※アイキャッチ画像出典:「ワーナーブラザーズ公式Twitter」
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クリストファー・ノーラン監督について
引用元:映画.com
1970年にロンドンでコピーライターの父親と客席乗務員の母親のもとから生まれる。
幼少期はロンドンとシカゴの両方で過ごす。ヘイリーベリー・アンド・インペリアル・サービス・カレッジを卒業後、ユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドン大学に入学。英文学を学ぶ傍ら、短編映画の制作をはじめる。1998年、『フォロウィング』で初めて長編映画の監督を務める。以降様々な長編映画を監督。数々の名作を生み出している。
クリストファー・ノーラン監督は言わずと知れたハリウッド映画の名監督です。
「メメント」や「バットマンシリーズ」、「インターステラー」、「テネット」など名作を数多く輩出しています!
出典「映画『TENET』公式twitter」
しかしなぜノーラン監督の作品は難解で暗い作品が多いのに、世界中で絶大な人気を誇っているのでしょうか。
実際にノーラン監督の作品に触れた方でも、ところどころのシーンで「ん?」と疑問を持つ点も多かったと思います。
今回は、記事執筆者である私の見解や感想も踏まえて、場面の解説や作品の魅力、情報などを盛りだくさんにお伝えしていこうと思います!
ノーラン監督の作品に触れたことのある視聴者の目線で紹介していくため、少々ネタばれも含む可能性もありますのでご注意ください!ちなみにこの記事で結末までネタバレしてしまう作品は「インターステラー」、「ダンケルク」です。
「時間の流れ」を表現手法として用いた2作品!
ノーラン監督の作品で、「時間の逆行」を描いた作品は「TENET テネット」と「メメント」です。
この「時間を逆行して物語を進める」というノーラン監督の挑戦的な発想は、大きな衝撃を映画ファンに与えました。
出典「映画『TENET』公式twitter」
監督の作品の傾向として「通常の映画だと大いに観客を楽しませることができない」という考えの上で映画制作を行っていることから、世間からはトリッキーな映画を創る監督として認識されています。
この2作品も時間の逆行だけでなく、他にも様々な手法で映画ファンを楽しませています。
この2作品で注目してほしい共通のポイントは、まず時間の逆行に騙されず事実関係を整理すると物語の緻密な一貫性が見えてくる点です。
この一貫性はもちろんキチンとした論理のうえでまとまっています。海外などのメディアでは「制作している監督自身も、完璧に作品を理解していないのでは」と評しているものもありますが、そんなはずはありません(笑)
物語を理解すれば、全てのピースがハマり、その一貫性に感動します!
「メメント」(2000年)
出典:「Amazon.co.jp」
今話題のテネットが公開される前にも、ノーラン監督は時間の逆行の手法を使った作品を制作しています。
ノーラン監督の出世作となった、2000年公開の「メメント」です。
作家で弟のジョナサン・ノーランが書いた短編小説をもとに、脚本が描かれています。
頭部に損傷を負い、前向性健忘(発症以前の記憶はあるものの、それ以降は数分前の出来事さえ忘れてしまう症状)になってしまった男が、妻を殺した犯人を追い復讐を試みるという作品です。
複雑で奇怪なシナリオから始まるこの映画ですが、ノーラン監督の作風を象徴するような要素がたくさん詰まっています。
ノーラン監督の心境も、デビュー作「フォロウイング」とは違い映画製作が趣味から商業的な仕事へ変化した作品でもあります。
監督人生に大きな変化を起こしたこの作品ですが、この時点で展開を終わりから始まりへ進める「時間の逆行」にチャレンジしているのです。
本当に天才ですね。。。
出典:「Amazon.co.jp:メメント(字幕版)」
この作品の構成で面白い点として挙げられるのが、時系列が逆向きに進行するときは「カラー」で、そのまま時系列が進行する場合が「モノクロ」で表現されているところです。
カラーパートとモノクロパートは順番につながっていて、ある地点でその2つが交わる、というかなりトリッキーな作品となっています。
そしてその繋ぎ目の映画終盤における時間の逆行(カラー)と通常進行(モノクロ)の中間地点で、主人公の男の行ってきたすべての謎が解き明かされます。
後に紹介する作品でも見受けられる側面でもありますが、ノーラン監督の作品の多くは「時間」が大きく関わっています。映画を構成するそもそもの要素である「時間」を操るという手法に、2作目からチャレンジしたノーラン監督の鬼才さはこのころから垣間見えていました。
「TENET テネット」(2020年)
出典:「ワーナーブラザーズ公式サイト」
そして様々な名作を世に生み出してきて、もう一度時間の逆行にチャレンジした作品
「TENET テネット」は実に映画ファンを唸らせる素晴らしい作品に仕上がりました。
この時間を操ることにさらにフォーカスした作品は、一度の視聴だけでは理解が追いつきませんでした(笑)
しかし、2回目の視聴を終えたときに、パズルのピースがハマったような感覚になり、色々なことが見えてきました。
出典:「映画『TENET』公式twitter」
この作品は難解ゆえに、ネタバレを読んでもなお楽しめるほど内容が複雑です。
物語はノーラン監督初のスパイ映画となっており、「時間のルールを脱却して、第3次世界大戦から人類滅亡を止める」というものです。
この「時間のルールを脱却」という設定がこの作品が評価される設定の一つです。
映画を見ていても時間の逆行が始まり物語が進められますが、頭の中でうまく整理できていない状態が続きました。
テネットの作品設定の基本にあるのが、「未来人が自分たちの滅亡を防ぐために過去(現代)にもどって侵略する」というものです。
わがままな未来人ですね(笑)
ここの未来人は何年後の人間かという設定は明かされませんでしたが、環境破壊や戦争による破壊行為で未来の地球は瀕死状態に陥っています。
そこで未来人が過去に逆行して現代人の世界を侵略しようとします。この現代人vs未来人が第3次世界大戦です。
出典:「映画『TENET』公式twitter」
そこで未来人のとある学者が世界全体の時間の向き逆行させる、最終兵器の「アルゴリズム」を開発します。しかしこのアルゴリズムを使うと、現代人は呼吸ができなくなり全員死んでしまいます。
またこのアルゴリズムを使い現代人を殺してしまえば、「祖父殺しのパラドックス」によって未来人達も破滅するのではないかと考えます。
この未来の科学者はアルゴリズムを9個のパーツに分けて過去に隠すことにしました。
ここでキーとなってくるのが現代で旧ソ連の軍事都市で生まれたセイターという人物です。彼はそんな未来人からのメッセージを見つけ、現代にある9つのアルゴリズムをさがすという契約を与えられます。
そして主人公の「名もなき男」とセイターのアルゴリズムをめぐる争いが複雑に描かれているわけですが、ここまで書いた作品の大枠の説明もまだ1/10にも過ぎないと感じています。(笑)
この記事ではノーラン監督の映画の特徴や魅力について紹介するため、テネットの所々の謎シーンを解説してしまうと、とんでもない分量になっていしまいます。
それでもあのシーンのヒントを紐解きたいという方は、映画の公式サイトで公開しているストーリーのヒントを知ることができます。
是非こちらを参考にしてみてください。
出典:「映画『TENET』公式twitter」
上記の大まかな設定背景を見てからわかるように、初見でこの設定を理解しそれを前提にもっと複雑な話が続くとなると厳しいですよね。
そしていかに巨大な制作費がかかっているのかもわかります。
テネットの制作費に関しては、2億ドルを超えておりノーラン監督史上最高の高予算を投じています。
やはりCGをなるべく使わずにあれだけの作品をとるとなるとこれだけの予算がかかってくるのですね。私がとても印象的に残っているシーンはジャンボジェット機が倉庫に頭から突っ込むシーンです。
出典:「映画『TENET』公式twitter」
普通の作品ならCGを使いますが、素人でも「これはリアルすぎる、、、」と実感しました。そしてその壮大で大規模なセットや映像を観ていると、なんだか映画のチケット代のもとをとったというような気分になっていました。それくらい内容が濃い作品だったということは間違いありません。
何より、この作品の壮大さや様々な人間関係、組織図の整理は私も観ていてとても頭を悩まされました。図解とかで整理してみるとわかりやすかったりするのですが、代理組織があったりと鑑賞時に瞬時に整理するのは難しいですね。
ノーラン監督のほとんどの作品がそうだと思うのですが、一回見ただけで理解できないところも特徴の1つです。(笑)
視聴者の努力も必要となってくるわけですが、作品を理解した先に見えてくる世界観はやはりなんとも言えない素晴らしさを感じるわけです。
映画『TENET テネット』の舞台裏!メイキング映像
究極の映像体験!映画『TENET テネット』特別映像(IMAX®撮影編)
時空を超えた親子愛を描いた壮大な宇宙体験
「インターステラー」(2014年)
出典:「ワーナーブラザース公式サイト」
「インターステラー」は2014年に公開されたSF映画です。徹底的にこだわった設定や映像、音楽、脚本が大きな話題となりました。またIMAXでの上映は、疑似的な宇宙体験だとして多くの映画ファンを唸らせました。第87回アカデミー賞では作曲賞・音響編集賞・録音賞・美術賞の4部門にノミネートされ、「視覚効果賞」を受賞しました。
作品の内容はSF映画によくありがちな人類滅亡の危機を救うために、新たな居住可能な惑星を探すといった内容ですが、世界観の壮大さや緻密な科学的描写、最高レベルの作品であったと言えるでしょう。
個人的にはこの作品がノーラン監督の作品の中で一番のお気に入りです。
なぜこのありがちなあらすじがここまで名作になったのか、深堀していきましょう。
出典:「ワーナーブラザーズ公式Twitter」
まずこの作品においてキーとなってくるものは、「重力」、「相対性理論」、そして「家族愛」です。この作品は最終的に家族愛を描いた作品とも言えます。
あらすじじは地球では地球温暖化などによる異常気象により、砂漠化や作物が枯れる現象が各地で起こります。元宇宙飛行士でトウモロコシ農家のクーパーは、様々な偶然が重なってNASAから要請を受け、宇宙へ行き居住可能な惑星を探しに行くというものです。
まず時間を描いたノーラン監督の作品に共通する点で、作品の序盤からすでにエンディングでの出来事が大きく関与しているという点があります。
このクーパーが宇宙の旅に出るきっかけ(家で起こった超現象や偶然)も、全てを導いたのが未来の自分だったという点です。この手法は「TENET」でも同じような設定でしたよね。
謎が終盤になって解き明かされるのですが、その謎が分かった瞬間に序盤の出来事とエンディングまでのストーリーの内容理解に繋がります。(時間が逆行したり未来と過去が交錯する映画ですので、因果が逆になり少し混乱することはおいておきましょう。)
出典:「ワーナーブラザーズ公式Twitter」
クーパーが終盤にブラックホールに入り、超次元の部屋に入り、重力を使って過去の自分に指示を出すシーンには本当に鳥肌が立ちました。序盤で起こった、書斎での本が落ちてくる超現象を娘のマーフィーが見て、書斎の並べられた本の間に空いた隙間をバイナリ信号に変換して文字に起こしたあの出来事も、全て未来のクーパーが過去の地球にいるクーパーに出した指示だったといわけです。
本当に恐るべしノーラン監督の発想ですね、、、
またこの作品も時間の流れを描いた作品です。
少し科学的なお話になりますが、アインシュタインの相対性理論などによると、面白いことにブラックホールの影響で重力が変動し地球とクーパー達の向かった海の惑星では、時間の流れ方に大きな差異が生じます。
なんと海の惑星の1時間の間に地球では7年間もの月日が流れているわけです。
出典:「Ciatr」
そんな状況で海の惑星で大きな波に巻き込まれてしまい地球での時間を無駄に消費してしまう場面では「終わった、、、」と視聴者の方々は思われたと思います。
海の惑星のまるで壁のような波はかなり怖かったですよね。
「TENET」や「メメント」のように時間自体を操ることがメインの話ではありませんが、クライマックスシーンからわかるように時間がストーリーに大きな影響を与えている作品です。
そして時空を超えた愛の物語であるこの作品のクライマックスは映画史にも残る感動のクライマックスと言えるでしょう。
父と子供の愛がこの作品のテーマになっています。この作品の重要なシーンでもある、ブラックホールの中の超次元の空間のシーンでは、これまでの科学的な描写から少し逸出しした空想的な要素も含んでおり、戸惑った方も多かったのではないでしょうか。
出典:「ワーナーブラザーズ公式Twitter」
クーパーが宇宙に出ている間に、娘のマーフィーはどんどん成長して立派な科学者になります。宇宙にいる父親のことを思い続け必死に研究を続けますが、様々な挫折を経験します。
地球にいる人類が生き残るために、新たな居住可能な場所を見つけなければなりませんが、必要なブラックホールの粒子データが足りない状況でした。
そんな状況で昔超現象が起こった父親の書斎に行けば何かヒントが見つかるかもと思ったマーフィーは昔住んでいた自宅に向かいます。
そこで書斎に父親からもらった腕時計を置くと、針が微動に信号を送っているような動きをしています。これも父親がブラックホールの中の超次元的な部屋から、重力を使い時計の針に振動させ、ブラックホールの粒子データをモールス信号で送っていたのです。
本当に感動的なシーンでしたね。
この場面でノーラン監督は地球を救うきっかけとなる出来事を、科学的な理論や根拠ではなく、「時空を超えた親子の愛」によって帰結させたのです。
出典:「ワーナーブラザーズ公式Twitter」
撮影にも様々な工夫がこなされています。
毎度お馴染みのCGをできるだけ避けるノーラン監督は様々な施策を行いました。
まず冒頭に登場するクーパーの広大なトウモロコシ、あれはなんと実際に撮影のために1からトウモロコシを栽培したのです。
そして大気圏の映像は実際の戦闘機にカメラをつけて撮影を行っています。リアルをこの作品でも追求しています。
海の惑星の撮影はアイスランドまで巨大な宇宙船の模型を持っていきました。
アイスランドでの撮影はかなり寒かったようで、博士役のアン・ハサウェイは過酷な寒さゆえに低体温症に陥るほどでした。
さすがハリウッドといった感じですね。撮影のためにかける費用の桁が違うことがわかります。
また作品の世界観に必要な科学的知見に関しては、ノーベル物理学賞を受賞している理論物理学者のキープ・ソーン氏を科学コンサルタントとして起用しています。
作品の世界観と現実の科学的な理論にズレがないよう、脚本にとことんこだわっています。
工夫したストーリー展開によって、新たに生み出された映像表現!
ノーラン監督による巧みな視点の切り替えを用いた2作品を紹介していきます。
「ダンケルク」(2017)
出典:「ワーナーブラザース公式HP」
「ダンケルク」は2017年に公開されたノーラン監督による戦争映画です。
ノーラン監督初めての事実に基づいた作品になります。第二次世界大戦下、ドイツ軍によってダンケルク海岸に追い詰められた連合軍兵士がイギリスの民間漁船らによって行われた「ダンケルク大撤退」が描かれており、イギリス、オランダ、フランス、アメリカの4か国合同で制作が進められました。アカデミー賞では計8部門にノミネートされ、編集賞、録音賞、音響編集賞を受賞しました。
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ダンケルクでの戦闘は実際に1940年の5月24日から6月4日の間に起こった戦闘です。
この作品を視聴した方は気付かれたかと思いますが、ストーリーが陸、海、空の三つの舞台で展開されていきます。時間の長さが異なる3つの物語が別々で進行していき最終的に全てが交わりクライマックスを迎えるというわけです。
この陸・海・空に分けてストーリー展開を行う手法は映画業界の中でもとても話題になりました。
この映画では多くの印象的なシーンがあったのではないでしょうか。
まず最初に展開されていくのが陸の視点です。
市街戦から始まり主人公の男トミーがダンケルクの海岸まで追いやられ、そこに大量の連合国兵が追いやられている様を目撃します。
出典:「ワーナーブラザース公式Twitter」
このシーンではその兵の人数の多さに驚きましたね。本当にドイツ軍に追い詰めらて緊迫している様子が直に伝わってくるシーンでした。
また多くの視聴者が印象的に思ったシーンの1つに、船内が満水になる緊迫した場面があります。
船に乗って故郷に変えれると思ったのもつかの間、ドイツ軍の魚雷攻撃で船内に海水が一気になだれ込んできたシーンです。この船内からの脱出シーンは息が詰まるような演出であると言えます。
海の視点では悲しいシーンが印象的でした。助桁兵士が船の行き先がダンケルクだということを知り、気が動転して船内にいた少年を押し倒してしまい頭の当たり所が悪く、少年は息絶えてしまいました。
戦争が人間の限界を超えた想像を絶する場所であることを、そのシーン1つで理解できます。またイギリスを出港した漁船たちがダンケルクに到着した時の、連合軍の兵士の喜ぶ様はとても感動的です。
空のシーンでは他シーンと違い、映像として出てくる時間軸(時間)は1時間です。イギリスの海岸からダンケルク救出作戦に駆り出された一般船舶が帰還するまでを描いています。ノーラン監督作品おなじみの俳優、トム・ハーディが演じた空中戦のシーンはすごい迫力でしたね。
出典:「ワーナーブラザース公式Twitter」
これらの映像を撮るうえでもノーラン監督は多くの工夫やこだわりがあります。
まず1つに実際に撤退作戦あった場所フランス北部のダンケルクで撮影が行われました。
そこで登用された兵士のエキストラは1500人!エキストラでこの数は驚きです。
そしてなにより驚いたのが、本物の戦艦や戦闘機を借りて撮影が行われたことです。海での戦闘シーンでは普通ならCGを使うところですが、ノーラン監督おなじみのこだわりから、本物の戦艦が使われました。
そして戦闘機でもノーラン監督のこだわりは健在です。なんと当時実際に使われていた戦闘機やそれに似た戦闘機を使用し、そこにIMAXカメラを取り付けて撮影を行いました。
そのためコックピットからの視点はリアルで非常に迫力があります。
映画『ダンケルク』特別映像(驚異の空撮メイキング編)
『ダンケルク』 メイキング映像
「ダークナイト・シリーズ」(2005年〜2012年)
出典:「Amazon.co.jp」
2000年代の新たなバットマン映画という位置付けされた映画で、ノーラン監督が制作指揮を取ることになりました。
この新たなバットマンとして誕生したノーラン監督のバットマンは全世界で大きな反響を得ることになりました。
これまでバットマンはヒーロー作品としてファミリーで観れる作品として親しまれて来ました。しかしこのノーラン監督のバットマン作品によって一変、ダークでシリアスな表現が多い重い犯罪映画として完成したのです。
少し響きが悪いですが、アメコミ映画の概念を壊し、今まであまり語られることのなかったヒーローの闇に焦点をおき、だれもが触れようとしなかった正義の盲点を突いたのです。
出典:「ワーナーブラザース公式Twitter」
そういったヒーロー映画にありがちなストーリー展開を壊し、人間味あふれるバットマンをノーラン監督お得意のリアルな映像表現によって新たなバットマンが作られたのです。
人間をありのままに表現されているところも評価出来るポイントです。
「ダークナイト」のハービーデントが最愛の人の死によって、善人から平気で極悪人に変わってしまう様は、現実世界でも起こりうる人間のありのままの要素をうまくアメコミ映画の世界観に入れ込んだと言えるでしょう。
出典:「ワーナーブラザース公式Twitter」
ノーラン監督がバットマンというキャラクターの特徴をしっかり掴み、ストーリーにしっかり反映されているのも見どころです。
バットマン自体はスーパーマンなどと違い、中身は超能力も何もない人間です。見えよく的なガジェットや鍛え上げられた肉体と精神によってバットマンは成っています。
1作目の「バットマン・ビギンズ」はバットマンが生まれた過程を描いていますが、そこでもいかに人間的な要素が強いか伺えると思います。
出典:「ワーナーブラザース公式Twitter」
いつも通り撮影も本気です。
巷でも話題になりましたが、「ダークナイト」のトレーラーが横転するシーンやジョーカーが病院を爆発するシーンも、全て本物のセットを使っています。細かなCGは使われいているものの、なるべきCGに頼らずに撮影することであれだけの壮大な映像作品が作れるのです。
病院の爆発シーンでは、ジョーカー演じるヒースレジャーがボタンが反応せず焦って推し続けている演技も、あれは完全にアドリブで俳優が素で焦っている仕草がとても良かったので急遽映像に追加されることになったそうです。
もしノーラン監督のバットマン作品に興味を持った方はこちらの記事も参考にしてみてください!
【2022年新作公開】バットマン映画シリーズはこの順番で観るべし!
夢、時制、記憶という精神的な世界観を映像で表現!
インセプション (2010年)
引用元:「ワーナー・ブラザース公式サイト」
最後に紹介するのは名作「インセプション」です。
第83回アカデミー賞では計8部門にノミネートされ、撮影賞、視覚効果賞、音響編集賞、音響録音賞 と技術系の4部門を受賞しました。
人の夢の中に入って話が繰り広げられるという設定の中で、表現される映像はとても刺激的でした。またビルや大きな道が大胆に変形したり、あるはずもない物がそこに存在する斬新な映像は当時大きな話題になりました。
出典:「ワーナーブラザース公式Twitter」
この作品もノーラン監督ならではの複雑さがあります。作品内のルールや設定を理解してからの方が楽しめるという点では「TENET」と似ています。
この作品では夢が大きなキーとなってきます。
第一階層の夢の世界で夢を見ると第二階層へ、第二階層の夢の世界で夢を見ると第三階層へというように、深い階層になるほど時間の経過が遅くなっていきます。そして夢から覚めさせるには、夢の中で死亡するか「キック」と呼ばれる平衡感覚を第三者によって崩すことで眠りから覚ますことができます。(水に体を投じる、高い所から落ちるなど)
この作品を観ると、作品内容は様々な大きな企業や組織が絡んだ壮大な設定に見えるのですが、ロールプレイングのようにも見えてくるのがポイントです。
共有する夢のホストを担う「ドリーマー」、共有する夢の設計や建築をする「設計士」、夢の世界を安定させる「調合士」、そしてターゲットとなる人の思考を誘導する「偽装士」。チームでそれぞれが役割を持ち、目的達成のために働きます。
出典:「ワーナーブラザース公式Twitter」
このように夢での出来事をめぐり物語が進行していきます。
夢や時制、記憶といったように有体的でないものをメインに描くため、自由な表現が可能となります。
まず視聴者が印象的に思うシーンは、夢の中でパリのような街並みがキューブ状に折りたたむシーンでしょう。夢の中では設計士によって自由に想像することができ、夢の創造性を映像表現で壮大に描いているのが魅力的です。
時間の遅延性にも触れておくべき要素と言えるでしょう。
「インターステラー」でも相対性理論による時間の遅延性に触れていましたね。
このインセプションにおいても時間の遅延性が夢の階層によって生じてくるのが実に面白いポイントでもあります。
出典:「ワーナーブラザース公式Twitter」
夢の中での時間経過は現実の約20倍も遅く、1層目では現実での10時間が1週間、2層目では6ヶ月、3層目では10年となり、深くなるほどに時間経過が遅くなるのです。そして、夢の中へ深く深く潜り込んでいった先でたどり着くのが「虚無」です。ここまで来てしまうと現実に戻っても心は戻って来ず、精神が迷子になってしまいます。
少し怖いですが「TENET」にもあった「自分の姿を向かいの部屋で観てから、逆光装置の中に入らないといけない」というよう、時間という迷宮の世界に触れる作品であるが故の設定です。
やはりノーラン監督自身も構想に約20年を費やしていることから、設定やラストシーンはかなり難解でしたね。ラストシーンのコマについても様々な解説が飛び交っている状態です。
撮影は最初のシーンの東京から始まりました。車両がすれ違う新幹線のシーンは静岡県の富士川で撮影されました。渡辺謙とディカプリオの演技も素晴らしかったですね。
出典:「ワーナーブラザース公式Twitter」
「TENET」と同じように、かなり難易度の高い作品のため、何度も観ることをお勧めします。
またノーラン監督の作品の雰囲気を引き立てる存在として、劇中の音楽があります。ハンスジマーは長年ノーラン監督とタッグを組んで音楽を提供しています。
「インセプション」のみならず上記で紹介した「インターステラー」や「ダークナイトシリーズ」、「ダンケルク」の劇中音楽を担当しています。
是非、「音」にも注目して、ノーラン監督の作品を楽しんで欲しいと思います!
クリストファー・ノーラン監督の作品を楽しもう
いかがでしたでしょうか。
ノーラン監督の作品を一挙に深堀させていただきました。
作品に新たな発見が生まれたら幸いです。
この記事を読んで、何度もノーラン監督の作品を楽しみましょう!