いまや他人事ではない新型コロナウイルス。仕事中、新型コロナウイルスに感染した場合、労災保険はおりるのでしょうか。
目次[ 表示 ]
1.そもそも労災とは
「労働災害」通称「労災」とは、業務上や通勤上で労働者が怪我、病気、死亡することをいいます。仕事中に起こるものを業務災害、通勤中に起こるものを通勤災害といいます。業務上の心理的負荷によって起こる精神障害も含まれます。
その診察・治療など、労災によって発生する諸々の費用を賄ってくれるのが、労災保険です。
正社員、派遣社員、パート、アルバイトなどの雇用形態に関わらず、労働者であれば誰でも労災保険の給付対象です。
詳しくはこちらの記事で簡単に解説しているので、よろしければ合わせてご覧ください。
2.コロナが労災として認められるケースは?
通常の労災保険同様、アルバイトなどの非正規雇用であっても、業務に起因したコロナ感染は労災として認められます。では、コロナが労災認定されるための条件とは、いったいどういった内容なのでしょうか。
労災認定の対象とは
コロナが労災認定される基準は主に3つあります。
1.感染経路が業務によることが明らかな場合
2.感染経路が不明の場合でも、感染リスクが高い業務※に従事し、それにより感染した蓋然性が強い場合
※(例1)複数の感染者が確認された労働環境下での業務
※(例2)顧客等との近接や接触の機会が多い労働環境下の業務
3.医師・看護師や介護の業務に従事される方々については、業務外で感染したことが明らかな場合を除き、原則として対象
引用:厚生労働省
わかりやすいようにもっと噛み砕いて説明すると、
1.職場でクラスターが発生するなど、感染経路が明確な場合。
2.日々数十人と接触するなど、感染する可能性が高い労働環境の場合。
3.医療従事者は(明らかに業務外で感染したとわからない限り)原則として対象。
ということです。
上記3項目の条件に当てはまらない場合は、原則、労災として認められないようです。
具体的な事例
実際に厚生労働省が公表している、労災認定の具体的な事例をいくつか引用してピックアップしました。先程挙げた3つの条件と照らし合わせながらご紹介していきます。
1.感染経路が明確なケース
- 飲食サービス業・飲食店員
- Aさんは、飲食店内での接客業務に従事していたが、 店内でクラスターが発生し、これにより感染したと認められたことから、支給決定された。
店内で集団感染が発生した場合は、感染経路がはっきりしているため、労災として認められるようです。
2.感染する可能性が高い労働環境のケース
- 小売業・販売店員
- 感染経路は特定されなかったが、Aさんは、発症前 14 日間に、日々数十人と接客し商品説明等を行う等感染リ スクが相対的に高いと考えられる労働環境下での業務 に従事しており、私生活での行動等から一般生活では感染するリスクが非常に低い状況であったことが認められたことから、支給決定された。
- 建設資材製造技術者
- 感染経路は特定されなかったが、Aさんは、発症前 14 日間に、会社の事務室において品質管理業務に従事していた際、当該事務室でAさんの他にも、新型コロナウイルスに感染した者が勤務していたことが確認された。このため、Aさんは、感染リスクが相対的に高いと考えられる労働環境下での業務に従事しており、私生活での行動等から一般生活では感染するリスクが非常に低い状況であったことが認められたことから、支給決定された。
- 郵便業・バス運転者
- 感染経路は特定されなかったが、Cさんは、発症前 14 日間に、日々数十人の乗客(県外からの乗客を含む)を 輸送・接客する等感染リスクが相対的に高いと考えられる労働環境下での業務に従事しており、私生活での行動等から一般生活では感染するリスクが非常に低い状況であったことが認められたことから、支給決定された。
医療従事者以外の労働者で、感染経路が不明瞭なケースは、「私生活の行動」が重視されているようですね。不要不急の外出、大人数での食事や飲み会などは避けておくのが賢明でしょう。
3.医療従事者のケース
- 医師
- 感染経路は特定されなかったが、Aさんは、日々多数の感染が疑われる患者に対する診療業務に従事していたことが認められたことから、支給決定された。
- 介護職員
- 感染経路は特定されなかったが、Cさんは、介護施設で日々複数の感染が疑われる介護利用者に対する介護業務に従事していたことが認められたことから、支給決定された。
医師、介護職員がコロナに感染し、労災認定されたケース。感染経路がわからなくても、医療や介護の従事者であれば、労災として認められるようです。
3.労災保険の種類と給付内容
労災保険にも種類があります。実際に通勤・業務中にコロナに感染した労働者やそのご遺族が受け取れる労災保険は、以下の3種類です。
療養補償給付
治療にかかる費用を全額受け取ることができるのが療養補償給付です。
・労災病院や労災指定医療機関なら、治療費を現物給付するという形で、無料で治療を受けることができます。
・上記の病院・医療機関以外で治療を受けた場合、一度治療費を自己負担する必要があります。後ほど労災保険請求をすることで、負担した費用の全額が支給されます。
※厚生労働省がコロナを指定感染症と認めたことにより、治療にかかるすべての費用は公的医療保険で賄われます。労災保険とは関係なく、無料で治療を受けられます。
休業補償給付
コロナに罹患し、治療・療養のために仕事を休まなければならない場合に受け取れるのが、休業補償給付です。
給付日:休業4日目から
給付額:休業1日あたり、給付基礎日額の8割(特別支給金2割含む)
*原則として「給付基礎日額」は発症日直前3か月分の賃金を暦日数で割ったものです
例えば、月の給与が平均25万だとすると、÷30日で、給付基礎金額は1日およそ8300円です。そのうちの8割ですから、1日6640円が給付されるようです。
遺族補償給付
業務に起因してコロナに感染し、亡くなった労働者のご遺族の方は、遺族補償年金、遺族補償一時金などを受け取ることができます。
4.まとめ
日々増加している新型コロナウイルスの新規感染者数。手洗い・うがいやこまめな消毒はもちろんのこと、日用品の買い出しや通勤・通学以外での外出はなるべく避けるようにしましょう。人と話したり外に出る時はマスクを着用する、といった感染対策を徹底してくださいね。
いざというとき、コロナは労災で補償されていることを覚えておくとよいでしょう。