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【2023最新】中学生・高校生・大学生に読んでほしい考えさせられる小説TOP30!考え方が変わる小説など

中学生高校生小説ランキング大学生

2023/08/25

皆さん、小説は好きですか?

お気に入りの小説との出会いは、その後の人生や考え方を大きく左右することもあります。

今回は、中学生・高校生・大学生にこそ読んでほしい、人生の見方を変えるかもしれない小説をご紹介します。

目次[ 表示 ]

物語に隠されたテーマを読み取ろう

多くの小説には、物語を通して設定された大きな「テーマ」が存在します。

また、作家は物語を通して、読者にそのテーマについて考えるきっかけを作ったり、作家自身の主張を訴えたりしている場合があります。

読み手側は純粋に物語を楽しむこともできますが、せっかく時間やお金を費やして小説を読むのであれば、物語に隠されたテーマについて自分でも考えてみるのもいいのではないでしょうか。

もしかしたら、その後の人生を大きく左右する問題に出会えるかもしれません。

中学生・高校生・大学生に読んでほしい考えさせられる小説TOP30!

1.『星の王子さま』/サン=テグジュペリ

※引用元:Amazon

あらすじ

飛行機が故障し、砂漠に不時着した「僕」が出会ったのは、いくつもの星を巡って7番目の星・地球にたどり着いた、ちいさなちいさな星の王子さまだった。

「いちばんたいせつなことは、目に見えない」

世界中で愛されている宝石のような物語『星の王子さま』を、授業で読んだという方も多いのではないでしょうか。

「ゾウを飲み込んだウワバミ」の絵で始まるこの有名な物語は、読み手に「大切なこと程目には見えない」ということを教えてくれます。

綺麗なバラはどこにでも咲いているのに、故郷の星で口うるさくお世話を要求してきたバラだけが王子さまにとって大切なのは何故なのか。

ぜひ、「いちばんたいせつなこと」について考えてみてください。

著者
サン=テグジュペリ著/河野万里子訳
ページ数
153頁
出版社
新潮社
価格(税込)
528円

2.『革命前夜』/須賀しのぶ

※引用元:Amazon

あらすじ

ベルリンの壁崩壊直前、主人公の眞山柊史はピアノに打ち込むため、東ドイツのドレスデンに留学する。

個性豊かな天才たちであふれる音楽大学で、柊史は革命に巻き込まれながらも、自分の音を求めてあがく。

自由を求めて国を捨てる人々と、祖国で希望を持ち続ける人々

舞台は冷戦下の東ドイツ。

戦後に生まれ、高度経済成長期の喧騒の中で生まれ育った主人公・眞山柊史は、欧州の伝統ある純粋な音を求め、「昭和」が終わり、「平成」の幕が開けた日に東ドイツの地に足を踏み入れます。

人間は「密告するか、しないか」の2種類しかいないという東ドイツの環境に戸惑い、理不尽と戦いながら生きる人々の姿に打ちのめされ、自分の音を見失う柊史。

革命の熱にうなされた国で、自由を求めて国を捨てるか、祖国を見捨てず留まり続けるかの2択を迫られた人々は、どちらかを選択し、自分が選ばなかったほうを採った人々に複雑な感情を抱き続ける…。

誰もが正しいわけではなく、間違っているわけでも無いからこそ、それぞれの立場について考えさせてくれる名作です。

著者
須賀しのぶ
ページ数
467頁
出版社
文藝春秋
価格(税込)
1,012円

3.『i』/西加奈子

※引用元:Amazon

あらすじ

「この世界に、アイは存在しません。」

シリアで生まれ、ニューヨークに住むセレブな夫婦に養子として引き取られたワイルド曽田アイは、入学式の翌日、数学教師の言った言葉に衝撃を受ける。

この世界に、「愛」はあるのか。

裕福で思慮深い両親や、レズビアンの親友に囲まれながら、アイは世界の愛を探す。

選ばれた自分と、選ばれなかった誰か

貧困が蔓延するシリアに生まれながら、幼少期にアメリカのセレブに引き取られ、養子となった主人公・アイ。

シリアと同様に貧しい国で生まれ貧困に苦しむ家族が、同じように苦しむはずだったアイに家政婦として仕え、遂には盗みにまで手を染め仕事を失う様を見て、アイは努力もせずに幸運だけで手に入れた不自由のない生活に罪悪感を抱きます。

自分とは、何なのか。何かに属することで安心を得ようとするアイは、世界に愛を見つけられるのでしょうか。

裕福への罪悪感、サバイバーズギルドなど、「選ばれた自分と、選ばれなかった誰か」というテーマは、西加奈子の小説にしばしば登場するテーマです。

遠い国・シリアに思いを馳せながら、自分とは何か、世界を愛せるのか、ということについて是非考えてみてください。

著者
西加奈子
ページ数
323頁
出版社
ポプラ社
価格(税込)
748円

4.『BUTTER』/柚木麻子

※引用元:Amazon

あらすじ

世間を騒がせている連続殺人犯・梶井真奈子。

多くの男性を魅了し、搾取してきた彼女の素顔に迫るため、週刊誌の敏腕女性記者である町田里佳は、梶井の指示通りに「本物」の贅沢な美食を体験していく。

梶井の人生を追体験することで、町田が見たものとは?

「適量」不足

キャリアを求める女性は「女らしさ」を捨てなければならず、家庭を追い求める女性はキャリアを捨てなければならない現代日本。

同様に、男性側も「男らしさ」に縛られ、何かを責めるように自分を犠牲にしてでも弱さを覆い隠しながら生きていく。

本作では、料理のレシピ本に「適量」という言葉を使うと苦情がくる日本社会には「適量」という概念が不足していると語られます。

梶井に命令され、美食にのめりこみスレンダーな体型を維持できなくなった町田は、まるで誰かを傷つけたかのように周囲から強く非難されるうちに、際限なく基準が上がり続ける不毛なジャッジメントから自由になるためにはどんなに怖くても自分で自分を認めるしかないと気付きます。

「甘さ控えめ、カロリー控えめ、薄味、あっさり、なんてものが褒め言葉になる、この日本は本物を知らない」と語る梶井も含め、様々な登場人物たちがそれぞれの「適量」を見つけようとしていく物語です。

著者
柚木麻子
ページ数
591頁
出版社
新潮社
価格(税込)
1,045円

5.『熱源』/川越宗一

※引用元:Amazon

あらすじ

同化政策によってアイデンティティを奪われ、更には感染症で多くの仲間を失った樺太アイヌであるヤヨマネクフは、開拓使たちに奪われた故郷・樺太へ戻ることを志す。

一方、リトアニアに生まれ、ロシアの同化政策によって母国語を禁止されたポーランド人・ブロニスワフ・ピウスツキは、友人の企てた工程の暗殺計画に巻き込まれ、苦役囚として樺太に送られる。

「文明」とは何か?

教科書に数行載っているにすぎないアイヌ同化政策の歴史とその遺恨が圧倒的な熱量とともに当事者目線で語られ、読者に「文明とは何か」ということについて訴えかけてくる本作『熱源』。

同化も滅びも拒絶し「アイヌ」として力強く生きていこうとするヤヨマネクフと、冤罪によって送られた地・樺太で極寒のなか生きる人々の力強さに惹かれ、民俗学者として学会に少数民族の知恵と強さへの理解を訴えるブロニスワフ・ピウズツキは、それぞれの方法で大切なものを守り継ぎます。

「文明」が「野蛮」と断じた文化には、生きるための知恵が詰まっていたように、人々の生活を一見豊かにした「文明」や「科学技術」は、現在信奉されているほど素晴らしいものでは無いのかもしれません。

「文明とは」という問いに、「馬鹿で弱い奴は死んじまうっていう、思い込みだろうな」と答えた一文が印象的な作品です。

著者
川越宗一
ページ数
490頁
出版社
文藝春秋
価格(税込)
902円

6.『渦 妹背山婦女庭訓魂結び』/大島真寿子

※引用元:Amazon

あらすじ

弟弟子に先を越され、人形遣いには何度も修正を要求され、歌舞伎の人気に押され…。

挫折を繰り返しながらも、それでも書かずにはいられない浄瑠璃作者・近松半二の生涯を描く。

圧倒的な熱量で虚実の「渦」をつくり出した、もう一人の近松。

人形浄瑠璃といえば、近松門左衛門が有名ですが、本作『渦 妹背山婦女庭訓魂結び』ではあえて近松門左衛門ではなく、その名を継いだ近松半二に焦点が当てられます。

芝居小屋がひしめき合う江戸時代半ばを過ぎた道頓堀で、「妹背山婦女庭訓」を観たことをきっかけに人形浄瑠璃の世界へのめりこんでいく近松半二をはじめ、人形浄瑠璃に魅せられた人々が命をかけてつくり出す人形浄瑠璃。

物語はどこから生まれてくるのか」という大島真寿美の長年のテーマが、義太夫のような「語り」とともに長編小説という形式で結晶化しました。

命を削ってまで、何かを生み出す」ということを、読者に問いかける作品です。

著者
大島真寿美
ページ数
407頁
出版社
文藝春秋
価格(税込)
869円

7.『六の宮の姫君』/北村薫

※引用元:Amazon

あらすじ

卒論を控えた「私」は、出版社でアルバイトをするうちに、図らずも文壇の長老から卒論のテーマである「芥川龍之介」の謎を与えられる。

芥川龍之介の短編「六の宮の姫君」に寄せられた言辞を巡る謎を解き明かすため、円紫さんに助けられながら、「私」は浩瀚な書物を旅していく。

人間の弱さを超越することに憧れた芥川龍之介と、人間の弱さを肯定した菊池寛

「日常の謎」系ミステリーとして名高い、北村薫による「円紫さんと私」シリーズ4作目となる本作『六の宮の姫君』では、主人公「私」に芥川龍之介の論争相手は誰なのか、という謎が提示されます。

『今昔物語集』などの仏教説話が登場するため、シリーズのほか作品と比較して少々難解な要素を含みますが、文豪と呼ばれる作家それぞれの仏教観や人間観に深く迫っており、本好きな方に是非読んでほしい作品です。

困難や死を恐れず、我執を絶てる超人的な人間だけが往生を遂げることができるという伝統的な仏教説話を批判し、書き換えを行った菊池寛と、超人的な人間に憧れを抱き、菊池寛の改変を許すことができなかった芥川龍之介の、友情と隔絶を是非紐解いてみてください。

著者
北村薫
ページ数
283頁
出版社
東京創元社
価格(税込)
682円

8.『悲しみよこんにちは』/サガン

※引用元:Amazon

あらすじ

もうすぐ18歳を迎えるセシルは、プレイボーイの父レイモンとその恋人のエルザの3人で南仏の海辺の別荘へヴァカンスに出かける。

大学生のシリルとの恋を楽しんでいたセシルだったが、ヴァカンスに合流したアンヌと父が再婚に走り始めたことを察知し、再婚を阻止するためある計画を実行する…。

「わたしは、観念的な存在などではなくて、感受性の強い生身の人間を、侵してしまったのだ」

サガンの魅力が余すことなく詰まった本作『悲しみよこんにちは』では、父が理知的な女性・アンヌと再婚することを防ぐため、17歳の少女・セシルが様々な策略を巡らせます。

「父に再婚しないで欲しい」「アンヌのような理知的な女性が母親になると息苦しい」という、身勝手で浅薄な思いからアンヌを傷つけるような行動を繰り返すセシル。

少女が自らの残酷さに気付いたときには、事態はすでに取り返しのつかないところまで進行してしまっていました。

セシルは終止「精神的に成熟した女性」という観念的な存在を頭に描いており、「アンヌ」という生身の人間が傷ついていることに気付くことが出来ませんでした。

SNSが発達し、画面の向こうの人間を生身の存在として認識し難くなった現代だからこそ、多くの人に読んでほしい名作です。

著者
サガン著/河野万里子訳
ページ数
197頁
出版社
新潮社
価格(税込)
649円

9.『怪盗クイーンはサーカスがお好き』/はやみねかおる

※引用元:Amazon

あらすじ

飛行船で世界中を飛び回り、狙った獲物は必ず盗む怪盗クイーンに、不可能はない!

…はずであったが、魔術師や催眠術師など、特殊能力を持つ団員たちが集まる謎のサーカス団に獲物であった宝石を横取りされる。

宝石を取り返すため、怪盗クイーンは謎のサーカス団に挑む。

自分の右手で掴めないものは?

はやみねかおるの描く大人気シリーズ「怪盗クイーン」シリーズの第1作目である本作では、謎のサーカス団がある目的を達成するため、怪盗クイーンに勝負を挑みます。

サーカス団団長の、真の目的とは。

児童文庫ならではの魅力的なキャラクターと、明快なストーリーを通して語られる平和への願いに、心打たれる名作です。

著者
はやみねかおる
ページ数
308頁
出版社
講談社
価格(税込)
814円

10.『不道徳教育講座』/三島由紀夫

※引用元:Amazon

あらすじ

「教師を内心バカにすべし」「大いにウソをつくべし」「スープは音を立てて吸うべし」…。

世間の良識家たちを嘲笑するような、著者一流のウィットと逆説で道徳を説く。

「不道徳」から導き出される「道徳」

三島由紀夫と聞くと、技巧を凝らした格調高い文学作品を思い浮かべがちですが、本作『不道徳教育講座』は、文学が苦手な人にこそ読んでほしい、ウィットやおふざけたっぷりの作品です。

西鶴の『本朝二十不孝』という、親不孝を誇張して描いた作品をモデルとし、69個の「不道徳」のすすめが収められています。

「不道徳」を説いているはずなのに、まわりまわってなぜか道徳が説かれている…。

世に蔓延るありきたりな良識や道徳をひっくり返してみてはいかがでしょうか。

著者
三島由紀夫
ページ数
352頁
出版社
KADOKAWA
価格(税込)
704円

11.『図南の翼 十二国記』/小野不由美

※引用元:Amazon

あらすじ

先王が斃れて27年、恭国は王不在のまま治安が乱れ、市井には妖魔が跳梁跋扈していた。

首都・連檣で豪商の娘として、何不自由ない生活と教育を与えられた少女・珠晶は、混迷極まる国の現状を憂い、王になるため蓬山を目指す。

裕福な家に生まれた少女が背負う責務

小野不由美による大人気シリーズ、「十二国記」シリーズ9巻となる本作では、恭国が舞台となり、12歳の少女が王になるまでの軌跡が描かれます。

王がいない国は、それだけで人の心が乱れ、天候が狂い、「妖魔」と呼ばれる魑魅魍魎が民を襲うようになる…。

先王逝去から27年という長い月日が経ち、首都でさえも学校が閉鎖される程荒廃してしまった恭国で生まれ育った主人公・珠晶は、大人たちが王になるため選定を受けに行くという責務を果たさず、必死に財をため込んでいることに痺れを切らし、単身家を飛び出し、蓬山を目指します。

裕福な子供は恵まれず死んでいく人々に情けをかけることすら許されないのだと説く12歳の少女が果たす「責務」とは。

シリーズ全体を貫く、「生きる意味」というテーマにひとつの答えを提示する作品です。

著者
小野不由美
ページ数
419頁
出版社
新潮社
価格(税込)
781円

12.『コンビニ人間』/村田沙耶香

※引用元:Amazon

あらすじ

36歳未婚、彼氏なし、コンビニバイト歴18年の古倉恵子は、「店員」でいるときだけ、世界の歯車になれる。

「自分」はどこまで「自分」なのか?

本作『コンビニ人間』の主人公・古倉恵子は、「普通」がわからず、他者を観察し模倣することによって「普通」になろうとします。

世界から異質なものとみなされないように、服装や話題、果ては話し方や人生設計まで他者を模倣しようとする恵子。

しかし、普段からよく会話する人たちは話し方が似てくるように、人は誰しも多かれ少なかれ他者に影響を受けながら生きています。

どこまでが模倣で、どこからが自分なのか…。

案外「普通」の読者も、恵子と変わらないのかもしれません。

著者
村田沙耶香
ページ数
168頁
出版社
文藝春秋
価格(税込)
660円

13.『モモ』/ミヒャエル・エンデ

※引用元:Amazon

あらすじ

町はずれの円形劇場跡に迷い込んだ不思議な少女モモ。

町の人たちは、彼女に話を聞いてもらい、幸福な気持ちを楽しんでいました。

しかし、そこへ「時間どろぼう」の男たちの魔の手が忍び寄り、人々からどんどん「時間」を盗んでいく…。

「時間」とは何か?

本作は児童文学作家・ミヒャエル・エンデの代表作であり、世界中で評価され、多くの人々に読まれてきた資本主義への批判書です。

モモとの語らいを楽しんでいた人々は、「時間どろぼう」に騙され、時間を少しでも節約するため、過剰な効率化を推進します。

やがて人々から笑顔が失われ、町は灰色になり…。

タイパ」という言葉が流行し、時間の節約が当たり前となった現代だからこそ輝く名作です。

著者
ミヒャエル・エンデ著/大島かおり訳
ページ数
409頁
出版社
岩波書店
価格(税込)
880円

14.『余命3000文字』/村崎羯諦

※引用元:Amazon

あらすじ

ある日、「あなたの余命はあと3000字きっかりです」と医者から文字数で余命を宣告された男は、文字数を消費しないようになるべくドラマのない人生を心がけていたが…。

ドラマのない長い人生か、ドラマティックな短い人生か。

表題作「余命3000文字」では、文字数で余命宣告をされ、平坦な人生を心がけていた男が、自宅の向かいにある木造アパートが火事で燃え、中に子供が取り残されたという状況に直面し、自分の残りの文字数か、子供の命か、という2択を迫られます。

十分に天寿を全うできるように文字数を節約しながら生きてきた男が出した結論とは。

表題作のほかにも、高評価のラーメン屋が潰れるなか低評価のラーメン屋が存続する秘訣を皮肉たっぷりに描いた「食べログ1.8のラーメン屋」や、母親の胎内に6年間引きこもった挙句、衝撃の決断を下す胎児を描いたブラックユーモア「出産拒否」など、5分で読める、圧倒的な発想力が輝く全26編が収録されています。

著者
村崎羯諦
ページ数
274頁
出版社
小学館
価格(税込)
715円

15.『同志少女よ、敵を撃て』/逢坂冬馬

※引用元:Amazon

あらすじ

独ソ戦が激化する1942年、少女セラフィマの住むモスクワ近郊の農村は、ドイツ軍によって急襲され、村人たちは惨殺された。

自らも射殺される寸前、赤軍の女性兵士イリーナに救われたセラフィマは、「戦いたいか、死にたいか」という2択を突きつけられる。

母を撃ったドイツ人狙撃手と、母の遺体を焼いたイリーナに復讐するため、一流の狙撃手となることを決意したイリーナは、同じ境遇の少女たちと訓練を重ね、やがて前線へ向かう…。

戦場における、本当の「敵」は何か?

2022年度本屋大賞を受賞した本作『同志少女よ、敵を撃て』では、女性でありながら故郷を守り、敵をせん滅するために戦場に立つ女性兵士たちの姿が描かれます。

ノーベル文学賞受賞作品『戦争は女の顔をしていない』(スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ著)との出会いをきっかけとして生まれたこの作品は、男性視点で描かれることの多い「戦争」を、女性目線から切り取っており、ロシアのウクライナ侵攻も重なって発売当初大きな反響を呼びました

戦場において、女性は人間として扱われず、男性の結束のための道具に過ぎない…。

「敵」の存在を目の当たりにしたとき、少女セラフィマがとった行動が見所です。

著者
逢坂冬馬
ページ数
492頁
出版社
早川書房
価格(税込)
2,090円

16.『52ヘルツのクジラたち』/町田その子

※引用元:Amazon

あらすじ

世界でたった一匹、52ヘルツという他の仲間には聞き取れない高い周波数で鳴くクジラは、自分の声を仲間に届けることも、他の仲間から声が届くこともなく、世界で一番孤独に生きている。

家族に人生を搾取されてきた主人公・貴瑚と、親に虐待され「ムシ」と名付けられた少年。

孤独な2人は、新しい人生への道を歩み始める。

孤独な人間は、同じく孤独に苦しむ人間を救えるか?

本作の主人公・貴瑚は、「ヤングケアラー」として苦しみ続け、助け出された先でも自殺を試みます。

それでも、全てから逃げた先で「ムシ」と呼ばれる少年と出会ったとき、貴瑚はその少年と新しい人生を歩むことを決意しました。

酷い仕打ちを受けながらも行為の裏側に愛情を期待してしまったり、自分を責めてしまったり…。

肉親からの「虐待」は簡単には割り切れないからこそ、理不尽から逃亡し新しい人生へと歩みだすという選択がし難く、他人の助けが必要となります。

「他人に優しくするには、自分に余裕がなければいけない」とよく言われますが、自分に余裕がないからこそ、同じく不足を抱えた他人と支えあいながら道を拓いて行けるのではないでしょうか。

著者
町田その子
ページ数
314頁
出版社
中央公論新社
価格(税込)
814円

17.『舟を編む』/三浦しおん

※引用元:Amazon

あらすじ

新しい辞書を作成するため、馬締光也(まじめみつや)は営業部署から辞書編集部に引き抜かれた。

定年間近のベテラン編集者や、日本語研究に人生を捧げた学者、辞書に熱い情熱を持った辞書編集部の同僚や印刷会社の人々…言葉の大海を渡る新しい辞書「大渡海」の完成に向けて、様々な人々の情熱が混ざりあう。

奥深い「言葉」の大海

インターネットが普及し、検索ボックスに言葉を入力すれば一瞬でその言葉に関する様々な情報が溢れかえらんばかりに目に飛び込んでくる昨今、「辞書」に頻繁に触れる、という方は少ないのではないでしょうか。

しかし実は「辞書」とは、言葉に関するあらゆる情報を集め、取捨選択し、限られたスペースで最大限有益かつ分かりやすく伝える、という非常に高度なものなのです。

主人公・馬締光也が辞書編集部に引き抜かれた際、「シマ」という言葉を説明せよという問いに答えたシーンが印象的ですが、普段使っている「言葉」は文脈や使用者、時代によって容易く姿を変えます。

広く、深い「言葉」の大海を渡るための舟となる「辞書」制作に人生を捧げた人々の物語を読んで、その奥深さに触れてみませんか?

著者
三浦しおん
ページ数
347頁
出版社
光文社
価格(税込)
682円

18.『カラマーゾフの兄弟』/ドストエフスキー

※引用元:Amazon

あらすじ

町で有名なフョードル・カラマーゾフの家に、一家の兄弟3人が集合した。

父と遺産問題で揉めている長男・ミーチャ、西洋的インテリの次男・イワン、無垢な修道僧の三男・アリョーシャ。

そして、私生児のスメルジャコフ…。

一家が抱える問題は次第に混迷を極め、遂に父親のフョードルが殺害される。

天上のパンか、地上のパンか?

「父殺し」をテーマにしたこの作品は、しばしば世界最高峰の小説に位置づけられるほど、世界中で評価されてきました。

光文社古典新訳の亀山郁夫訳で全5巻。主人公・アリョーシャの視点からカラマーゾフ一家が集ってから父親の殺害、そして犯人逮捕とその後までが描かれます。

また、本作はドストエフスキーの晩年期に制作されているため、著者の人生におけるキリスト教観が結晶化した作品でもあります。

特に、無神論者イワンが修道僧の弟・アリョーシャにその信仰について告白する「プロとコントラ」(第2巻収録)では、著者の思想が顕著に映し出されており、ドストエフスキーを理解するうえで重要な章です。

天上のパン(=自由)」で生きることのできる人間はほんの一部の強者であり、大多数の人間は「地上のパン」無しには生きられないと訴えるイワンに、キスを送ったアリョーシャ。

このキスはなにを表象しているのか、是非自分なりの答えを見つけてください。

著者
ドストエフスキー著/亀山郁夫訳
ページ数
443頁(1巻)
出版社
光文社
価格(税込)
796円(1巻)

19.『時計じかけのオレンジ』/アントニイ・バージェス

※引用元:Amazon

あらすじ

近未来の高度管理社会において、15歳の少年アレックスは、機械的で退屈な毎日への不満を超暴力によって晴らしていた。

夜ごと街をさまよい、仲間とともに強盗・傷害・強姦・殺人をけたたましい笑いとともに繰り返す少年たち。

やがて国家の手に捕らえられた少年は、更生のため「治療」を受ける…。

人を科学技術によって矯正することは肯定されるか?

所謂ディストピア小説に分類される本作『時計じかけのオレンジ』は、エロ・グロ・ナンセンスたっぷりの、反道徳的小説です。

鮮烈な音楽描写と、臨場感あふれる暴力表現で読者の脳を揺さぶってくるため、かなり賛否の分かれる小説ですが、英国の20世紀文学を代表する作品と言われています。

主人公のアレックスは、人に暴力をふるうことも、家に押し入り物を盗むことにも罪悪感を全く覚えない破綻者で、逮捕された後も全く反省の色を見せません。

そんな彼を更生させるために国家がとった方法は、映像と化学物質により、反道徳的なことに接すると反射的に強烈な嫌悪感を抱くよう強制的に「条件付け」を行うことでした。

この「更生」がどのような結果となったかは一度削除された最終章を読むかどうかで解釈が変わるため、是非最終章まで収録されている本を選んでください。

著者
アントニイ・バージェス著/乾信一郎訳
ページ数
318頁
出版社
早川書房
価格(税込)
968円

20.『虚ろな十字架』/東野圭吾

※引用元:Amazon

あらすじ

娘が殺され、犯人が死刑となったことをきっかけに離婚した中原道正・小夜子夫妻。

しかし、離婚後転職した中原のもとに舞い込んできたのは、小夜子が殺されたという報せだった。

自首した犯人は、その目的を「金銭目的」と自白するが、疑念を抱いた中原は小夜子の死の真相を知るため、離婚後の小夜子の動向を探る。

「死刑」制度の是非

先進国が人道的な観点から次々と廃止し、日本においても長年その是非が問われている「死刑」。

本作『虚ろな十字架』は、その「死刑」という問題にダイレクトに切り込んだ作品です。

愛娘の死後、罪を犯した人を憎むようになり、フリーライターとして「死刑」廃止を訴える運動を強く批判するような言説を広く公表していた小夜子。

その憎しみは遂に人の罪を暴き、償いを強要する程にまで成長し…。

無期懲役囚の保釈後の再犯率の高さなどのデータが示されているため、「死刑」問題について考える足がかりになるとともに、自分の正義を貫くことの功罪にも触れることができます。

著者
東野圭吾
ページ数
367頁
出版社
光文社
価格(税込)
704円

21.『モンスター』/百田尚樹

※引用元:Amazon

あらすじ

その畸形的な醜さから「モンスター」と呼ばれ、蔑まれてきた主人公・未帆は、莫大な金銭によって絶世の美女へと変身を遂げ、実らなかった恋を追い求める…。

恋のため、全てを犠牲にして「絶世の美女」となった女性

生まれつきの醜さから家庭にも学校にも居場所を見つけられず、常に自分の容姿を憎みながら生きてきた本作の主人公・未帆。

好きな人が失明したら献身的な自分の愛を受け取ってくれるかもしれない、という想いからドリンクに飲料用ではないアルコールを混ぜたことが発覚し、追われるように都会に出た未帆は、そこで「美容整形」に出会います。

どんどん美しくなる顔と比例して、崩れていく生活や健康…。

全てを犠牲にしても美女となることで、彼女は何を手にしたのでしょうか。

美容整形の是非というよりも、1人の人間の執念が丹念に描かれた作品です。

著者
百田尚樹
ページ数
494頁
出版社
幻冬舎
価格(税込)
869円

22.『一九八四年』/ジョージ・オーウェル

※引用元:Amazon

あらすじ

〈ビッグ・ブラザー〉率いる党が一党独裁を敷いている、全体主義社会。

人々は「ビッグ・ブラザーがあなたを見ている」というキャプションとともに、テレスクリーンを通して生活を絶えず監視されていた。

真理省記録局に勤務し、歴史の改ざんを仕事としている党員ウィンストン・スミスは、絶対服従を求める党に不満を抱きながら生活してたが、奔放な美女ジュリアと恋に落ちたことをきっかけに、反政府地下活動に参加するようになる。

歴史の改ざんと二重思考

主人公のウィンストン・スミスは、真理省という役所に勤め、事実の書き換えを行っています。

主人公が行っているような、送られてきた指示を基にデータを書き換え、新しい事実を正しい歴史事実として覚えると同時に、記憶の再編纂を行ったという事実を忘れるなど、ふたつの相矛盾する信念を心に同時に抱き、その両方を受け入れる能力「二重思考」

この二重思考によって、党は自身が決して誤りを起こさないという説を堅固に護り、一党独裁の全体主義社会を保ちます。

本作はディストピア小説であり、SF的な世界観のなか物語が進行していきますが、現代社会においてもフェイクニュースなど改ざんされた事実が大量に流布しており、『一九八四年』は既にフィクションではなくなってきているのかもしれません。

著者
ジョージ・オーウェル著/高橋和久訳
ページ数
511頁
出版社
早川書房
価格(税込)
990円

23.『乳と卵』/川上未映子

※引用元:Amazon

あらすじ

豊胸手術に取りつかれているホステスの巻子と、言葉を発することを拒否する巻子の娘・緑子。

東京で暮らす主人公のもとに上京してきた2人の、三日間の哀切なドラマ。

「生まれてくることの取り返しのつかなさ」

主人公の姪に当たる緑子は、12歳。

二次性徴が始まり、周囲を取り巻く環境もそれに併せて変化していく時期です。

本人の気持ちは整理できないまま、緑子の身体はどんどん子供を産むことのできる身体へと変化していき、学校でも自分の身体の仕組みについて学びます。

身体の変化に気持ちが追いつかず、言葉を発することを辞めてしまった緑子と、ホステスとして働き、豊胸手術を切望する巻子。

生まれてくること、成長することについて考えさせられる物語です。

著者
川上未映子
ページ数
95頁
出版社
文藝春秋
価格(税込)
616円

24.『鹿の王』/上橋菜穂子

※引用元:Amazon

あらすじ

強大な帝国の侵攻から故郷を守るため、死兵となった戦士団独角の頭領、ヴァンは奴隷となり岩塩鉱にとらわれていた。

ある夜、不気味な犬の群れが岩塩鉱を襲い、謎の病によって人々が死んでいった。

生き残ったヴァンは同じく生き残った幼子ユナとともに岩塩鉱から逃げ出す。

先進医療か、信仰か?

民族によって感染するか否かが分かれる感染症の流行を、人々は「神の意思」であると考えるなか、感染しない民族の血液から採れる抗体を体内に入れることで治療することができるということを発見する医師ホッサル。

しかし、多くの人々は他民族の血液を体内に入れると死後の安寧が守られないという信仰上の理由から、治療を拒否し、死ぬことを選びます

先進医療は理解を得るのが難しい場合がありますが、先進医療でなくても、輸血を拒否する宗教など、信仰と医療はしばしば対立します

両者の関係はどうあるべきか、是非考えてみてください。

著者
上橋菜穂子
ページ数
272頁(1巻)
出版社
KADOKAWA
価格(税込)
880円(1巻)

25.『人間に向いてない』/黒沢いづみ

※引用元:Amazon

あらすじ

数年前から突如として発生した奇病、「異形性変異症候群(ミュータント・シンドローム)」。

人間が突如として異形の姿へと変貌してしまうその病は、罹患者がいわゆる「引きこもり」や「ニート」といった落伍者であることから、世間の理解を得られなかった。

高校を中退し、引き込もったまま22歳にまでなってしまった息子を持つ主婦・美晴は、いつものように息子を昼食へ呼びに行くが、そこにいたのは中型犬程の大きさの、芋虫だった。

理想から外れた子どもを殺す親たち

「親子」という人間関係に焦点を当てたこの小説では、異形となった息子を献身的に世話する母・美晴の姿に心打たれますが、読み進めていくうちにその母親像がひっくり返り、「三度嘔吐」きます。

「自分が産んだから」というだけで、何ら疑問を抱くことなく子どもに一方的な理想を押しつけ、子どもがそこから外れてしまうと非難し、自分が被害者であるかのように振る舞う親たち

本作では「異形化」というかたちで表象されていますが、親の期待に応えられず否定され続けた子どもたちは、歪み、人間社会に馴染めなくなっていきます。

「子どもは親の所有物じゃない」。多くの大人たちが子どものころ同じように不満を抱いたはずなのに、何故か同じことが繰り返されてしまうという、負の連鎖を描いた物語です。

著者
黒沢いずみ
ページ数
400頁
出版社
講談社
価格(税込)
836円

26.『カラフル』/森絵都

※引用元:Amazon

あらすじ

生前罪を犯し、輪廻のサイクルから外された「ぼく」の魂が抽選に当たり、再挑戦するチャンスを得た。

再び輪廻のサイクルへ戻るためには、自殺を図った少年・真として過ごし、自分の罪を思い出さなくてはならない。

カラフルな世界や人々

自らの罪を思い出すため、自殺を図った少年の身体にホームステイするうちに「ぼく」は真という少年や周囲の人間、そしてそれらを取り巻く世界が欠点も美点も兼ね備えたカラフルなものであることに気付きます。

カラフルな世界や人々は見方によって容易にその色を変えるため、自分の見たいものだけを見ながら生きていけるわけではありません。

人生はただのホームステイ」と考えることの大切さを教えてくれる、悩んでいる中学生・高校生・大学生にこそ読んでほしい心温まる物語です。

著者
森絵都
ページ数
259頁
出版社
文藝春秋
価格(税込)
715円

27.『女が死ぬ』/松田青子

※引用元:Amazon

あらすじ

「女らしさ」を演じるのをやめた、グロテスクでもありのままの自分を祝福する掌編集。

「女らしさ」が、全部だるい。

リズムよくクスッと笑わせてくれながらも、「女らしさ」や演じられた綺麗な姿を強要する全てに徹底的にNOを突きつけるこの作品。

死にかけの女性が、人間の性器のグロテスクさを覆い隠す風潮を批判しながら救急車を待つという、どこか滑稽な物語を通して人間の「ありのまま」を肯定する表題作「女が死ぬ」や、「あなた」が理想とする少女の条件を並べ、何れも存在しないということを突きつける「あなたの好きな少女が嫌い」など、収められた53の掌編は「女性らしさ」という幻想を小気味良く打ち砕きます

単なる「フェミニズム」を主張する作品ではなく、「女らしさ」がだるいことを肯定する作品のため、思想じみた表現もなく、不快感無く読むことができる作品です。

著者
松田青子
ページ数
218頁
出版社
中央公論新社
価格(税込)
726円

28.『図書館戦争』/有川浩

※引用元:Amazon

あらすじ

公序良俗を乱し、人権を侵害する表現を取り締まるという目的で成立した『メディア良化法』。

成立から30年経った2019年、日本ではメディア良化委員会と図書隊が抗争を繰り広げていた。

表現の自由とその規制

有川浩の人気シリーズ、『図書館戦争』シリーズでは「検閲」という制度が法制化され、表現の自由が侵害された世界で図書を守るために戦う人々の姿が描かれます。

戦前まで実際に行われていた「検閲」は現在では憲法において禁止されていますが、各々が完全に自由に表現できる社会も、問題がないわけではありません。

蔑視表現やプライバシーの侵害など、表現は人権を侵害する場合があり、「公序良俗を乱し人権を侵害する表現を取り締まる」という目的にも、理があるのです。

是非、表現の自由とその規制について考えてみてください。

著者
有川浩
ページ数
398頁
出版社
KADOKAWA
価格(税込)
734円

29.『すばらしい新世界』/ハクスリー

※引用元:Amazon

あらすじ

世界戦争の終結後、暴力を排除し、安定を世界のモットーとした世界が形成された。

人間は受精卵の段階から選別され、5つの階級に分けられて徹底的に区別されていた。

孤独な青年バーナードは、出かけた野人保護区で恐るべきものに出会う…。

遺伝子操作と優生思想

ハックスリーの描くディストピア小説、『すばらしい新世界』では、医学や科学技術が発展し、人間の遺伝子が全て管理され、生前から人生が決定されている世界が描かれます。

人間の生殖は全て管理されているため、恋愛や結婚、貞操という概念がなく、「家庭」は否定されます。

「家庭」という概念を保持した人々は「野人」とされ、未開の文明から来た人間がシェイクスピアの偉大さ、悲劇の重要性について訴えようと、管理されなれた人々は耳を貸さず、笑うばかり。

しかし、社会を管理する側の人間はシェイクスピアの劇本を隠し持っており…。

人間の尊厳について考えさせてくれる小説です。

著者
オルダス・ハクスリー著/黒原敏行訳
ページ数
339頁
出版社
光文社
価格(税込)
1,166頁

30.『神様を待っている』/畑野智美

※引用元:Amazon

あらすじ

真面目に勉強や就活に励み、大学を卒業して文房具メーカーに勤めていた水越愛は、会社の業績が悪化したことから派遣切りに遭った。

失業保険の給付を受けながら必死に求職活動するもののどこにも採用されず、ついにアパートを追い出されあっという間にホームレスになった。

漫画喫茶で働きながら、「出会い喫茶」で日銭を稼ぐ日々。

生きるために売春をするか、という崖っぷちまで追い込まれたのは、自己責任なのか。

「自己責任」という言葉の意味

主人公の水越愛は、真面目な性格にもかかわらず大学卒業後も派遣としてしか働けず、会社の業績悪化によって簡単にクビを切られ、ホームレスになってしまいます。

困窮し、社会的に弱い立場に追い込まれた人に対し、社会は「まじめに働かなかったからだ」「努力が足りなかったからだ」と身勝手に理由を推測し、本人を容赦なく責め立てますが、果たして貧困は「自己責任」なのでしょうか

主人公の身に降りかかった出来事は、決して特別なことではなく、誰にでも起こりうることです。

売春相手の男性を待つことを「神待ち」と呼びますが、自分の体を売る相手を「神」呼ばなけばならない女性や未成年たちの支援制度について、是非考えてみてください。

著者
畑野智美
ページ数
332頁
出版社
文藝春秋
価格(税込)
836円

中学生・高校生・大学生こそ時間をかけて本を読もう

中学生・高校生・大学生という時期は、自由な時間も多く、本に接する機会の多い時期です。

授業などで習うような社会問題や思想も、物語になれば実感をもってすんなりと理解することもできます。

是非、人生を変える1冊と出会ってください。

この記事を書いた人

Yu

千葉県出身の「Yu」です。 主に、小説、メイク・コスメのジャンルを執筆しています。 本が大好きで、幅広く読んでいます。 皆様のお役に立てるような情報を発信してまいります!

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