皆さんは、「鬱小説」は好きですか?
あえて時間をかけて得る鬱には、他からは得られない楽しみがあります。
今回は、オーソドックスなバッドエンド鬱小説から、何かがあるわけではないのに何故か鬱になる小説まで、ランキング形式でご紹介します!
※ランキングは筆者の個人的な感想に基づき、独断で作成しております。
目次[ 表示 ]
- バッドエンドだけじゃない!鬱小説の魅力とは?
- おすすめの鬱小説ランキングTOP30!
- 1.『隣の家の少女』/ジャック・ケッチャム
- 2.『十二国記 魔性の子』/小野不由美
- 3.『私の男』/桜庭一樹
- 4.『告白』/湊かなえ
- 5.『時計じかけのオレンジ』/アントニイ・バージェス
- 6.『ボトルネック』/米澤穂信
- 7.『向日葵の咲かない夏』/道尾秀介
- 8.『晩年』/太宰治
- 9.『芋虫』/江戸川乱歩
- 10.『ファミリーポートレイト』/桜庭一樹
- 11.『殺戮にいたる病』/我孫子武丸
- 12.『少女葬』/櫛木理宇
- 13.『黒い家』/貴志祐介
- 14.『ドグラ・マグラ』/夢野久作
- 15.『疾走』/重松清
- 16.『「子供を殺してください」という親たち』/押川剛
- 17.『坂の途中の家』/角田光代
- 18.『変身』/カフカ
- 19.『空白の叫び』/貫井徳郎
- 20.『地下室の手記』/ドストエフスキー
- 21.『永遠の仔』/天童荒太
- 22.『おいしいごはんが食べられますように』/高瀬隼子
- 23.『許されようとは思いません』/芦沢央
- 24.『かか』/宇佐見りん
- 25.『コンビニ人間』/村田沙耶香
- 26.『夏物語』/川上未映子
- 27.『暗黒女子』/秋吉理香子
- 28.『神様ゲーム』/麻耶雄嵩
- 29.『ユリゴコロ』/沼田まほかる
- 30.『ミシン』/嶽本野ばら
- 良質な鬱で精神にダメージを浴びよう!
バッドエンドだけじゃない!鬱小説の魅力とは?
「鬱小説」とは、簡単に言うと「読んでいると鬱になる」小説です。
「鬱小説」と聞くと、バッドエンドの小説を想像しがちですが、バッドエンド=鬱小説というわけではありません。
バッドエンドでも、そこに至るまでの過程が理不尽でなかったり、暗い展開の中にも将来への希望が見えていたりと、読者に鬱を味あわせることのない小説もたくさんあります。
一方で、人も死なない、明確なバッドエンドでもない、それなのになぜか読んでいると鬱になってくる…というような小説は「鬱小説」に含まれます。
人が大量に死に、明確なバッドエンドを迎える小説から、小説全体に原因不明の奇妙な鬱がはびこる小説まで、これまで様々な「鬱小説」が発表されており、多くのファンから人気を集めてきました。
下の記事では、バッドエンドの小説だけを集めました!鬱小説好きの方には、こちらの記事もおすすめです。
【2024最新】バッドエンド小説おすすめ22選!切ない恋愛・メリーバッドエンド・短編など
本記事では、国内外の鬱小説をご紹介しております。
特に海外の鬱小説のおすすめを知りたい!という方は、ぜひ下の記事も併せてご覧ください。
【2024最新】海外の最悪な鬱小説おすすめランキング!文豪・恋愛・純文学など美しい作品をご紹介
おすすめの鬱小説ランキングTOP30!
1.『隣の家の少女』/ジャック・ケッチャム
※引用元:Amazon
あらすじ
当時12歳だった私は、両親を交通事故で無くし、妹とともに隣家のルースに引き取られた美しい少女・メグに心を奪われた。
しかし、ある日メグが虐待を 受けている現場を目撃し…。
実話をもとにしたトラウマ製造小説
「鬱小説」といえばこの小説、『隣の家の少女』。
しかし、「鬱小説」の代表作とはいっても、「隣の家」や「地下室」がトラウマになってしまう可能性が高く、入門書としてはおすすめできません。
何よりも怖いのが、この小説が実際の事件を基にしている、ということです。
著者のジャック・ケッチャムはこの作品以外にも実際の事件を題材とした鬱小説を書いており、創作意欲が倫理観を凌駕している作家として有名です。
鬱小説としてあまりにも有名で、かつ題材も「虐待」であるため、読む際は周囲の目が気になりますが、是非鬱小説の代表とされる所以を読んで確かめて下さい!
- 著者
- ジャック・ケッチャム著/金子造訳
- 出版社
- 扶桑社
- 価格(税込)
- 755円
2.『十二国記 魔性の子』/小野不由美
※引用元:Amazon
あらすじ
教育実習生として母校に戻った広瀬は、幼少期に「神隠し」にあったことをきっかけに周囲に様々な不幸が降りかかり、「祟る」と恐れられた高里という生徒を気にかけるようになる。
高里に自身が心に抱える喪失感と同じものを見出した広瀬は、彼を周囲の人間からかばおうとするが、惨劇は止まらず、さらなる悲劇が高里とその周囲を襲う…。
人気シリーズ「十二国記」の序章となる物語
アニメ化もされた人気小説シリーズ「十二国記」シリーズの0巻にあたる本作。
ホラー小説に分類され、様々な怪奇現象が起こりますが、それだけにとどまらず、読んでいると心がどんどん苛まれるような物語となっています。
惨劇の原因も理屈もわからぬまま周囲から迫害される高里にも、大切な人を傷つけられ、自分も傷つくことの恐れから高里を迫害する街の人にも共感でき、何とも言えない救いようのない感情を味わうことができます。
「十二国記」はシリーズを通して良質な鬱を味わうことができ、またラストは明るいものが多いため、入門書におすすめです。
- 著者
- 小野不由美
- 出版社
- 新潮社
- 価格(税込)
- 880円
3.『私の男』/桜庭一樹
※引用元:Amazon
あらすじ
災害で突然孤児となった10歳の私を引き取ったのは、25歳の淳悟だった。
海の見える小さな街で、私たちは親子となった。
許されない愛を描く直木賞受賞作品
鬱小説ファンから高い人気を誇る『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない A Lollypop or A Bullet』など、良質な鬱小説を多数生み出してきた桜庭一樹の直木賞受賞作品です。
父娘の近親相姦を題材としているため人を選びますが、小説全体にはびこる陰鬱な雰囲気や救われなさは、人間の本質に訴えかけてくるような魅力を持っています。
ページをめくるたびに、時間は遡っていくという変わった形式で書かれており、過去が明らかになれば明らかになるほど更に鬱になっていく展開は、目が離せません!
- 著者
- 桜庭一樹
- 出版社
- 文藝春秋
- 価格(税込)
- 836円
4.『告白』/湊かなえ
※引用元:Amazon
あらすじ
わが子を校内で亡くした中学校の女性教師による告白から、物語は始まる。
様々な語り手により、次第に事件の全容が明らかになっていく…。
「イヤミスの女王」湊かなえの代表作
「イヤミス」とは、読後感が何とも言えない嫌な感じになるというミステリー小説を指し、鬱小説と重なる部分の多いジャンルです。
そのため、「イヤミスの女王」と呼ばれている湊かなえの小説には良質な鬱小説が多く、中でも代表作である『告白』はミステリーファンに限らず、鬱小説ファンからも人気の高い作品です。
ベストセラー作品から鬱小説に挑戦してみたい、という方におすすめです。
- 著者
- 湊かなえ
- 出版社
- 双葉社
- 価格(税込)
- 681円
5.『時計じかけのオレンジ』/アントニイ・バージェス
※引用元:Amazon
あらすじ
近未来の高度管理社会で、15歳の少年アレックスは平凡で機械的な毎日にうんざりし、暴力で気晴らしをしていた。
仲間とともに夜の街をさまよい歩いては、盗み、破壊、暴行、殺人を繰り返す。
やがて、国家の手が彼に迫り…。
エロ・グロ・ナンセンスの傑作反良識SF小説!
本作はSF小説に分類され、近未来の社会において、手の付けられない非行少年を猟奇的な映像と身体の操作により強制的に更生させるという、ディストピア的な物語となっています。
物語展開が面白いのはもちろん、『時計じかけのオレンジ』では、主人公やその仲間たちといった若者の徹底した倫理観のなさや暴力描写、音楽的表現により、脳に強い刺激を受けることができます。
本によって収録されている内容が若干異なり、最終章が収録されているか否かが全体の印象を大きく操作するため、鬱小説が好きな方は是非最終章まで収録されているハヤカワepi文庫を入手してください!
- 著者
- アントニイ・バージェス著/乾 信一郎訳
- 出版社
- 早川書房
- 価格(税込)
- 968円
6.『ボトルネック』/米澤穂信
※引用元:Amazon
あらすじ
亡くなった恋人の追悼に訪れた東尋坊で、何かに誘われるように断崖から墜落したはずの僕は、気が付くと見慣れた金沢の街にいた。
不可解に思いながらも自宅へ戻ったぼくは、見知らぬ「姉」に迎えられる…。
じわじわと心を蝕んでいく遅効性の鬱
人気ミステリー作家・米澤穂信の作品である『ボトルネック』では、主人公が自殺を機に、流産で生まれなかった姉が産まれ、自分が産まれなかったパラレルワールドへ飛ばされます。
いわゆる一般的な「鬱小説」と比較して、派手さも凄惨さもありませんが、多くの鬱小説ファンから名作とされています。
「じわじわと手札を減らされていくような嫌さ」が人気で、時間をかけて心が鬱に蝕まれます。
もがき続けた先に主人公がたどり着いた、最悪の結末が見どころです!
- 著者
- 米澤穂信
- 出版社
- 新潮社
- 価格(税込)
- 693円
7.『向日葵の咲かない夏』/道尾秀介
※引用元:Amazon
あらすじ
夏休みを迎える終業式の日、先生から頼まれ、欠席したS薫の家を訪れた「僕」が発見したのは、首を吊って死んでいるS君の姿だった。
しかし、衝撃もつかの間、S君の死体は忽然と姿を消してしまう。
一週間後、姿を変えて現れたS君の訴えにより、「僕」は妹とともに事件を追い始める。
作品全体に漂う陰鬱さ!「変態」人気作家のデビュー作
道尾秀介のデビュー作、『向日葵の咲かない夏』で忘れられない夏を体験しましょう!
元々創作狂で知られ、横溝正史の作品をヒントにその生家までたどり着いてしまうという偏執狂的な逸話も相まって「変態」と称されている道尾秀介ですが、そのデビュー作である今作はその気質が存分に発揮されています。
小説全体に湿度の高い鬱が影を落としており、「怖い」「気持ち悪い」「思い出したくないのに頭から離れない」と評判の作品です。
- 著者
- 道尾秀介
- 出版社
- 新潮社
- 価格(税込)
- 880円
8.『晩年』/太宰治
※引用元:Amazon
あらすじ
失意の中、自殺を前提に書き綴られた太宰治の処女作品集。
処女作品集でしか味わうことのできない太宰治
太宰治は鬱小説の名手で知られ、特に『人間失格』は不朽の名作と言われています。
しかし、人間失格は中編小説であるのに対し、『晩年』は遺書として書かれており、その内容も断片のような短編小説や短い文章が並べられたもので、まさに太宰の書きたいことが詰まった作品となっています。
短く、断片的だからこそ、妻の裏切りを知り、共産主義運動から脱落し、心中から生き残ってしまった著者の失意と鬱が身に迫ってきます。
アフォリズムや覚え書きの詰まった「葉」という作品が特におすすめです。
- 著者
- 太宰治
- 出版社
- 新潮社
- 価格(税込)
- 572円
9.『芋虫』/江戸川乱歩
※引用元:Amazon
あらすじ
戦争で両手両足を無くした夫をかいがいしく世話する妻・時子。
周囲の人々からも高い評価を得ていた時子であったが、彼女にはある秘密があった…。
日本を代表するミステリー作家の鬱小説
江戸川乱歩といえば、日本においてその名を知らぬものはいないという程高名なミステリー作家です。
しかし、彼はミステリー小説以外にも様々な小説を執筆しており、「耽美派」と呼ばれるに相応しい作品を多々残しています。
そのひとつがこの『芋虫』で、戦争で両手両足や五感の殆どを失って帰国した夫を、一見貞淑でかいがいしい妻が虐待し、嗜虐心を満たすという物語です。
幻想的で反道徳的な作品が多い乱歩の作品の中でも、群を抜いて異様な雰囲気を放つ作品と言われています。
- 著者
- 江戸川乱歩
- 出版社
- KADOKAWA
- 価格(税込)
- 572円
10.『ファミリーポートレイト』/桜庭一樹
※引用元:Amazon
あらすじ
母の名前は「マコ」、娘の名前は「コマコ」。
老人ばかりが暮らす城塞都市や奇妙な風習が残る温泉街など、どこか幻想的な逃亡生活の中、5歳だったコマコは言葉を覚え、物語を知る。
鬱小説の名手桜庭一樹の傑作長編小説!
様々な傑作鬱小説を執筆しており、鬱小説ファンから高い人気を誇る桜庭一樹の長編小説です。
全体は2部に分かれており、前半においては母と幼い娘の長い逃亡生活が、後半においては逃亡生活が終了した後の娘・コマコの人生が描かれます。
小説全体が幻想的な雰囲気に包まれており、母娘が行く逃亡先での奇妙な出来事の数々や、歪な母娘の絆の描かれ方に、著者の筆力を感じることができます。
本作は後半に殆ど鬱要素が無いため、鬱小説に分類されるか評価が分かれる作品ですが、桜庭一樹が好きな方にはおすすめの作品です。
- 著者
- 桜庭一樹
- 出版社
- 講談社
- 価格(税込)
- 964円
11.『殺戮にいたる病』/我孫子武丸
※引用元:Amazon
あらすじ
男は永遠の愛を掴みたいと願い、東京の繁華街で次々と猟奇的な殺人を繰り返すサイコ・キラーとなった。
徹底的なグロを追求した鬱小説の「入門書」
「鬱小説」と聞くと、一般的に思い浮かべる要素を詰め込んだ、鬱小説ファンから「入門書」と言われている作品です。
殺人鬼を題材としており、繰り返される凌辱の果ての臓物飛び散る惨殺シーンなど、分かりやすく読者の精神を削ってきます。
また、殺人鬼の客観的な描写にとどまらず、その内面にまで深く沈み込んで聞けるように描写されているため、感受性の高い方は要注意です。
- 著者
- 我孫子武丸
- 出版社
- 講談社
- 価格(税込)
- 770円
12.『少女葬』/櫛木理宇
※引用元:Amazon
あらすじ
かつての家出少女は、壮絶なリンチの果てに殺害された少女の死体画像を見つめる。
心優しい少女は、なぜここまで酷い死に方をしなければならなかったのか?
リアルすぎる暴力表現と、少女たちが直面する現実
『死刑にいたる病』の映画化により一躍脚光を浴びた人気作家・櫛木理宇が、その得意とする精緻な暴力表現と、読者の心を蝕んでいく辛い展開を存分に発揮した本作、『少女葬』。
『死刑にいたる病』では主人公が死刑囚でしたが、本作の主人公はまだ少女であり、家出した年若い少女たちに襲い掛かる過酷な現実には、思わず目を背けたくなるような辛さがあります。
リンチシーンのグロテスクな描写だけではなく、信じていた友人の裏切りなど、精神面への負荷は折り紙付きの作品です。
- 著者
- 櫛木理宇
- 出版社
- 新潮社
- 価格(税込)
- 825円
13.『黒い家』/貴志祐介
※引用元:Amazon
あらすじ
生命保険会社の京都支社に勤める若槻慎二が顧客の家に呼び出され、そこで目にしたものは子供の首吊り死体であった。
顧客の態度から子供の死に疑念を抱いた若槻は、他殺の証拠を掴もうと独自調査に乗り出すが…。
ホラー小説界に衝撃をもたらしたサスペンス小説
『黒い家』はホラー小説ですが、幽霊や怪奇現象を扱った作品ではなく、当時まだ知られ始めてきた段階であった、「サイコパス」を主題とした小説です。
生きている人間の話であるはずなのに、得体の知れない恐怖を感じるこの作品は、次々と衝撃的でグロテスクな展開が起こり、読者の心をノンストップで苛んできます。
人が次々と理不尽な理由で死んでいく物語を読みたい方におすすめです。
- 著者
- 貴志祐介
- 出版社
- KADOKAWA
- 価格(税込)
- 748円
14.『ドグラ・マグラ』/夢野久作
※引用元:Amazon
あらすじ
ある日青年が目覚めると、そこは精神病院の一室だった。
記憶を失っている青年に、若林博士と名乗る医者は、隣室でうめき声をあげている少女は青年の許嫁であり、青年は殺人事件の犯人であると告げる。
読むと精神に異常をきたす日本一「幻魔怪奇の本格探偵小説」
日本4大奇書のひとつ、『ドグラ・マグラ』は、その全体に蔓延る狂気にあてられ、「読んでいるうちに読者まで頭がおかしくなってしまう」と言われる程、読者の精神を苛んでくる小説です。
記憶を失った主人公に若林博士が語りかけてくる、幻想的で怪奇な事件や、「チャカポコチャカポコ」という耳に残る異様なリズムに、だんだんと頭が狂気に侵されるのを感じることができます。
是非日本一高名な狂気を体感してみてください!
- 著者
- 夢野久作
- 出版社
- KADOKAWA
- 価格(税込)
- 572円
15.『疾走』/重松清
※引用元:Amazon
あらすじ
人と繋がりたいと、ただそれだけを願った15歳の少年の、あまりにも苛烈な運命とその煉獄の道のりの軌跡を記した黙示録。
心がぐちゃぐちゃになる、地獄を味わえる作品
重松清といえば、中学受験などでも頻繁に出題されるほど、その温かみのある人間ドラマを描く作風で有名です。
しかし、本作においては、同じ作者とは到底思えないほど徹底的に読者の心を壊しにきます。
「確実に落ち込みたいときに読む」と言われるほど鬱全開のこの作品では、ここまでかというほど辛い展開が次々と東北の街の人々に襲い掛かります。
落ち込みたい、鬱になりたい、という方にはうってつけの作品と言えるでしょう。
- 著者
- 重松清
- 出版社
- KADOKAWA
- 価格(税込)
- 704円
16.『「子供を殺してください」という親たち』/押川剛
※引用元:Amazon
あらすじ
究極の育児・教育の失敗事例を取り上げ、分析し対策を検討するノンフィクション作品。
現代人必読!衝撃のノンフィクション作品!
一時ブームともなった本作、『「子供を殺してください」という親たち』。
コミックスも発売され、多くの人々に衝撃をもたらしました。
家庭崩壊の事例を列挙し、その問題の根底や、現在の支援体制、及びこれからの展望について論じます。
私たちがいま生きている社会において実際に起こっている悲惨な家庭の崩壊は、ノンフィクションだからこそ読者の心を確実に抉ってきます。
鬱になると同時に、考えさせられる作品です。
- 著者
- 押川剛
- 出版社
- 新潮社
- 価格(税込)
- 693円
17.『坂の途中の家』/角田光代
※引用元:Amazon
あらすじ
刑事裁判の裁判員となった里沙子は、子供を殺したという母親の裁判に携わるうちに、次第に被告人の境遇に自らを重ねていく…。
感情移入度100%!「家族」とは何かを問う心理サスペンス
本作は刑事事件における裁判員制度を取り扱った小説ですが、主題は「家族であること」であり、家族の光と闇に迫ります。
現在では一般的に用いられるようになった「モラハラ」や「児童虐待」といった言葉の境界線はどこにあるのか、ということを考えさせられる小説です。
実体験であるかのようなリアルな心情描写や、女性であれば少なからず共感してしまう問題に心が苛まれ、読後も心にモヤモヤとしたわだかまりが残ります。
女性に限らず、男性にも読んでほしい作品です。
- 著者
- 角田光代
- 出版社
- 朝日新聞出版
- 価格(税込)
- 792円
18.『変身』/カフカ
※引用元:Amazon
あらすじ
ある朝、グレゴール・ザムザが何か気がかりな夢から目を覚ますと、自分が一匹の巨大な虫になっているのを発見した。
不条理文学の代名詞、カフカの代表作!
不条理文学で知られるフランツ・カフカの代表作・『変身』では、何の前触れもなく身体が巨大な虫となってしまったせいで社会からも家族からも迫害を受ける1人の人間の人生が描かれます。
何故突然人間が巨大な虫となってしまったのか、その謎は一切解明されずに、ただ理不尽に虫となってしまった男の生活が淡々と描かれます。
物語自体が短く、読後感も湿度の高いものではないため、気軽に読める作品です。
「鬱小説の世界代表」とも言われており、鬱小説を読みたいと思われている方は是非ご一読ください。
- 著者
- フランツ・カフカ著/高橋義孝訳
- 出版社
- 新潮社
- 価格(税込)
- 506円
19.『空白の叫び』/貫井徳郎
※引用元:Amazon
あらすじ
「普通の中学生」だったはずの少年たちは、世界への違和感を抱え、殺人を犯す。
上下1000頁を超える良質な鬱小説!
貫井徳郎といえば鬱小説、というほど鬱小説で有名な著者ですが、この『空白の叫び』は特に鬱描写が多い作品です。
3人の普通の少年がどのようにして罪を犯すに至ったのか、ということが物語の前半部分で丁寧に描写されており、どんどん話に引き込まれていきます。
後半では、思わず目をそむけたくなるような少年院での生活に少年たちの性格が歪んでいく描写に心を蝕まれ、上下巻を読み終わったときには鬱になっていること間違いなしの作品です。
- 著者
- 貫井徳郎
- 出版社
- 小学館
- 価格(税込)
- 935円
20.『地下室の手記』/ドストエフスキー
※引用元:Amazon
あらすじ
極端な自意識過剰から一般社会から隔絶された「地下室」に閉じこもった小官吏の独白により、理性による理想社会を否定し、人間の本能の自由を説く。
妻の死に直面した著者が描く近代的人間の自意識
ドストエフスキーの作品を読み解く「鍵」とされている本作ですが、これが執筆されていた当時、ドストエフスキーは妻の病気と、その死という現実に直面していました。
その苦悩が滲み出たかのような本作においては、近代的な人間の過剰な自意識に苛まれた主人公が、「地下室」に閉じこもるようになったきっかけとなる出来事が描かれています。
過剰な自意識や見栄から、負う必要のない咎や友人との諍いを生んでしまう主人公の姿に共感し、心が痛くなる作品です。
- 著者
- ドストエフスキー著/安岡治子訳
- 出版社
- 光文社古典新訳文庫
- 価格(税込)
- 660円
21.『永遠の仔』/天童荒太
※引用元:Amazon
あらすじ
霊峰の頂上で神に救われると信じ、下山途中の父親を憑かれたように殺害した少女・久坂優希と2人の少年は、17年後、再会する。
しんどいのに読む手が止まらない!ドラマ化したベストセラー
本作『永遠の仔』では、小学生の時に児童精神科に入院していた少年少女3人が17年の月日を経て再会し、徐々に過去の事件の真相が明らかになっていきます。
幼児虐待や老人介護を扱っており、悲しい事件がおこるため、かなり重い内容となっていますが、作品に引き込まれ、どんどん先を読み進めたくなります。
2000年には中谷美紀さん主演でドラマ化されていますが、ドラマでは語られない細部が重要となってくるため、ドラマを見た方も原作に挑戦してみてください。
- 著者
- 天童荒太
- 出版社
- 幻冬舎
- 価格(税込)
- 781円
22.『おいしいごはんが食べられますように』/高瀬隼子
※引用元:Amazon
あらすじ
職場におけるままならない微妙な人間関係を、「食べること」を通して描く。
胸糞悪い人間関係を、食べ物を通して描いた傑作!
食べ物を中心に描いている、ときくと、どこか絵本チックなほのぼのとした作品を尊像しがちですが、この作品は読み進めていくうちに胸糞悪さが抑えられなくなっていきます。
仕事ができなくても、料理上手で皆が守りたくなるような弱さを持っている芦川と、芦川を憎む頑張り屋で優秀な押尾、そして2人と同時に関係を持ちながらも「そこそこ」を保つために保身にまわる二谷。
登場人物の設定も胸糞悪ければ、展開も結末も胸糞悪いという徹底ぶり。
良質な胸糞悪さが、ここにあります。
- 著者
- 高瀬隼子
- 出版社
- 講談社
- 価格(税込)
- 1,540円
23.『許されようとは思いません』/芦沢央
※引用元:Amazon
あらすじ
入社3年目の夏、常に営業成績最下位であった修哉は成績を大きく上げ、上司にも褒められた。
誇らしい気持ちになりながら売上伝票を見返すと、本来の注文の11倍を発注するという誤注文をしていた。
人の心に潜む闇を鮮やかに描き出した傑作短編ミステリー!
イヤミスで人気のミステリー作家、芦沢央の飛躍作『許されようとは思いません』。
どんでん返し系の短いミステリーが5編収録された作品ですが、芦沢央らしい、人間の心の闇の鮮やかすぎる描写は、読んでいて良質な鬱気分を味わえます。
ミステリー小説特有の犯人独特の心理というよりは、誰の心にもあり、誰の心にも起こりうる闇を描いているからこそ、現実感を伴って読者の心を苛んでくれる作品です。
- 著者
- 芦沢央
- 出版社
- 新潮社
- 価格(税込)
- 649円
24.『かか』/宇佐見りん
※引用元:Amazon
あらすじ
19歳の少女うーちゃんは、母の手術を前に、ある祈りを抱え熊野に向かう。
21歳で芥川賞を受賞した著者のデビュー作
『推し、燃ゆ』で芥川賞を受賞した若手作家、宇佐見りんのデビュー作である本作『かか』では、著者の真骨頂ともいえる歪な母娘関係が描かれます。
病気の母との関係に苦しむ19歳の少女、うーちゃんが弟にあてた手紙のような形式で書かれており、少女の独白から感じられるリアルな苦しみに胸が張り裂けるような感情を味わうことができます。
うーちゃんの心情だけでなく、弟の行動やうーちゃんの祖母、養育過程にコンプレックスを抱え、それが病気になったことで爆発してしまったうーちゃんの母親の辛さなどが身に迫ってくる作品です。
- 著者
- 宇佐見りん
- 出版社
- 河出書房新社
- 価格(税込)
- 594円
25.『コンビニ人間』/村田沙耶香
※引用元:Amazon
あらすじ
36歳未婚、彼氏なし、コンビニバイト歴18年の小倉恵子は、「店員」でいるときだけ、世界の歯車になれる。
「普通」とは何か?普通になれない人間の苦悩
芥川賞を受賞した本作『コンビニ人間』では、「普通」の人間になれず、他人を模倣し、マニュアル通りにコンビニの「店員」となることによって「普通」の人間と同様に社会の歯車になろうとする女性の姿が描かれます。
「普通」ではない、異常な人間を描いているはずなのに、なぜかそこに自分との共通点を見出してしまい、読後に鬱になってしまう作品です。
多かれ少なかれ、他人を模倣して生きている自分はどこまで自分なのか…普通とは何か…答えのない問いの沼の不快感に是非嵌まってみて下さい。
- 著者
- 村田沙耶香
- 出版社
- 文藝春秋
- 価格(税込)
- 660円
26.『夏物語』/川上未映子
※引用元:Amazon
あらすじ
大阪の下町で生まれ、小説家を目指して上京した夏子は、38歳のとき、自分の子供を望み始める。
子供を産むことについて考えるなか夏子は、精子提供で生まれ、提供者である父を探す逢沢と出会い、惹かれあう。
仕事、結婚、出産、親子関係…女性の苦悩と現実を描いた物語
同著者の短編小説『乳と卵』では、主人公の姉・巻子の豊胸手術と、その娘・緑子の成長に関する悩みに焦点が当てられていましたが、この短編をさらに掘り下げた本作では、主人公の「非配偶者間人工授精」というテーマが中心となっています。
前作と同様、「生まれてくることの取り返しのつかなさ」という問題を扱っており、精神的に負荷の高い小説です。
「子供を産む」ということに対して、様々なひとの意見に囲まれながらそれでも子供を持ちたいという意思を貫こうとする夏子に襲い掛かる現実に、胸糞悪くなることができます。
- 著者
- 川上未映子
- 出版社
- 文藝春秋
- 価格(税込)
- 1,067円
27.『暗黒女子』/秋吉理香子
※引用元:Amazon
あらすじ
ある女子高で、最も美しくカリスマ的存在であった1人の女生徒が死んだ。
1週間後に集められた、女生徒と親しかった文学サークルの仲間たちの口から語られる事件に関する証言により、事態は思いがけない方向へ…。
食い違う女子高のマドンナとの『思い出』
『暗黒女子』は所謂「イヤミス」に分類され、女子高でカリスマ的存在であった女子高生・白石いつみが自殺した後、文学サークルのメンバーの口からいつみとの「思い出」が語られることにより、衝撃の事実が明らかになっていきます。
同じ人について語っているはずなのに、何故か矛盾しあう「思い出」…。
カニバリズム要素もあり、「まさに鬱小説!」という作品です。
- 著者
- 秋吉理香子
- 出版社
- 双葉社
- 価格(税込)
- 611円
28.『神様ゲーム』/麻耶雄嵩
※引用元:Amazon
あらすじ
神降死で勃発した、連続猫殺し事件で町が騒然とするなか、「神様」を自称する謎の転校生・鈴木太郎が事件の犯人を名指しする。
世の中を全て見通すという自称「神様」を、信じるべきなのか?
児童向け小説とは思えないエグさ!
本作『神様ゲーム』は児童レーベルより出版されており、児童文庫に分類されますが、連続猫殺し事件という謎や、後味の悪い結末などにより、児童文庫とは思えない程暗く、重い小説です。
作中で犯人は特定されず、また作中の情報からはっきりと断定することも難しいため、人を選ぶミステリーとなっています。
鈴木は神様なのか?是非、その目で確かめてください。
- 著者
- 摩耶雄嵩
- 出版社
- 講談社
- 価格(税込)
- 660円
29.『ユリゴコロ』/沼田まほかる
※引用元:Amazon
あらすじ
ある一家で見つかった、殺人に取り憑かれた人間の生々しい告白が記されたノート、「ユリゴコロ」。
一家の過去が、明らかになる。
「まほかるブーム」を生んだ超話題作!
宮部みゆきと並び称される「イヤミスの女王」・沼田まほかるは、本作『ユリゴコロ』により、「まほかるブーム」と呼ばれるブームをミステリー界に巻き起こしました。
殺人に対する好奇心と強い衝動が生々しく語られる部分は、鬱々とならずにはいられません。
しかしそれだけではなく、後半部分で家族への愛や過去への公開が語られる部分は、沼田まほかるの筆力が発揮され、イヤミスとは思えないほど綺麗な結末へと着地します。
全体的に薄気味悪く、不穏な雰囲気ですが、その中にほんの少し温かみが感じられる…、そんな作品です。
- 著者
- 沼田まほかる
- 出版社
- 双葉社
- 価格(税込)
- 702円
30.『ミシン』/嶽本野ばら
※引用元:Amazon
あらすじ
孤独な青年が営む雑貨店に毎日のように訪れる精神を病んだ少女。
次第に2人はひかれあい、はかない逃避行に旅立つ。
独特な世界観で人気を博した少女小説の傑作
独特な世界観のなかで少女の繊細な精神を描き、「乙女のカリスマ伝道師」と呼ばれる嶽本野ばらのデビュー作、『ミシン』。
「世界の終わりという名の雑貨店」と表題作「ミシン」の2作品が収録されており、それぞれ洋服ブランドをモチーフとした独特な世界観に浸ることができます。
2作ともメリーバッドエンドであり、少女小説ならではの鬱を摂取することができます。
- 著者
- 嶽本野ばら
- 出版社
- 小学館
- 価格(税込)
- 482円
良質な鬱で精神にダメージを浴びよう!
鬱小説は、日常生活では得られない刺激を精神に与えてくれます。
退屈な日常も、鬱小説を読めばたちまち楽しいものに。
是非、鬱小説を読んでその魅力を体感してください。