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遵守(じゅんしゅ)の言葉の意味とは?
「遵守」や「順守」という言葉をよく目にしますが、この2つは同じ意味でも少しの差があります。まず遵守とはどのような意味を持つのでしょうか?
遵守の「遵」の字を見ると「尊い」には「相手を敬う」、部首の「しんにょう」には「進む」という意味があることから、遵守には『相手を敬って原則を厳しく守る』という意味があることがわかります。
「遵」の読み方を調べると音読みは「じゅん」です。訓読みでは「したがう」と記述してありますが、通常の場で使われることはありません。また同じような言葉に「尊守(そんしゅ)」がありますが「遵守」とは意味が全く異なります。
間違えやすい遵守と順守の基本的な違い
遵守は『相手を敬って原則を厳しく守る』という意味を持ちます。順守も『原則を守る』という同じ意味があるのですが、意味の捉え方が少し異なります。
順守の「順」には「率直な」という意味がありますので「順守」は「率直に決まりごとを守る」という内容となり、遵守ほど厳格でなく少し柔らかい印象です。ちなみに「順」の読み方も音読みは「じゅん」訓読みは「したがう」です。
遵守は「厳格に原則を守らなくてはならない」順守は「率直に原則を守る」という意味であることがわかります。
遵守と順守が混在している要因
「遵守」と「順守」は色々な場所で使われていますが、なぜ2つの言葉を併用することになったのでしょうか。
もともと遵守が使用されることが一般的でしたが、当用漢字から常用漢字へ切り替わるタイミングで「順守」に言い換えられるようになりました。これらについて詳しく見ていきましょう。
遵の漢字に代わって順を使用したため
昭和29年3月15日に国語審議会で当用漢字表審議報告が開催されました。当用漢字表にある28の漢字の除外が検討されましたが、28の除外候補の中に「遵」も指定されていたのです。
そこで、新聞などのメディア団体である日本新聞協会が「遵」の代わりに「順」を適用することを決めました。以後「遵」から「順」へ代用されます。
遵は削除されず当用漢字として残ったため
当用漢字表の除外漢字の候補だった「遵」ですが結局はそのまま使われることになり、現在でも日常的に使われています。
一方で新聞などのメディアでは今まで通り「順」を使用し続けている実情があります。このような経緯があって2つの言葉が存在しています。
「遵守」と「順守」の類語として使われる3つの言葉
日本語には「遵守」と「順守」のように「原則を守る」という意味を持つ類語が他にもあります。それぞれ同じような意味を持つため紛らわしいですが、少しずつニュアンスの差があります。間違いやすい言葉ですので、この機会に改めて確認しましょう。
1:従順
「従順」には「率直に意見を受け入れる」といった意味があり「従順」の「順」には「素直、相手のお願いや意見に従う」という意味合いがあることから、順守と同じ内容であることがわかります。
「従順」は順守の類語と認識しておいて良いでしょう。
2:厳守
次に「厳守」には「厳しく原則を守る」という意味があります。命令を固く守るという意味が遵守と一致することから「厳守」は遵守の類語とされています。
しかし「法律を遵守する」「道路交通法を遵守する」という言い方があっても「法律を厳守する」「道路交通法による法定速度を厳守する」とはあまり耳にしません。厳格な命令などを守るときには遵守で、それ以外は厳守といった印象です。
例えば、法律関係や利用規約、倫理モラルなどの道徳的な規範には遵守、それ以外の約束やマナー、ルールを守るときなどには厳守を使うことが自然です。
3:遵行
「遵行」は遵守と順守の同義語に該当します。「じゅんぎょう」と読むのが一般的ですが他の読み方に「じゅんこう」があります。
「遵行」は「命令や人の指示に従う」という意味を持ちます。「原則を守る」という意味を持つ遵守や順守と共通する部分があります。
似たような言葉に「適応」や「コンプライアンス」があげられます。
遵守と順守を使い分ける4つの方法
遵守と順守は様々なシーンで活用される言葉です。それぞれの意味やニュアンスの違いから、的確な場所で使用しなければなりません。
例えば、契約書や公文書などでは「遵守」、それ以外の新聞テレビなどメディアなどでは「順守」です。具体的に以下の4つのパターンを解説いたします。
1:ビジネス以外で使う場合
ビジネス以外の目的では結論からいうと「遵守」と「順守」どちらを使用しても良いでしょう。自分の趣味や個人間での契約の場面では「順守」を使用しても問題にはなりません。
最近流行りのSNSなどに投稿するときは、必ず「遵守」とか「順守」などと決めてしまわず、その場に応じて臨機応変に対応することが大切です。
2:契約書で使う場合
契約書とは企業が契約を締結させるために必要な書類です。お互いが円滑に契約を進めて意思表示の合意を証明する大切な書類のため「遵守」を使います。
ビジネスの場では契約書の作成は避けて通れず、口頭での契約だとトラブルや問題を招きかねません。ただし、ビジネス以外の契約書で違約条項や損害賠償などの可能性がない場合は「順守」でも良いでしょう。
3:公用文で使う場合
国などの行政機関では公用文の取り扱いがあります。決められた命令に従って正しく作成しなくてはならないため「遵守」を使います。
学校の教科書やその他の公的な文書にも「遵守」が使われていて、公用文の表記が一定の基準に準拠することがとても重要だということがわかります。公文書は内容や文言だけでなく保存も厳重に管理されています。
4:新聞で使う場合
新聞や雑誌では「順守」が使われています。テレビでも「順守」という文字を見ることがあるのではないでしょうか。
「遵」が当用漢字表の削除候補に指定されたとき「順」を代用したのは日本新聞協会でした。国語審議会で「順守」が作られて4月に差し替えがあってから、現在まで表記を続けています。
遵守を使うときの注意点
「遵守」を使うときは、そのものが法律や道徳上でどのぐらい重要なのか考えることが大切です。自分で状況を踏まえて判断しなければなりません。
コンプライアンスで法律や社会的規範、社内規定など重要視する会社がありますが、この場合も「遵守」「順守」は会社の選択です。
また遵守も順守も「じゅんしゅ」と読みますので、電話など口頭で相手とやり取りするときはどちらの「じゅんしゅ」なのか留意しましょう。
遵守の意味や使い方を理解しよう
遵守の意味や使い方、順守との違いなどについて解説しましたが、同じ言葉で同じ意味でも使い分けが必要です。厳重に原則を守らなくてはならないときは「遵守」、そうでない場合や個人の責任の範囲内では「順守」と状況に応じて対応しましょう。
言葉の使い方など社会で役立つ知識を習得してビジネスマナーに活かしましょう。