部に通っている筆者が選んだおすすめの純文学作品をご紹介しました。
気になる作品があればぜひチェックしてみてくださいね!
きっと、新しい世界、新しい自分に出会えること間違いなしです!