数多存在するミステリー小説のなかでも、圧倒的な人気とシェアを誇るジャンル「どんでん返し」。
「どんでん返し」の名著は、どんなに結末を予想しながら読んでも最後に必ず「騙された!」という快感を味わわせてくれます。
今回は、伏線回収が衝撃的な「2度読みたくなる」ミステリー小説をランキング形式でご紹介します。
「文庫本が読みたい」という方向けに、文庫化済み作品には横に(★)印をつけておりますので、是非参考にしてください。
目次[ 表示 ]
- どんでん返しミステリーとは?騙される快感を味わおう!
- どんでん返しミステリーランキング!伏線回収がすごい作品はどれ?
- 1.『そして誰もいなくなった』/アガサ・クリスティー★
- 2.『不連続殺人事件』/坂口安吾★
- 3.『アリアドネの声』/井上真偽
- 4.『好きです、死んでください』/中村あき
- 5.『medium 霊媒探偵城塚翡翠 』/相沢沙呼★
- 6.『殺戮にいたる病』/我孫子武丸★
- 7.『容疑者Xの献身』/東野圭吾★
- 8.『白ゆき姫殺人事件』/湊かなえ★
- 9.『葉桜の季節に君を想うということ』/歌野晶午★
- 10.『同姓同名』/下村淳史★
- 11.『弁護側の証人』/小泉喜美子★
- 12.『新装版 星降り山荘の殺人』/倉知淳★
- 13.『カラスの親指』/道尾秀介★
- 14.『慟哭』/貫井徳郎★
- 15.『方舟』/夕木春央
- 16.『悪いものが、来ませんように』/芦沢央★
- 17.『十角館の殺人』/綾辻行人★
- 18.『六人の嘘つきな大学生』/浅倉秋成★
- 19.『灰かぶりの夕海』/市川憂人
- 20.『ハサミ男』/殊能将之★
- 21.『花束は毒』/織守きょうや★
- 22.『レモンと殺人鬼』/くわがきあゆ★
- ドキドキが止まらない!衝撃のラストまで一気に駆け抜けろ!
どんでん返しミステリーとは?騙される快感を味わおう!
書店や広告などでよく目にする単語、「どんでん返し」。
ミステリー小説でいう「どんでん返し」とは、結末に読者の予測を裏切るような事件の真相が明かされる作品を指します。
「どんでん返し」ミステリーを読むとき、読者は作者との推理ゲームを楽しみながら読み進め、結末で「f騙された!」という快感を楽しむのです。
「叙述トリック」と呼ばれる、先入観を利用して読者をミスリードに導くミステリー小説のテクニックともよく併用されます。
「どんでん返し」の特徴は、本文中に必ず結末までの伏線が張り巡らされている、という点です。(ちなみに、この伏線がない場合は「バカミス」という別ジャンルに分類されます。)
そのため、衝撃的な結末を目にした読者は「あの台詞(描写)はこういうことだったのか!」と、もう1度読み返したくなるのです。
ネタバレ厳禁。是非、作者との頭脳戦・心理戦に挑んでみてください。
どんでん返しミステリーランキング!伏線回収がすごい作品はどれ?
1.『そして誰もいなくなった』/アガサ・クリスティー★
※引用元:Amazon
あらすじ
孤島に招かれた、年齢も職業も異なる10人の男女。
しかし島に招待主の姿はなく、夕食の席上で彼らの過去の犯罪を暴きたてる謎の声が響く。
やがてマザーグースの不気味な童話の歌詞通りに1人ずつ殺害されていき、そして誰もいなくなった…。
クローズドサークルの代表作!あなたは真相を見破れるか?
クローズドサークル(孤島ミステリ)といえば、本作『そして誰もいなくなった』。
外部との出入りが不可能な状況下であれば連続殺人の結果必然的に殺人犯が1人残るはずですが、本作では全員が殺されてしまいます。
ラストでは警察の操作が迷宮入りとなった後、真犯人による独白手記が見つかり、衝撃の真相が明かされます。
果たしてあなたは、この事件の真相を見破れるでしょうか?
是非「ミステリーの女王」の仕掛けた謎に挑戦してみてください。
- 著者
- アガサ・クリスティー著/青木久惠訳
- 出版社
- 早川書房
- ページ数
- 387頁
- 価格(税込)
- 1,034円
2.『不連続殺人事件』/坂口安吾★
※引用元:Amazon
あらすじ
詩人・歌川和馬の招待により、山奥の豪邸に集められた作家たちをはじめとする複数の男女。
邸内が異常な雰囲気に包まれる中、ひとりが殺されると連鎖的に死体が生みだされていき、遂に恐るべき殺人事件は8件に及んだ…。
賞金付き「読者への挑戦状」!江戸川乱歩も騙した謎が解けるか?
『堕落論』で著名な文豪・坂口安吾のミステリー小説『不連続殺人事件』は連載当時賞金付きで読者に犯人当てゲームを挑んだことにより、一躍話題となりました。
安吾の原稿料が賞金として提示されており、江戸川乱歩も参加しましたが、残念ながら不正解。
大井廣介他3人の一般読者が正解し、一等が物理学校の生徒であったことが発表されています。
作品全体の異様な世界観によって通常よりもトリックを見抜くのを困難にする「叙述トリック」と、予想外の真相が明かされる「どんでん返し」が合わさった名作です。
ネタバレ厳禁。是非、坂口安吾に挑戦してみてください。
- 著者
- 坂口安吾
- 出版社
- KADOKAWA
- ページ数
- 336頁
- 価格(税込)
- 572円
3.『アリアドネの声』/井上真偽
※引用元:Amazon
あらすじ
救えるはずの事故で兄を亡くし、贖罪の気持ちから休園災害ドローンを制作するベンチャー企業に就職したハルオは、業務の一環で訪れた障碍者支援都市「WANOKUNI」で巨大地震に遭遇する。
殆どの人が避難するなか、「見えない、聞こえない、話せない」という3つの障碍をかかえた、街のアイドル・中川博美だけが地下の危険地帯に取り残されてしまう。
およそ6時間後には安全地帯との経路も断たれてしまうという状況の中、ハルオは1台のドローンのみを用いて博美をシェルターへ誘導しようと試みる…。
大人気ドラマ『探偵が早すぎる』の原作者が仕掛ける、想像を超えたどんでん返しミステリー!
本作『アリアドネの声』の著者・井上真偽は、ドラマ化された人気ミステリー小説『探偵が早すぎる』や「本格ミステリ・ベスト10」で1位に輝いた『その可能性はすでに考えた』シリーズを手掛けた、今をときめく大人気作家です。
東京大学工学部という出身大学を思わせるような緻密なトリックが得意で、最近はサスペンス要素も絡んだミステリーにも裾野を広げています。
作風が似ているため、綾辻行人や島田荘司が好きな方におすすめです。
- 著者
- 井上真偽
- 出版社
- 幻冬舎
- ページ数
- 304頁
- 価格(税込)
- 1,760円
4.『好きです、死んでください』/中村あき
※引用元:Amazon
あらすじ
恋愛リアリティーショー「クローズド・カップル」の撮影のために無人島のコテージに集められた、俳優、小説家、グラビアアイドルなど様々な業種の男女。
閉ざされた空間で交流を深めていく彼らであったが、撮影期間中、キャストである人気女優・松浦花火が死体となって発見された。
遺体の発見現場は密室で、撮影の舞台である無人島にはキャストやスタッフを合わせてたったの8人。
一体、誰がどうやって花火を殺したのか…?
クローズド・サークル×密室殺人×連続殺人×作中作×どんでん返し!
昨年9月に刊行されるや否や、たちまち話題となった傑作ミステリー小説『好きです、死んでください』。
クローズド・サークルに密室殺人、連続殺人に作中作、そしてどんでん返しという盛沢山の作品ですが、本作の本質はそこではなく、むしろそのテーマ性にあります。
「恋愛リアリティーショーでなければならなかった」と言われる本作では、まさに恋愛リアリティーショーならでは!という伏線回収と、男女関係の愛憎劇が楽しめるのです。
どこまでが仕込みでどこからが本当なのか…。『匣の中の失楽』のような混乱が好きな方におすすめです。
- 著者
- 中村あき
- 出版社
- 双葉社
- ページ数
- 1,980円
- 価格(税込)
- 352頁
5.『medium 霊媒探偵城塚翡翠 』/相沢沙呼★
※引用元:Amazon
あらすじ
推理作家の香月史郎は、「夢枕に女が立つ」という大学時代の後輩・倉持結花とともに、死者が見えるという霊媒師・城塚翡翠のもとへ向かう。
しかし、後日香月史郎と城塚翡翠が共に結花のもとへ向かうと、彼女は自宅アパートで血を流して死んでいた。
香月は霊媒師の能力を活かして犯人を探すという城塚とともに、結花を殺害した犯人を推理していくが…。
どんでん返しからのどんでん返し!「見抜いた」と慢心した瞬間、罠にハマります
「マツリカ」シリーズなど、日常系ミステリーを数多く手がけ、「日常系ミステリーの巨匠」とうたわれた相沢沙呼が初めて本格ミステリーへ挑んだ「城塚翡翠」シリーズ。
発売するや否や瞬く間に大ベストセラーとなり、翌年にはドラマ化まで実現されました。
そんな「城塚翡翠」シリーズの面白さは、なんといってもトリックの緻密さ。
必ず本文中に結末の伏線が張り巡らされており、真相のヒントが全て読者の目に晒されています。
しかし、絶対に真相にはたどり着けず、読者は著者と城塚翡翠に騙されることでしょう。
最初のどんでん返しを見抜き、「正体見たり」と慢心したミステリファンのあなたこそ、どっぷりと相沢沙呼の罠にハマってしまっているのです。
- 著者
- 相沢沙呼
- 出版社
- 講談社
- ページ数
- 386頁
- 価格(税込)
- 990円
6.『殺戮にいたる病』/我孫子武丸★
※引用元:Amazon
あらすじ
永遠の愛を掴みたいと願った男・蒲生稔は、東京の繁華街で次々と猟奇的殺人を重ねていく。
恐るべき殺人者の行動と、その魂の軌跡をなぞる…。
衝撃のラスト…だけじゃない!日本ミステリ界の歴史に名を刻んだ名作ミステリー
本作『殺戮にいたる病』は叙述ミステリーの傑作として知られ、その衝撃のラストには必ずと言っていいほど騙されてしまう、というほど精巧な作品になっています。
また衝撃のラストや叙述トリックだけでなく、本作は冒頭からラストまで非常に鮮烈な描写が魅力的で、リアルすぎる殺害描写は最早「美しい」という形容詞がつくほど。
グロテスクな描写が苦手な方にはあまりおすすめできませんが、ミステリー好きの方やサイコホラー好きの方には是非1度読んでみてほしい作品です。
- 著者
- 我孫子武丸
- 出版社
- 講談社
- ページ数
- 368頁
- 価格(税込)
- 847円
7.『容疑者Xの献身』/東野圭吾★
※引用元:Amazon
あらすじ
天才数学者でありながら不遇な日々を送っていた高校教師の石神は、1人娘の美里と暮らす隣人の花岡靖子に淡い恋心を抱いていた。
ところがある日、靖子と美里は金の無心のために訪れてきた前夫を殺害してしまう。
呆然とする母娘を救うため、石神は完全犯罪を企てるが、皮肉にも帝都大学時代同期であった親友の物理学者・湯川学が事件に挑むことになり…。
東野圭吾読者人気ランキング第1位!直木賞を受賞した大ベストセラー
最早日本を代表するミステリー作家と言っても過言ではないほどの超人気作家・東野圭吾ですが、そんな彼の作品の中でも、ファンの中で特に人気の高い作品が本作『容疑者Xの献身』です。
「ガリレオシリーズ」の3作目にあたりますが、本シリーズはどの順番から読んでも問題なく楽しめるため、東野圭吾入門にもおすすめです。
刊行当時ミステリーランキングを総なめし、更に直木賞まで受賞した本作が名作であることに疑いの余地はありませんが、衝撃のラストはまさにミステリ界に輝く名シーンと言えるでしょう。
映画で本作を観たという方も、是非東野圭吾の筆による心理描写を味わってみてください。
- 著者
- 東野圭吾
- 出版社
- 文藝春秋
- ページ数
- 394頁
- 価格(税込)
- 803円
8.『白ゆき姫殺人事件』/湊かなえ★
※引用元:Amazon
あらすじ
化粧品会社の美人社員が殺害された事件。容疑者は同僚である。
ネットでは様々な憶測が飛び交い、週刊誌は無責任な情報を流し続ける。
噂の矛先は、一体誰にその刃を向けるのか…。
「イヤミスの女王」湊かなえワールド全開!全く新しい形のミステリー。
本作は作品の約半分が添付資料という、他に類を見ない全く新しいミステリー小説です。
週刊誌の記事やTwitterのページなど、非常に作りこまれた資料が作品の世界観を作り上げているのですが、それらが「イヤミスの女王」と呼ばれる湊かなえの作風と非常にマッチしており、非常にリアルで「人間」が鮮やかに描き出されています。
本作のポイントとなっているのが、事件に関する1人称視点での語り口が少ない、という点です。
通常のミステリー小説では、登場人物の1人称視点から事件が語られますが、本作では上記の通り、「週刊誌」や「Twitter」といった、事件とは全く関係のない「第3者」の視点から事件が語られます。
当事者から見た事件と他人から見た事件の乖離、そして自分の思う自分と他者から見た自分の乖離…。
あなたはこの「イヤ~な感じ」に耐えられますか?
- 著者
- 湊かなえ
- 出版社
- 集英社
- ページ数
- 320頁
- 価格(税込)
- 726円
9.『葉桜の季節に君を想うということ』/歌野晶午★
※引用元:Amazon
あらすじ
「何でもやってやろう屋」を自称する元私立探偵の成瀬将虎。
その名の通り、ガードマンやパソコン講師までなんでもこなす彼は、同じフィットネスクラブに通う愛子から悪質な霊感商法に関する相談を受け、調査に乗り出す。
そんな折、将虎は自殺を図ろうとしていた女性・麻宮さくらと運命の出会いを果たし…。
第4回本格ミステリ大賞受賞!計算された世界観の中で繰り広げられる、「恋愛活劇ミステリー」
本作『葉桜の季節に君を想うということ』はどんでん返しミステリーの代表作として知られ、将虎とさくらの恋愛模様で読者を惹きつけながら、本格ミステリ大賞を受賞するほど作りこまれた本格派の作品です。
「最後の1行」が特に推されていますが、そこだけでなく、その1行に行き着くまでの作品全体の作りこみが非常に精巧で、読者の心を離しません。
寝る前に読む際はご注意を。面白すぎて一気読みしてしまうため、眠れなくなってしまう可能性があります。
- 著者
- 歌野晶午
- 出版社
- 文藝春秋
- ページ数
- 480頁
- 価格(税込)
- 902円
10.『同姓同名』/下村淳史★
※引用元:Amazon
あらすじ
日本中が悲しみと怒りに駆られた女児惨殺事件の犯人が捕まった。
週刊誌が暴露した犯人の名前は、「大山正紀」。
プロサッカー選手を目指す高校生・大山正紀は、いつかスタジアムに自分の名が轟くのを夢見て練習に励んでいたが、この報道を機に、人生が狂い始める…。
犯人は最初から判明している。「大山正紀」が、犯人である。
「もし日本中が憎む凶悪殺人犯が、自分と同姓同名だったら」と考えたことはありますか?
本作では、凶悪な犯罪を犯した「大山正紀」が逮捕されたことをきっかけに、不幸にも殺人犯と同姓同名となってしまった”名もなき”「大山正紀」たちの人生が狂いだしていく様子が描かれます。
登場人物は全員同姓同名。そのため、犯人の名前も「大山正紀」です。
では、一体どの「大山正紀」なのか…?
是非上質な”混乱”を味わってみてください。
- 著者
- 下村敦史
- 出版社
- 幻冬舎
- ページ数
- 428頁
- 価格(税込)
- 913円
11.『弁護側の証人』/小泉喜美子★
※引用元:Amazon
あらすじ
財閥の放蕩息子に見初められ、結婚した蓮子。
慣れない結婚生活に次第に息苦しさが増してきた折、財閥当主が殺害される。
容疑者は1審で死刑判決が下されたが…。
まさに不朽の名作!日本ミステリ史に燦然と輝く「どんでん返し」。
本作は1963年に刊行されて以降、60年という月日を物ともせず、日本のミステリ界に未だ「名作」としてその名を轟かせています。
メディアでも度々とりあげられ、その度に話題となっているため、名前だけはご存じの方も多いかもしれません。
道尾秀介など、人気ミステリ作家からも絶賛されており、まさに「金字塔」と言えるでしょう。
作品自体はクリスティの『検察側の証人』のオマージュであり、古風な言い回しも多いため賛否両論ありますが、侃侃諤諤と日々議論が重ねられているのが何よりも人気の証拠。
是非「法廷ミステリ」の極致をご覧ください。
- 著者
- 小泉喜美子
- 出版社
- 集英社
- ページ数
- 264頁
- 価格(税込)
- 693円
12.『新装版 星降り山荘の殺人』/倉知淳★
※引用元:Amazon
あらすじ
交通が遮断され、電話も電気も通じていない雪に閉ざされた山荘。
そこに、UFO研究家など一癖も二癖もある人物たちが集まった。
当然のように発生する殺人事件。
そして、「スターウォッチャー」星園詩郎の華麗なる推理。
物語の結末は、衝撃の方向へ…。
読者に真正面から挑んだ「本格ミステリ」!あなたは犯人を推理できるか?
本作『星降り山荘の殺人』は、どこまでも読者にフェアな本格ミステリ小説です。
作中の伏線から犯人が推理できるようになっていますが、何故か必ず騙されてしまい、衝撃のラストに「アッ」となる…。
このどんでん返しに「フェアじゃない」という声も多いですが、ヒントは全て作中に提示されています。
注釈まで付してまで読者との公平性を保とうとする作者の姿勢も、本作の魅力のひとつ。
本格好きの方から、型にはまらないミステリが好きな方まで、幅広い層のミステリファンにおすすめです。
- 著者
- 倉知淳
- 出版社
- 講談社
- ページ数
- 544頁
- 価格(税込)
- 990円
13.『カラスの親指』/道尾秀介★
※引用元:Amazon
あらすじ
人生に敗れ、詐欺を生業とする中年2人組のもとに、1人の少女が舞い込んだことをきっかけに「他人同士」の奇妙な生活が始まる。
やがて同居人は5人と1匹に増えるが、残酷な過去が彼らを掴んで離さない。
各々の人生を賭け、彼らは一世一代のド派手なペテンを仕掛ける!
衝撃に次ぐ衝撃!どん底の人生をハッピーエンドに変えろ!
日本のミステリ界の重鎮・道尾秀介。そんな彼の作品の中でも特に人気が高いのが、本作『カラスの親指』です。
「他人同士」の同居人が増えていく前半部分は微笑ましく、心が温かくなりますが、後半の逆転劇では、息もつけないほどのどんでん返しに次ぐどんでん返し。
登場人物たちが抱える、重すぎる過去を「大ペテン」という力技でハッピーエンドへ導く作者の筆力に圧倒されます。
ハラハラドキドキしながら読んでいると、いつの間にか結末へ…。
ページをめくる手が止まらない、道尾秀介ワールドを是非味わってみてください。
- 著者
- 道尾秀介
- 出版社
- 講談社
- ページ数
- 520頁
- 価格(税込)
- 946円
14.『慟哭』/貫井徳郎★
※引用元:Amazon
あらすじ
連続幼女誘拐事件の捜査が難航し、窮地に立たされた若手キャリアの捜査一課長。
警察内部には不協和音が生じ、マスコミは彼の私生活をすっぱ抜く。
混乱のさなか、事態は新たな局面を迎えるが…。
松本清張の「後継」。鮮烈なデビュー作
本作『慟哭』は、社会派ミステリの名手であり、同じく社会派ミステリでその名を轟かせた文豪・松本清張の「後継」と言われている貫井徳郎のデビュー作です。
どんどん底へ沈んでいくほの暗さがあり、ラストではまさに「慟哭」という結末が描かれます。
「どんでん返し」に分類される作品ですが、基本的なトリックは見破るのが不可能というほどではなく、ミステリ好きであれば見破れる方も多いでしょう。
しかし、『慟哭』の本質はそこではなく、どん底の人生に手を差し伸べるふりをして搾取するカルト集団という現代社会へのリアルな観察眼と、大切な人を喪った遺族の内奥にある痛切な悲しみの描写にあります。
「こうなるだろう」とわかっていても、別の結末を願わずにはいられない。
是非、ラストまで一気に駆け抜けてください。
- 著者
- 貫井徳郎
- 出版社
- 東京創元社
- ページ数
- 418頁
- 価格(税込)
- 858円
15.『方舟』/夕木春央
※引用元:Amazon
あらすじ
大学時代の友人と従兄と一緒に山奥の地下建設を訪れた柊一は、偶然出会った3人家族とともに、地下建設で夜を過ごすことになった。
しかし、翌日の明け方に地震が発生し、出入り口が岩でふさがれ、地盤におきた異変の影響で地下建築に水が流入し始める。
そんな矢先、殺人事件が発生する。
誰か1人が犠牲になれば脱出できるのであれば、その生贄は犯人であるべきだ。
では、9人のうち死んでもいい/死ぬべきなのは一体誰…?
タイムリミットは1週間。それまでに、柊一たちは犯人を特定できるのか。
「犯人はこいつだ」。その予想は、裏切られます。
未だ文庫化には至っていませんが、ミステリ界では評価の高い作品として非常に人気の本作『方舟』。
作中に伏線もあり、推理もところどころで語られるので、犯人は予想しやすい…と思いきや、まさかの結末!
他に類を見ないひっくり返し方で、「どんでん返し」には飽きたという方にもおすすめです。
犯人は果たして誰なのか?
意地の悪さは折り紙付きの作品です。
- 著者
- 夕木春央
- 出版社
- 講談社
- ページ数
- 304頁
- 価格(税込)
- 1,760円
16.『悪いものが、来ませんように』/芦沢央★
※引用元:Amazon
あらすじ
自分の娘に、異常なまでの執着を抱える奈津子。
そして、助産院の仕事をしながらも周囲と馴染めず、不妊と夫の不倫にひとり悩む紗英。
不器用な生き方しかできない2人の異常な密着が、恐ろしい事件を呼ぶ。
「歪な親子関係」が生む、衝撃の事件。あなたは、この「歪さ」に気付けますか?
本作『悪いものが、来ませんように』の作者・芦沢央は、男性でありながら女性のイヤ~な心理を克明に描き出す、イヤミスの名手です。
本作にも「歪な親子関係」がテーマとして潜んでいますが、登場人物の相関図を巧妙に隠しているため、気が付いたときのイヤ~な気持ちもひとしおです。
作中に登場人物の相関図を読者がしっかりと把握できる伏線が貼られていますが、ミスリードによって、全く気が付きません。
全ての人間関係が明らかになったとき、衝撃の真実が見えきます。
- 著者
- 芦沢央
- 出版社
- KADOKAWA
- ページ数
- 304頁
- 価格(税込)
- 660円
17.『十角館の殺人』/綾辻行人★
※引用元:Amazon
あらすじ
「変な形の建築」で知られた建築家・中村青司が青屋敷で焼死してから半年後、当の建築家が建てた十角形の奇妙な館が建つ孤島に7人の大学ミステリ研の学生が訪れる。
やがて学生たちを襲う連続殺人事件。
お互いが疑心暗鬼に陥る中、1人、また1人と殺されていき…。
ミステリ界に衝撃をもたらした「新本格」のデビュー作。
本作は、本格ミステリが「不作」だといわれていた1980年代に、新たに「新本格派」としてミステリブームを再燃させた、伝説の1作です。
ミステリ好きであればその名を知らぬものはいないという程有名な本作ですが、シリーズ作品が多く、意外と手をつけていないという方も多いのではないでしょうか?
メイントリックや真犯人の動機が衝撃的で、ミステリ好きであれば1度は読んでおきたい傑作です。
コミック版も刊行されているため、気軽に読みたいという方はぜひそちらもお試しください。
- 著者
- 綾辻行人
- 出版社
- 講談社
- ページ数
- 512頁
- 価格(税込)
- 946円
18.『六人の嘘つきな大学生』/浅倉秋成★
※引用元:Amazon
あらすじ
急成長を遂げているIT企業「スピラリンクス」が初めて実施する新卒採用。
最終選考に残った6人の就活生に与えられた課題は、一か月後までにチームを作り上げ、ディスカッションをするというもの…だったはずが、本番直前に課題が変更され、「六人の中から一人の内定者を決める」ことを課された。
仲間だったはずの6人は、突如として1つの席を奪い合うライバルとなったのだ。
内定をかけた議論が進む中、個人名が記された6通の封筒が発見される。
そこには、「○○は人殺し」という告発文が入っており…。
映画化決定!「嘘つき」は誰?
2024年3月に映画化が発表され、現在までに佐野勇斗さんなど主要キャストが発表されている本作は、就職活動の場で繰り広げられる、「伏線がすごい」青春ミステリです。
1つの席を奪い合う最終選考で、候補者6人の過去の悪事が告発されるが、それはその人のほんの一面に過ぎず…。
二転三転するストーリー展開から目が離せない!
「人間」という多面的な存在への書き込みが凄い傑作ミステリーです。
- 著者
- 浅倉秋成
- 出版社
- KADOKAWA
- ページ数
- 368頁
- 価格(税込)
- 814円
19.『灰かぶりの夕海』/市川憂人
※引用元:Amazon
あらすじ
千真の前に、かつての恋人と同じ姿、同じ名前の「夕海」という少女が現れた。
しかし、彼女は2年前に死んでいる。
更に、千真は仕事中に殺人事件に遭遇する。
密室の中で死んでいた「被害者」は、亡くなっているはずの恩師の妻とそっくりの女性だった…。
この世界には何が起きている?世界の色が反転する、驚愕のミステリー
密室トリックが繰り広げられる本作は、死んだはずの主人公の恋人が姿を現わしたり、死んだ人間そっくりの女性が殺人事件の「被害者」になったりと、読者を「思いもよらないトリックで騙してやろう」というサービス精神旺盛な作品です。
作者の市川憂人は密室ミステリーに定評のあるミステリ作家であり、本作でもその力量は遺憾なく発揮されています。
最後まで読んだときに、初めて『灰かぶりの夕海』というタイトルに込められた意味がわかるでしょう。
ミステリー自体の面白さだけでなく、登場人物たちの心情も色鮮やかな作品です。
- 著者
- 市川憂人
- 出版社
- 中央公論新社
- ページ数
- 1.980円
- 価格(税込)
- 336頁
20.『ハサミ男』/殊能将之★
※引用元:Amazon
あらすじ
美少女を殺害し、その首元に研ぎ澄まされたハサミを突き立てる猟奇殺人版「ハサミ男」。
3人目のターゲットを決めた彼は、綿密に計画をたてるが、自分の模倣犯に先を越され、彼女の死体を発見する。
自分以外の人間が、なぜ彼女を殺したのか?
「ハサミ男」は模倣犯の正体を突き止めるため、調査を始める。
見事な描写に騙される!あなたは「先入観」を捨てられるか?
本作『ハサミ男』は2005年に映画も公開され、非常に高い評価を得ているサスペンスミステリーです。
「どんでん返し」ミステリーとしての評価は賛否分かれており、「見抜けた」という方と「見抜けなかった」という方がいらっしゃるようです。
本作の鍵は「先入観」であり、結末を予測できるか否かは「先入観を捨てられるか」という点にかかっています。
意外と、ミステリーをあまり読まない方のほうが結末を見破れるのかもしれません。
しかし、本作は見破れなかったからこその面白さもあり、1度目はあえて見破ろうとせず、2周するのもおすすめです。
- 著者
- 殊能将之
- 出版社
- 講談社
- ページ数
- 520頁
- 価格(税込)
- 1,012円
21.『花束は毒』/織守きょうや★
※引用元:Amazon
あらすじ
憧れの家庭教師・真壁が結婚を前に脅されていることを知り、「僕」は彼に代わり探偵事務所に調査を依頼する。
そこに現れたのは、中学時代いじめに遭っていた従兄をえげつない方法で好きだしてくれた理花先輩だった。
先輩と調査を進めるにつれ、次第に真実が見えてくる「僕」だったが…?
ラスト1行、背筋が凍る。真実を暴くのは、「正義」なのか?
本作『花束は毒』は、「ホラー」と言われるほどひたすらに恐ろしいミステリーです。
覚悟を持って読んでも、犯罪者の執着や衝撃のラスト、最後に投げかけられる究極の選択に、精神がゴリゴリに削られます。
ラストに持っていくための作品全体の構成力もさることながら、登場人物の心理描写も鮮やか。
嚙み合っているはずなのに、なぜか噛み合わない…。そんな不整合が楽しめる1作です。
- 著者
- 織守きょうや
- 出版社
- 文藝春秋
- ページ数
- 352頁
- 価格(税込)
- 836円
22.『レモンと殺人鬼』/くわがきあゆ★
※引用元:Amazon
あらすじ
10年前に父親が通り魔に殺害され、母親も失踪して以降別の親戚に引き取られ、不遇の中暮らしていた小林姉妹。
しかしある日、妹の妃奈が遺体で発見される。
被害者であるはずの妃奈に、「保険金殺人」の疑惑がかけられるなか、妹の潔白を信じる姉の美桜は、妹の潔白を証明するため、行動を開始する。
第21回『このミステリーがすごい!』大賞・文庫グランプリ受賞!「どんでん返し」ミステリーの新たな傑作!
本作『レモンと殺人鬼』は、2022年の『このミス大賞』受賞後、書店でも暫く平積みされるほど話題となったミステリー小説です。
軽いタッチの作品のため小説を読み慣れていない方でも読みやすく、ラストには思いがけない結末が待っています。
『このミス大賞』の選評者に「やりすぎじゃないかというくらいの二転三転四転五転の展開」と言わしめたほどの怒涛の展開は、どんでん返しファンにはたまらない!
次に読む作品として、いかがでしょうか。
- 著者
- くわがきあゆ
- 出版社
- 宝島社
- ページ数
- 320頁
- 価格(税込)
- 780円
ドキドキが止まらない!衝撃のラストまで一気に駆け抜けろ!
日々新たな傑作が生み出される「どんでん返し」系ミステリー。
「どんでん返し」「衝撃のラスト」という言葉には飽きたという方も、是非話題作や最新作を手に取ってみてください。
そこには、あなたの想像を裏切る衝撃のトリックが仕掛けられているかもしれません。
また、どんでん返し系ミステリーは読みやすい作品が多く、読書の入り口としてもおすすめです。
これからミステリー小説を好きになりたいという方は、まずは是非ミステリ界を代表するような名作を手に取ってみてください。