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時候の挨拶とは?
時候の挨拶と聞いて、どんなものかピンとくるでしょうか。時候の挨拶とは、簡単に言うと「季節の挨拶」のことを表します。春夏秋冬それぞれの季節を大事に思う、日本の文化が関係していると言われています。
手紙や文書などを送るときに、用件となる内容の前に時候の挨拶を入れるのが一般的です。また、それぞれの季節や気象に合わせることがマナーとなっています。
各月の時候の挨拶と結びの例文12個
では、それぞれの月に合った時候の挨拶や結びはどんなものがあるのでしょうか。ここからは、12ヶ月それぞれに合った時候の挨拶と結びの例文をご紹介していきます。
ぜひ参考にしてみてください。
1月
まずは1月からです。1月は、新年の挨拶や、続く厳しい寒さ、少しだけ感じられる春などを表す季語を用いるのがおすすめです。
5〜15日頃までの小寒と呼ばれる時期には「小寒の候」「寒の入りと共に寒さも一段と厳しくなってまいりましたが」などの時候の挨拶が使われます。
20日〜2月3日頃までは「大寒」と呼ばれ、「大寒の候」「大寒に入り、日ごとに寒さが厳しく~」などを利用します。
「厳寒の候」「寒風の候」「寒さ厳しき候」などは小寒〜大寒まで共通して利用でき、便利です。
結びでは「寒さはこれからが本番となってまいります。どうぞご自愛くださいませ。」「時節柄、皆様のご無事息災をお祈り申し上げます。」などが一般的です。
2月
2月は、暦の上では春とされますが、実際には寒い時期と言われています。「余寒」「春寒」「残寒」などの季語を使用します。2月下旬になったら、「立春」を使い、春を表現するのがおすすめです。
結びでは、「底冷えのする日々が続きますので、風邪など引かれませんようご自愛ください。」や「良き春をお迎えになりますようお祈り申し上げます。」などと表現します。
3月
季節柄、3月はまだまだ寒さが続く季節ですが、暦の上では春となります。したがって、時候の挨拶も春めいたものになってきます。「春雪」「早春」「春暖」など、雪が溶け始め、次第に春が顔を出す様子が伺える季語が使用されるでしょう。
結びでは、「寒暖定まらぬ時期ですので、風邪など召されぬようご自愛ください。」「花冷えの候、どうぞくれぐれもご自愛ください。」など、寒暖の差が激しい季節に体調を気遣う言葉で結ぶのが丁寧です。
4月
日本では、4月は入学式や入社式、学校の始まりなど、「始まり」の行事が多くあります。そんなスタートの多い4月には、応援や激励の書き出しが最適です。
たとえば、「陽春の候」は温かな春の空気に包まれた春の時候を表し、4月中は日にちを選ばず使うことができます。
ビジネスの場合は、「陽春の候、皆様におかれましてはますますご清栄のこととお慶び申し上げます。〜桜花爛漫の好季節、一層のご活躍のほどをお祈りいたします。」などと表現します。
プライベートなど、少しくだけたやりとりであれば、「春爛漫の好季節を迎え、お健やかにお過ごしのことと存じます。〜そちらの花便りもお聞かせください。」などのおしゃれな表現も可能です。
5月
5月になると、春の空気も終わりを迎え、だんだんと夏の香りが漂い始めます。暑さを感じる日もあり、青葉も顔を出し、新緑の季節となるでしょう。
「拝啓 青葉の候、貴社ますますご発展のこととお慶び申し上げます。〜晩春の季節、社員皆々様には一層のご健勝を心よりお祈りいたします。」ビジネスでのやりとりでは、このような使われ方が多く見られます。
6月
6月は暦の上では既に夏です。初夏を感じる日もあれば、梅雨の長雨が続くこともあるため、雨や天気に関する季語を使うのがおすすめです。
「梅雨の候、いかがお過ごしでしょうか。〜梅雨明けが長引いていますが、風邪などお召しにならぬよう、ご自愛ください。」などが良いでしょう。
また、6月は紫陽花の見頃を迎えることから、「紫陽花が色づき始めましたが〜。」などの書き出しもよく使われます。
7月
7月は、もっとも暑さが厳しいことから「盛夏」「猛暑」などの季語を使うと良いでしょう。「大暑の候、皆様お変わりなくお過ごしでしょうか。〜炎暑の毎日ですが、どうかお体を大切になさってください。」などの表現がおすすめです。
また、暑中見舞いの時期でもあり、セミや花火、ひまわり、入道雲など季節感のある言葉が多く使われます。
8月
8月を迎えると、暑い夏も終わりを迎え、少しだけ秋が顔を覗かせます。この時期に使われる季語や言葉として「立秋」「納涼」「残暑」などが挙げられるでしょう。
「立秋の候、皆様ますますご健勝のこととお慶び申し上げます。〜暑さ厳しき折、皆様方のご無事息災を心よりお祈りいたします。」
「朝夕は、虫の音が聞こえるようになりましたが、お元気でいらっしゃいますか。〜夏バテなどなさいませんように、ご自愛のほどお祈り申し上げます。」など秋めいた表現が使われ始めます。
9月
9月になると、一気に秋めいていきます。この時期には「初秋の候」「清涼の候」などから書き出すと良いでしょう。
「初秋の候、皆様ご清祥にお過ごしのこととお喜び申し上げます。〜季節の変わり目、どうかお体を大切になさってください。」などとすると、とても親切です。
10月
10月は本格的に秋が深まるシーズンです。主に「秋涼」「紅葉」「秋麗」などの季語を使い、季節感を表現します。
「清秋の候、お元気でお過ごしのことと存じます。〜紅葉の美しい季節となりました。どうかお体を大切になさってください。」
幼稚園や町内会の運動会が行われる季節でもあり、手紙やメールの送信、やりとりが増える地域もあるでしょう。
11月
11月にもなるとそろそろ秋も終わりを告げます。この時期に活用できる季語に「晩秋」「向寒」などが挙げられます。
「深秋の候、貴社ますますご発展のこととお慶び申し上げます。〜向寒のみぎり、皆様のご健康を心よりお祈り申し上げます。」など、季節が秋から冬へと移り変わるシーズンを表す言葉が良いでしょう。
12月
いよいよ12月です。クリスマスや年末など、イベントが多いこの月には、寒さが本格化します。ぴったりの季語には「師走」「初雪」「初冬」などがあり、個人法人共に手紙やメールなどのやりとりが増える時期でもあります。
「師走に入り、慌ただしくなってきましたが、いかがお過ごしでしょうか。〜ご多用な歳末のみぎり、お身体にお気をつけて良き新年をお迎えください。」など、年末の忙しさによる体調への配慮などが多く見られます。
時候の挨拶を手紙で書く方法と構成の決まり
ここからは、時候の挨拶を手紙で書く方法と構成の決まりについてご紹介していきます。まず手紙の最初には頭語と呼ばれる挨拶が使われます。一例を挙げると「拝啓」「謹啓」などが当てはまり、一般に言う「こんにちは」の意味に当たるとされています。
また、手紙の結びには結語と呼ばれる挨拶を使用します。たとえば「敬具」「謹白」などがあり、「さようなら」の意味に当たります。
以下で書き方の例文をご紹介します。
「拝啓 時下ますますご清祥のこととお喜び申し上げます。〜時節柄、何卒ご自愛ください。敬具」
以上のように、頭語、時候の挨拶、本文、結びの言葉、結語という流れになるように構成するのがマナーとされています。
時候の挨拶を書く上で知っておきたい二十四節気
二十四節気と言われて、どのようなものかピンとくるでしょうか。二十四節気とは、古代中国が発祥とされている、季節の移り変わりのことです。春分や夏至、秋分、冬至などと言うとわかりやすいでしょう。
古代の中国と現在の日本では、季節に1〜2ヶ月程度のズレが生じるため、二十四節気と私たちが実際に感じる季節には差があるのが特徴です。
たとえば、暦上は秋となる立秋は8月上旬ですが、実際の8月上旬は猛暑が続く真夏です。手紙やメールのやりとりで使われる季語も、ひまわりや蝉などが多いでしょうが、二十四節気では秋となるのです。
時候の挨拶を書くときの注意点
では、時候の挨拶を書くときにはどのようなことに注意するべきなのでしょうか。
ここからは時候の挨拶を書くときの注意点を2つのパターンにわけてご紹介していきます。
日本では特に大切にされている季節の挨拶を、正しく使えるように知識をつけましょう。
ビジネスで時候の挨拶を使う場合
まずはビジネスで時候の挨拶を使う場合です。
ビジネスで時候の挨拶を用いる場合は、「〇〇の候」という歴史ある挨拶のみだと、少々事務的なイメージを与えてしまいがちです。型にはまらず、ご自身が感じる季節感を言葉にして、表現するように心がけましょう。
お詫びやお見舞いで時候の挨拶を使う場合
また、お詫びやお見舞いで時候の挨拶を使う場合にも注意が必要です。
まず、お詫びの場合です。お詫びの手紙やメールでは、時候の挨拶は使いません。直接本題に入りましょう。お詫びの場合は、何よりも先に「申し訳ない」という謝罪の言葉を伝えることが重要です。
次にお見舞いの場合です。お見舞いの場合は、何よりも相手の体調を気遣う言葉が重要になってきます。受取手の病状や容体、被害の大きさなどに合わせて、時候の挨拶は省略することがあります。
時候の挨拶を知り季節感のある手紙を書こう
いかがでしたでしょうか。時候の挨拶は、手紙やメールに取り入れるだけで、相手に季節や気遣いを感じさせることができる素敵な文化です。
コロナ禍でなかなか人と会うことが難しい今こそ、季節感のある手紙でコミュニケーションを取ってみましょう。