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お布施とは
お布施とは、葬儀や法要の謝礼、ご本尊へのお供えや寄付などの意味合いで、檀家や依頼者が自発的に寺社に渡す金品のことです。
元々は、仏教の修行方法のひとつとされており、骨董品や米をお布施とする場合もありました。
現代では、葬儀の際の読経や戒名をいただいた謝礼として現金を包みます。僧侶のお勤めの対価ではなく、感謝の気持ちとして渡すものです。そのほかにも、初七日や四十九日、新盆、一周忌法要など、お布施が必要な機会は多くあります。
お布施の種類4つ
お布施を入れる袋は、様々なものが市販されています。はじめてお布施を納める場合は、どれを選べば良いか分からないという人も多いのではないでしょうか。
特に先祖のお墓のある菩提寺の場合、今後の付き合いもあるため失礼のないようにしなければなりません。
宗教や宗派、地域によって作法が異なるため、事前によく確認しておくことが重要です。
ここでは、お布施の種類を4つご紹介します。
1:白黒の水引
1つ目は、白黒2色の水引がついた袋です。
水引には蝶結びまたはあわじ結びが使われます。あわじ結びは結び切りの一種であり、一度結ぶとほどくのが難しいことから、一度きりが望ましい結婚や不祝儀など、慶事にも弔事にも利用されています。
白黒の水引は本来、故人を供養する意味合いから不祝儀に使われるものです。お布施の場合は一般的に水引は必要ないとされていますが、水引を使うのがマナーとされる地域もあります。
必要に応じて、白黒の水引のついた、表書きを自分で記入するタイプの不祝儀袋を利用すると良いでしょう。
2:銀色の水引
2つ目は銀一色の水引です。
2束とも銀色である水引を指し、双銀や総銀などと表記される場合があります。一般的には通夜や葬儀、法要の香典や弔慰金用であり、地域によってはお布施を包む際にも使われています。そのほか、神道の玉串料、榊料にも用いられます。
金額が大きい場合に使われることが多く、一般的な不祝儀袋のサイズのほか、数百万円単位を包める特大サイズも売られています。
3:黄白の水引
向かって右が黄色、左が白の水引を使った袋です。
主に関西地方で使われている水引です。かつて皇室への献上用に使われていた紅白の水引を染めた直後の色合いが弔事用の白黒水引と似ていたため、区別を付けるために黄白を用いるようになったといわれています。
一周忌前までは白黒、一周忌明けの仏事には黄白の水引といったように、時期で区切られており、お布施を包む際にも用いられます。また、神道の場合にも玉串料、榊料として使われます。
4:水引なし
各地域で風習がある場合を除き、水引をつけずにお布施を包むのが一般的と言われています。
お布施を包む際は、奉書紙を使うのが丁寧で正式な作法といわれています。奉書紙の包み方については後述します。
無地の白封筒や「お布施(御布施)」と書かれた袋でも可能です。金額が大きいときは、お布施を包む袋も立派なものを選ぶと良いでしょう。
お布施の書き方4選
お布施は、奉書紙や袋の書き方に関するマナーも重要です。
全て「濃い墨」を使って書きます。葬儀や法要におけるお布施の場合、香典袋と同じように薄墨で書くイメージを持つ人もいるのではないでしょうか。お布施は寺社に不幸があった訳ではなく、感謝の気持ちを表して納めるものです。そのため、通常の黒の墨を使います。
筆または筆ペンで書くようにしましょう。
ここでは、各面の書き方についてご紹介します。
1:表の書き方
まず、お布施の表部分の書き方から見ていきましょう。
表には、「表書き」と「氏名」を書きます。表書きとは、祝儀袋や不祝儀袋、熨斗などの上段に書く文字を指します。表書きの例として「御祝」、「寿」、「御出産祝」、「内祝」、「寸志」などが挙げられます。
お布施の場合の表書きは「お布施」または「御布施」です。上半分の中央に黒墨で書きます。
氏名は、フルネーム、名字、「○○家」などを下半分の中央に書きます。
2:裏の書き方
次は、裏面の書き方についてご紹介します。
中袋がある場合は、裏書きは不要です。中袋がない場合、「住所」、「電話番号」、「氏名」、「金額」を書きます。名前は表面にも書くため、省略することもあります。
中央に近い位置から左側へ、縦書きで書き始めます。
3:中袋の書き方
中袋つきのお布施袋を使う場合の書き方をご紹介します。
中袋がある場合は、前述した裏書はせずに中袋に「住所」、「電話番号」、「氏名」、「金額」を書きます。この内、金額は表面に記入します。金額の書き方については次の項目で説明します。
住所、電話番号、氏名は中袋の裏面に黒墨で書きます。
4:金額の書き方
金額を書く際は、大字(だいじ)と呼ばれる旧字体の漢数字を使います。
大字は、主に改竄防止の目的から「一・二・三」などの画数が少ない漢数字の代わりに用いるものです。
0(ゼロ)は漢数字・大字ともに「零」を使います。そのほかの大字は、壱(一)、弐(二)、参(三)、肆(四)、伍(五)、陸(六)、漆(七)、捌(八)、玖(九)、拾(十)、陌・佰(百)、阡・仟(千)、萬(万)です。
お布施では、裏面または中袋の表面に書きます。10万円包む場合は、「金拾萬円」、「金拾萬圓」と書きます。不正防止の一環、古くからのしきたりとして最後に「也」をつける場合もあります。
お布施の包み方
お布施には、祝儀や不祝儀と同様に包み方にもマナーがあります。
お布施に使う紙や袋によって包み方が異なります。失礼のないように感謝の気持ちを伝えるため、しっかりとマナーを覚えましょう。
白封筒を使った場合
お布施を包む場合、お布施用として販売されている封筒のほか、一般的な白封筒も利用可能です。
白封筒は、郵便番号枠のないものを選びましょう。また、二重構造の封筒は、お布施の場合には不幸なことが重なると連想されやすいため、避けるようにしましょう。
お札の向きは、肖像画の書かれている側を表にして、肖像画が上にくるようにして入れます。お札は新札・旧札のどちらでも問題ありません。
奉書紙を使った場合
お布施は、奉書紙を使うのが正式かつ丁寧な方法とされています。
奉書紙は和紙の一種であり、室町時代より公文書に用いられ、浮世絵や弔辞にも使われてきました。先にお札を半紙で包み(中包み)、その上から奉書紙で包みます(上包み)。半紙の包み方は次の項目でご説明します。
慶事の際に用いる上側の折返しに下側をかぶせる方法で包みます。奉書紙はツルツルした面が表、ザラザラした面が裏(内側)になります。ザラザラした面を上にして中包みを置き、左・右・下・上の順に折ります。
半紙を使った場合
半紙は、奉書紙を使う際の中包み用です。
半紙を斜めに置き、お札の肖像画が上を向くようにして半紙の上下を折ります。次に、半紙の左側を2回に分けて折り、お札が隠れるようにします。その後、半紙の右側を折って裏面に巻き付けるようにすれば完成です。
表面の中央に金額、裏面の左寄りに住所や氏名を記入します。
お布施の金額相場
お布施の相場は内容や地域によって異なります。
日本消費者協会の第11回「葬儀についてのアンケート調査」によると、通夜・告別式・火葬時の炉前での読経を含む場合のお布施(読経料・戒名料・お車代・御膳料)は、2017年では全国平均47.3万円とされています。
四十九日や新盆、一周忌法要の相場は3~5万円程度、三回忌以降は1~3万円程度です。
お布施の渡し方
お布施を僧侶に手渡しするのは避けましょう。
袱紗または「切手盆」という黒塗りのお盆に乗せた状態で渡します。袱紗は、紺や深緑灰青・紫などの暗めの色を選びましょう。この際、お布施の文字が僧侶に向くように置きます。
渡すタイミングは、葬儀が始まる前、または葬儀後に挨拶するときです。
お布施はマナーを守って渡そう
お布施は、本来は仏教の信仰心を表したものであり、現代では感謝の気持ちを込めて納めるものとされています。
金額には明確な決まりはありませんが、包み方や書き方、渡し方において数々のマナーが存在します。
お布施を渡す際は、マナーを良く理解するようにしましょう。